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第5話 祭りの日

何か微妙な長さだったので分割しました。5,6話は同時投稿です。


 そして祭りの当日。日中から村人達は広場に集まり、陽気に歌い、酒に食事にと、今日ばかりは仕事を休んで楽しむ、その騒々しい様子を見に来たリーヴァも毎年のことながら心が躍った。

 夕方には松明が焚かれ素朴な木製の笛や弦楽器の音の賑やかな音楽が流れ始める。すると、ステップなどまるで気にせず、手を繋ぎ輪になって踊る乙女達、元気いっぱいに踊る子供達、控えめに手を握る男女、誰も彼も皆嬉しそうに踊っている。リーヴァが目を細めて眺め、無意識に音楽に合わせて体が揺れる。


「リーヴァ様、一緒に踊って!」


 村の娘がリーヴァの手を引く。背が高く常に男装で立つリーヴァは村の、特に若い女性達から人気があった。私も私も、と代わる代わるリーヴァの手を取って行く。リーヴァも楽しそうに笑って、彼女達とくるくると踊る。そしてふと、次に手を取られる。リーヴァが相手の顔を見ると、それはヴィルフレッドだった。

「はっ……なっ……」

 咄嗟のことでリーヴァは言葉を失う。そんな彼女の様子を気にもせずヴィルフレッドは悠然と腰を抱き優雅にステップを踏む。


「ちょ、ちょっと……なにするのよっ!?」

「何ってダンスですよ? 騎士さんも楽しんで、と住民の皆さんが誘って下さったので」

 まるで鼻歌でも始めそうなくらいヴィルフレッドは機嫌が良い。今までの彼とは不自然なくらい違う態度にリーヴァは戸惑ったが、よく見ると彼の頬がほんのり赤く色付いている。


「……まさか、酔ってるの?」

「そうかもしれません。皆さんが色々勧めて下さるもので」

「それを律儀に全部飲んだわけ?」

「ええ。お酒以外に食べ物も。全部美味しかったです」

「しこたま食べて飲んだってわけね……」

 リーヴァは呆れ顔になる。確かにここの年寄連中は若者にやたらと食べさせたり飲ませたりするのが好きだ。


「だからってなんで私が貴方とっ!」

「まぁ良いじゃないですか。こんなに楽しいのは騎士団に入って以来ですよ。騎士団なんてずっと訓練してるだけでしたから」

 酔っている所為なのかまるで聞く耳を持たず、ヴィルフレッドはリーヴァを抱いてくるくると回る。顔を紅潮させてリーヴァは抵抗しようとしているが、何せ相手は歴戦の騎士だ。びくりともしない。星は瞬き、松明は燃えあがった。貴族の屋敷のようなロマンチックで瀟洒な雰囲気はない。ただ賑やかな音楽は楽しく鳴り響き、二人は踊る。


「ああ、本当に楽しい……あの時もこうして踊りたかった」

「……」


 酔ったヴィルフレッドがエメラルドグリーンの瞳を潤ませて、呟く。

 確かにあの時はそうだった。彼と踊りたかった。だが、それを今になって言って何の意味がある?

 

リーヴァはその言葉をどう捉えて良いのか分からず聞かなったことにした。

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