6.余談
…という訳で、鷲見ってオタク男子が犯人だったのさ」
美鈴は口をあんぐり開けたまま聞いていたが、我に返り、
「警察に言わないってどゆこと?」と伯父に詰め寄った。
「もちろんパクらせてもいい。警視庁にも、東京地検にも知り合いがいる。有罪にもなるだろう。彼は社会的に制裁を受ける。当然、会社はクビだな。
だが、あのへなちょこキャラだと執行猶予付きじゃないかと思うんだ。つまり、すぐシャバに出てくる。
何もかも失ってね…
それより俺が弱みを握ったまま子分として使わせてもらう、ってはどうかなーと思うんだ。
しっかり見張るからさ」
「お情け?」
「いや。リスクと利用価値を天秤にかけての提案さ。あのIT技術は使える。情報収集のセンスもある。どうかな?」
綺道は本気だった。尾行と同じく、監視にもセンスとイマジネーションが必要とされる。鷲見という青年にはその才がある。
美鈴は半眼になった。
「大人ってきたなーい」
「いや。ジジイでいいよ。それに、俺が汚いだけさ。前職で染み付いちまった」
「あたしは、あの人を絶対見たくないよ。見られたくもない!」
「ああ。首に縄を付けたし、キンタを身代わりに差し出したから大丈夫」と綺道は笑った。
二人は、黙ってケーキを食べ、コーヒーを飲んだ。
美鈴は一息つくと、髪をかきあげ微笑んだ。
「いいよ。伯父さんが鷲見君にしっかり反省させてくれるなら…二度とあたしに関わらないなら…」
「約束する」綺道は即答した。
「それにね?あれが最後なら、あの写真は悪くなかった」
「俺もそう思うよ。なかなか素敵だった」
綺道はさり気なく感想を述べた。