4.推理
一週間後、綺道と美鈴は前回と同じファミリーレストランで落ち合った。
呼び出しをかけたのは伯父のほうで、“アルバムや名簿を返したい”という用件だった。
“犯人を捕まえた”といった報告がなく、美鈴は軽い失望を覚えた。
「伯父さん、あたしからも…」と美鈴は切り出す。
「…また写真が来たの」
「見せてくれる?」
「前より大きくなった」
美鈴は泣きそうな顔になった。
2L版に拡大したAI生成画像。
「ほう」と、思わず綺道が息を飲んだ。
美鈴の眉間のあたりが険しくなり、綺道は「ごめん。ちょっと感心した」と謝った。
渋谷のスクランブル交差点の雑踏。
人が行き交う。
派手な身なりの若者、華やかな少女たち、サラリーマン、外国人観光客、様々な人々が行き交う人いきれの中、全裸の少女が佇む。
後ろ姿で、誇らしげに胸を反らしてこちらを振り返っている。
美鈴だ。
「このホクロは?」
綺道は“AI美少女”の尻を指さした。
「あるよ」と美鈴は不機嫌に答えた。
「実は…」と綺道は表情を消した。
「誰が、どうやってやったか分かってる。
問題はヤツをどうするかだ。
俺は捜査畑じゃないから正直に言うが、ホシを挙げるのがすべてじゃない…」
「ちょっと待って!」
美鈴の声が裏返った。
「それ先言ってよー。誰?捕まえたの?」
「スズちゃんの部屋にいたとき、誰がやったか分かった。
氏名とか住所は、卒業アルバムと名簿から特定する必要があったが…」
「嘘でしょ?同級生?」
「ああ。ちょっとした訓練というか、頭の使い方が必要だけど、スズちゃんにも分かったはずだ。
犯人と、彼のやり口を推理する材料はすでに揃ってたんだ」
「あとは、警察に突き出すかどうかだが…」
綺道は手元に視線を落とした。
「実は昨日、犯人に会ってきた」