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リタと色えんぴつ。


「そういえば、おなまえはー?」


 えっぐが思い出したように訊ねると、女の子はハッとした顔になる。


「あたしは、リタ!」

「リタ!」


 ようやく名前で呼び合えるようになり、えっぐはにんまり笑う。


「リタ、箱も!」


 プレゼントの木箱を示すえっぐ。

 リタは頷いてゆっくりと木箱のフタをあけると、そこには20色くらいの色えんぴつ。

 色えんぴつを見たことのないリタは、目をぱちぱちさせる。


「色えんぴつって、アメリアは言ってたよー」

「え、これえんぴつなの?!」


 えんぴつは知っている。粗野な作りな物だが、リタも持っていた。

 たまに村にやってくる行商のおじさんがくれたので、木炭より描きやすく手も汚れにくいので、絵を描くときに愛用しているのだが、色が付くものは初めて見た。

 リタのえんぴつは、ナイフでちょっとガタガタに削ってあるが、もらった色えんぴつとやらは木の筒である。

 1本手に取ってみると、真ん中に色がついていて、リタはえんぴつとは、削って使う前はこうなっているのかと理解した。


「よーし、使ってみよう!」


 家からナイフとえんぴつと紙を持ってきて、色えんぴつを全部削ると、リタは家から少し離れた草むらに鎮座している切り株に座る。

 画板がわりの木の板に紙を乗せて、えんぴつを走らせる。

 切り株から見える村の風景……家が5〜6軒程度かつ、かなり離れているが、村。

 そんな景色を描いて、色えんぴつを取ってみる。

 木でできた家なので、木の色っぽい色をとり、色えんぴつを走らせると、茶色が紙に乗る。


「わー?!」

「あ、茶色ー」


 リタの横にちゃっかり座っていたえっぐは、色を見てそのまんまな感想を述べる。

 いろんな色を全部試して塗っていたら、村の景色ではなくただのカラフルな色付き紙になってしまった。


「面白い! 草をこするより楽だ!」

「すごいねー、色えんぴつー」


 そして、リタは家事のお手伝いをやりつつ、色えんぴつを使いこなすため、研究をしていた。

 近くの森にある木の実や草花も使いつつ、色えんぴつも使えるようになり、ひとつ絵を完成させる。


「やったぁ! 前のよりきれいに描けたわ!」

「すごーい!」


 えっぐは、ぱちぱちと拍手を送る。

 リタの努力もすごいし、絵もすごい。興奮しているのか、耳が左右にぴこぴこ動いている。


「アメリアに届けるー?」

「えっ……!」


 せっかくなら使っているというのを見て欲しいが、リタは自分が子供だとわかっている。子供の絵を欲しがるものだろうか……と、焦った顔を見せる。


「アメリア、いろんな景色見たいはずだよー」

「そ、そうね! えっぐはアメリアとお話しできる?」

「できるよー」


 えっぐは、リタのお母さんには見えなかったのだ。

 一緒にいても何も言わないし、独り言が増えてうるさいわよと注意されたので、大人には見えないんだな、とリタはちょっと寂しい気持ちになった。

 声も聞こえてないなら、アメリアはどうなのか気になって訊ねると、ちゃんとお話しできるようで、安心した。


「あたし、文字も書けないし、読めないけど、絵で伝えることはできるから、アメリアの見たいものかはわからないけど、色々絵で届けたい! えっぐにお手伝いお願いするけど、いい?」

「いいよー! えっぐもお手伝いできてうれしー!」



 そして、少女たちの交流をえっぐが繋いだ。

 文字の書けない・読めないリタは、絵をたくさん届け、アメリアはベッドの上にいても出来る刺繍や、部屋に飾られるお花で作った押し花のしおりを作って、届ける。

 アメリアはお日様に当たれないのもそうだが、体もあまり丈夫ではないので、えっぐが会う時は、いつもベッドの中にいた。





「そんな感じで、何年もえっぐは郵便屋さんをやっていたんだー」


 えっぐがえっへんと言いたそうな顔をして、自分のやってきたお手伝いを、うふに教えてあげる。


「大変じゃなかったー?」

「お天気悪い時は、すっごくびっくりしたけど、ありがとうっていつも笑顔で受け取ってくれるから、すごく嬉しかったー」


 そして、うふはえっぐの手にあるものを眺める。

 リタからアメリアにも、アメリアからリタにも渡せなかったので、2つの届け物が、えっぐの手の中にあるのだ。


「何年くらいやってたー?」

「50年くらいー?」


 妖精さんは、時の概念が非常に薄く、人間と比べると寿命がとても長い。

 えっぐやうふにとっては、あまり長いとは感じない年月であるが、人間だと寿命を迎える者もいるであろう年月である。

 きちんと数えると60年ほど、えっぐはお手伝いをやっていたのだ。


「へー、2人とも大人でも、えっぐが見えてたんだ?」

「うん、不思議ー。大人ってほとんど見えないのにねー」

「ねー」


 ごくたまに、妖精さんが見える大人はいるものの、大抵見えるのは子供が多く、大人は見えないと思っていたうふ。

 えっぐも同じように思っていたので、ふたりとも体をくにゃりとたおして「ねー」と言う。

 そして細かいことをあまり気にしないのもあって、見えるという事実だけを受け止めた。


「リタとアメリア、おばあちゃんになって、お空にかえったの?」

「うん。これ届けに行ったら、家族の人たちがアメリアの周りを囲んで泣いていたー」


 そして、いつもアメリアがリタへ届けてほしい物が置いてある棚の上にあった物品を持って、リタから預かった絵を渡せずにとんぼ返りすると、リタもその間に天寿をまっとうして眠りについていた。

 えっぐの手には、渡せなかった物だけ残ってしまった。


 けれど、会いに行った時、目を開けてくれなくても、声を聞くことができなかったけれど、ありがとうの気持ちは部屋にあふれていたので、えっぐはその思いを体いっぱいに受け止めて、妖精さんの住む場所に帰ってきた。

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― 新着の感想 ―
60年間描き続けたリタ。 めちゃくちゃ上手くなっていそう。 アメリアの部屋には置き場がないくらいの大量の絵が……。 途中で水彩になったり、キャンバス油彩なんかに変わっていったり、鉛筆画に戻ったりしてい…
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