八十一話 我萌煌/ワレモコウ
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「……殺す!!!」
「行くわよエンジェル!」
「OKアシュラ!!…ってどうすんの?」
「元地下アイドルなんだからこういうアドリブは得意でしょ?」
「……あーーそういうこと。やっぱり捨て身ってことね。OK!それならやっぱり私得意だわ!」
「だから言ったじゃない、いつも通りやるわよ!!」
たまらず襲いかかってきた陽子2人してヒラリとかわすと、アシュラが足を引っ掛けて陽子を地面に倒す。
そして姿勢が低くなった陽子の顔面を2人同時に挟み込むようにハイキックで蹴り叩く。
まだアシュラ達の攻撃は終わらない。
「エンジェル!!」
「アシュラ!!」
その勢いのまま、間髪入れずにアシュラは顎へ膝蹴り、エンジェルは顔面へドロップキックを叩き込んでいく。
衝撃で陽子は深く倒れ込む。
「………」
「ねぇ、やったかな?」
「バカ…」
「え、なんで?」
「私がなんですぐ喋らなかったと思ってるのよ。そんなこと言ったら起き上がってくるのが流れってもんでしょ?もうっ!」
「でもあの女は流れとか分からないから大丈夫だって。あんまり空気とかも読めそうなタイプには見えないし……」
鬼のような形相でムクっと立ち上がる陽子。
「どうやらこういう空気は読めるみたいよ」
「都合良すぎでしょ!!」
「お前らだけは私の手で潰す……」
「あんなこと言ってますよエンジェルさん」
「どうしましょ。このままの流れなら今度は私達がやられる番な気がしますわアシュラさん」
「そうですわね。ってかそんなやり取りしてる場合じゃないのよ!」
「そっちが先に始めたんでしょ!私はそれに乗っただけだもん!」
「だからって乗らないでよ!」
「だから私のせいじゃないもん!…って、やっぱりこんな事してる場合じゃない。アレ見て」
「言われなくたって見てるわよ…」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!……ダァッ!!」
突然大声をあげて絶叫すると陽子の体に異変が起き始めた。
服は破れ飛び、肌の色は変わり肉体はより大きく強靭に。その姿はもはや人間と呼べるものではなかった。
その姿を異世界らしく言うのならまるで巨大なミノタウロスのようだ。
「マジですか……」
「うわぁ……なんかさ、キモいしグロいね」
「ちょっと…」
「だってそうじゃん!ゲームとかアニメではこういうのしょっちゅう見てたけど現実は流石にないわーー」
「声が大きい!流石にこの状態でこれ以上煽るのはマズイって!」
「だけどアシュラも同じこと思ってるでしょ?」
「いや私は…」
「…………」
じーっとアシュラを見つめるエンジェル。
「まぁ、極力触りたくはないかな」
「でしょ!?ほら!」
そんなやり取りをしているとエンジェルとミノタウロス化した陽子と目が合う。
「あっ、ヤバ」
どんどんと陽子の鼻息が荒くなっていく。
「もしかして来る?」
「どう考えたってこれは来るでしょ!」
陽子はアシュラ達目掛けて突っ込んでくる。
「やっぱりキタァ!!」
「当たったら流石にマズイッ!!」
間一髪陽子の突進を避けたアシュラ達。
「速っ!あの巨体で出すスピードじゃないでしょ。一応アレでもまだ人間よね?」
「想像以上に動けるデブだったね!」
「だから!!」
再びアシュラ達目掛けて陽子が突進してくる。
「これ以上煽るなって!!」
「ごめんなさーーい!」
これまたギリギリの所でかわす事に成功。
「……どうする、このまま避けてるだけじゃ埒があかないわよ。なんとかしないと」
「それは私も思った。ただでさえ体力少ないのに、こんな所で体力使ってたら攻撃する前に疲れ果てちゃうよ!」
「えらいまともな事言うじゃない」
「それだけヤバいって事だよ。…本気で頭使わなきゃ」
「いや、頭は使わない。分かりやすく短期決戦でいく。勿論捨身でね」
「なにするつもり?」
「先に言っとくわ。多分今からやる事が成功しても失敗しても私はその先役に立たないと思う。だからそこから部長の事は友莉亜に任せる。絶対1人にしちゃ駄目だよ。今の遥さんならなにするか分かったもんじゃないからさ」
「朱美……。それはいいけど、だからなにするつもりなの!?」
「アンタらしい答えね。逆に安心したわ。何が逆かは分からないけど」
そんなやり取りをしてる間にもう一度陽子が突っ込んでくる。
「ほら来たよ!!どうすんの!?間に合わない!もう一回避けるよ!」
「いや、必要ない!合図するまでアンタはここにいて!」
「え!?」
「こうすんのよっ!!」
巨体を武器に突っ込んでくる陽子を目の前から受け止めるアシュラ。
「ウソでしょ!…てことは!」
何かを察したエンジェルは側で準備を始める。
「ぐっ……はぁぁぁぁ!!!」
アシュラは力一杯陽子をの突進を受け止め動きを止める。
「モッ、モッ、モォォ!!」
自身の突進を受け止められた事て怒りだす陽子。
「まだまだぁ!!」
アシュラは陽子を持ち上げようと抱え試みる。
「はぁぁぁぁぁぁ!!上がれぇぇぇ!!」
「ンモォォォォ!!」
力がぶつかり合う両者の攻防。
それに勝ったのはアシュラだった。
身長は2メートル以上、体重なんて200キロは軽く超えているだろう。そんな巨体を持ち上げたのだ。
ブレーンバスターの形で陽子を持ち上げると、垂直の状態でなんとそれをとどめる。
「エンジェル!!行けぇぇ!!」
「エンジェル!いっきまーーす!!」
合図を受けたエンジェルはその場に転がる椅子やテーブルを高く積み上げた場所から思いっきり飛び上がり自らの体を陽子にぶつける。
その衝撃を利用してアシュラも陽子を地面に叩き落とす。
巨体を持ち上げきったアシュラはその場で疲れ果て倒れる。
「アシュラ、大丈夫そう?」
「……まぁ、ギリギリかな」
「やったね!」
「……だから、そうやって安易に喜んじゃダメだってば…」
「大丈夫だって…って!アシュラ後ろ!!」
既に立ち上がっていた陽子はアシュラを捕まえると背中を剃らせ勢いよく背中を地面へと叩きつけるパワーボムを繰り出した。
「だから言ったじゃん……」
1発では満足しない陽子は2発、3発とまるで餅つきのようにリズムよくアシュラを地面に叩きつけていった。
そして満足するとゴミのようにアシュラを投げ飛ばした。
「アシュラ!!、……もうっ!!」
満足気な表情を見せている陽子に飛びついたエンジェルは得意のスリーパーで首をガッチリと捕え締め付けていく。
「絶対死んでも離さない!!だけど…死にたくないからさっさっと落ちて!!」
抵抗する陽子だがエンジェルの手は中々離れない。
「お願いだから、じっとしてて!!お願いだからーー!」
暴れる陽子は次第に力がなくなり動きが鈍くなる。
「よし!!これならいける!」
そう思った瞬間、力が抜けていた筈の陽子の動きがより機敏に動き出す。
「ブモォォォォッ!!」
「きゃぁぁ!」
そのまま陽子は締め付けられながらも構わず後方へと倒れ込みエンジェルを地面へと叩き落とす。
地面へと叩きつけられたエンジェルは思わず手を離してしまう。
動けなくなったエンジェルにトドメを刺す為、陽子はその場で飛び上がるとエンジェルを下敷きに踏み潰した。
●美津谷 朱美& 加島 友莉亜VS ○泰山 陽子
フィニッシュ 餅つき式パワーボム
威薔薇ノ棘VS獸虹死賭
残り3人 残り6人
「あら、もう終わっちゃったの?」
息を荒げながらも満足気な表情の陽子の側に能力を解き姿を現した美燐。
「なーんだ、やっぱり私が来る必要なかったわね。なんとなく予想はしてたけど……」
「モォォォ!!」
雄叫びをあげる陽子。
「それにその姿、切札を使ったみたいね。もうあの頃の面影も無くなっちゃってさ、これじゃただのモンスターね。まぁいいわ。お陰で私達の目的達成には大きく近づいた。いくらあの桐生遥でもこの姿の陽子を相手にしたら敵わないでしょうから!…もう勝ったも同然ね!!」
余裕な笑みを浮かべて高笑いする美燐。
すると突如陽子の拳が美燐を不意に襲う。
美燐は衝撃で地面を転がる。
「ったぁ…………。ちょっとどういうつもりよ!!私達仲間でしょ!?まさかアンタ裏切るつもりじゃないでしょうね?」
「………………」
「どうにか言いなさいよ!!」
「ブモォォォォッ!!」
「……もしかしてアンタ、正気を失ってるの?」
「ンモォォォォォォォォォ!!」
大きな手で美淋を鷲掴みにすると自らの口の近くまで持ってくる。
「ちょっ!えっ、冗談でしょ!?……まさかとは思うけど、」
自我を失い完全にモンスターとなってしまった陽子は口を大きく開く。
「は!?ウソでしょ!!ちょっと!……ちょっ、マジで、ねぇ、ねぇってば!」
文字通り必死に抵抗する美燐。だが人間の力でモンスターの手から逃れることなく出来るはずがなく……
「イヤだ、イヤだってば!!あり得ない、あり得ないあり得ない!!こんな死に方絶対にありえな……」
大きく開いた陽子の口は無慈悲にも閉じられた。
威薔薇ノ棘VS獸虹死賭
残り3人 残り5人
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