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七十九話 魔執離狩荒/マトリカリア

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

「ねぇねぇ!!私の相手はどこにいんのよー!!」


遥やアシュラ達が命を賭けて戦い出し始めた頃。1人だけこの場で浮いてしまっていた人物がいた。

その名は笠鷺 未唯奈 通称 アイツ。威薔薇ノ棘の中でも1番血気盛んで戦うことが大好きな女。それに生きがいを感じその為に生きている。そんな女が少しタイミングがずれたばっかりに戦う相手が見当たらなかった。

そんな女は場違いな声量で泣き叫びワガママを言う子供のようだった。


「ねぇってば!なんで私の相手がいないのよー!!どう考えたってあの流れは私も戦う流れでしょ!?それなのになんで私だけ仲間外れなのよ!!ずるいよーみんな。もうこうなったら誰でもいいから、邪魔して相手を横取りしちゃおうかな?うん。それしかない!」


アイツ自身が勝手に納得して頷く。


「相手ならいるよ」

「え!!」


そんなアイツの耳に入ってくる朗報。その声を頼りに周りを見渡すがそれらしい人物はいない。


「あれーー?気のせい?」

「気のせいじゃない!ここにいるだろ!」

「んーーー?」


再び辺りを見渡すがそれらしい姿は見当たらない。


「いないじゃん」

「だからいるって!ココだよ!ココ!」


「ココ?」

「下だよ、下!目線を少し下に下げろ!なんで上ばっか見てるんだよ!?」


「下?…あっ!」

「あっ!じゃないんだよ!なんで私が見えないんだよー!」


「だって小さいから…」

「小さくねぇよ!そりゃお前らと比べれば大きくはないけど、見えない程小さくはない!一応私だってな140cm位はあるんだぞ!もしかしたら今はもうちょっと位は大きいかもしれないし!」

獸虹死賭 蟹座 鋼金 霞


「ちょっとって、それは誤差でしょ?そんなの変わらないって」

「誤差じゃねぇよ。変わるんだよ!!私にとっては大事なんだよ!ってかさ、こんな経験私初めてだぞ。小さすぎて見えないなんて言われたのも、何故か上ばっか見てて視線を下に下ろさない奴に出会うのもな!……そうか。さてはお前バカだろ?」


「バカじゃないよー。少なくても私はそう思わないし、みんなからそんな風に言われた事なんて一度もないもん!」

「そういう感じかバカなんだよ。周りも気にして言わないだけだ。みんな心の中じゃそう思ってる。バカだってな」


「…………」

「なんだよいきなり黙って。もしかして悲しいのか?」


「全然。なんでそうなるの?寧ろ嬉しいくらいだよ!」

「嬉しい?なにが?」


「だってさアナタ私と戦ってくれるんでしょ?こうやって私の事を挑発してるのもその為なんでしょ!?」


笑顔で喜びながら気持ちを伝えるアイツ。


「バカだって言われた事を根にも思わないなんて正真正銘のバカだ。それに戦う事が楽しみで嬉しいと思ってるなんてこの状況じゃイカれてる。だけど……」

「だけど?」


どんどん笑顔になっていくアイツ。


「困ったことに私はそういう奴が嫌いじゃない!!」

「だと思った!じゃあ私と思いっきり遊ぼうよ!」

「決闘だよ、バカヤロゥ…」


同時に両者の拳がぶつかり合う。

とにかく互いに体をぶつけあい殴り合う。殴っては殴られて、殴られたら殴り返す。この一時はただただそれを繰り返し続けた。


「キャハハっ!!分かりやすいくらい楽しいねっ!!」

「バカはよく笑う。それならもっと楽しませてやるからついて来い!!」

「喜んで!!」


霞の鋭いハイキックがアイツの顔面にクリーンヒット。

アイツの体は大きく揺らぐが構わず逆にそれを反動のように利用したハイキックで返していく。

そうなったら今度は霞が器用にアイツの背後へ回り羽交い締めの体勢で捕えるとそのまま後方に反り投げるドラゴン・スープレックスでアイツの後頭部や背中を強く地面に叩きつけ体力を大きく奪っていく。


「キャハハハッ……」


不気味に笑いながら立ち上がったアイツは霞を捕えると利き手を霞の股間から差し入れるようにして掴み、この状態から利き手側を上げて相手をひっくり返すように抱え上げて前方へと背面から投げ落とすボディスラムで反撃。

だがアイツもそれと同時に地面に崩れる。

このまま追撃に行きたいところだが体が上手くいうことを聞いてくれない。

そうこうしてる間に立ち上がる霞。


「もう限界?私はまだ能力も使ってないのよ。これで終わりだなんて言わないで!!」


立ち上がれないアイツを無慈悲に蹴り殴る。


「まだやれるんでしょ。楽しみたいんでしょ?だったらさっさっと立ち上がりなさいよ!」


霞の蹴りを見事にキャッチしたアイツはそのままゆっくりと立ち上がる。


「ハハッ!これで終わりなわけないじゃん。ちょっと疲れただけ……まだまだお楽しみはこれからだっつーの!!」


足を掴まれ身動き取れない霞に思いっきり頭突きを喰らわせるアイツ。


「……ったぁ…アンタも石頭?」


霞は顔色一つ変えずダメージを喰らったのはアイツの方だった。


「こう見えても硬さには自信があるの」

「ふーん……ならこっち!…よっ!」


自身の右足を軸にして体を左方向へと捻ると半身の体勢で更に捻りを加えて背を向けた状態になって軽く飛び上がり、再び軸足を切り替え捻って左足で踏み込みながら、霞の顔面に肘を叩き込むローリングエルボーで応戦。

が、結果は変わらずこれまたダメージを受けたのはアイツの方だった。

それはまるで霞の顔面や体が鋼鉄で覆われているように硬かったからだ。


「……ちょっと堅すぎじゃない?でも逆に燃える。面白いからなんでもいいや!」


諦めずにアイツは霞の顔面や体にとにかく攻撃を当て続ける。


「無駄よ。これが私の能力。私の体は決して傷つかない。言ったでしょ?硬さには自信があるって」


アイツの攻撃をするりとかわすと今度は霞が勢いをつけたタックルでアイツを吹き飛ばす。

鋼鉄の体から繰り出されるその衝撃はまるで人身事故のようだった。


「どう?これでもまだ面白い?」

「……ふふっ。ふふふ。キャハハハ!面白いに決まってるじゃん!!」


ボロボロになりながらも尚立ち上がるアイツ。


「まだやれるんだ?」

「もっちろん!私もね、スタミナには自信があるんだ!こんな最高なタイミングで終われるわけがないじゃん。まだまだこれからだよ!そうでしょ?」


「やっぱりお前はバカだ。ゾンビかよ……」

「生きてる人間にそれは失礼なんじゃない?私は脳みそなんか食べないよ!!」


アイツは側にあった椅子を持って霞に襲いかかる。


「そういう意味で言ったんじゃないよ!」


霞も椅子を持ち、互いにそれらをぶつけ合う。

その勝負に競り勝ったのは霞。霞は見事にアイツの頭を椅子で打ち付ける。

ふらつくアイツをそのまま捕えてテーブルへと登る霞。


「楽しいのは結構だけど生憎こっちも暇じゃない。そろそろ終わりにさせて貰う!」


霞はアイツを高く持ち上げる。

アイツはそれを抵抗することなく笑っていた。

霞は尻餅をつくように体を落としアイツの後頭部をテーブルに叩きつけるパイルドライバーで決めに入る。

テーブルは真っ二つに割れその衝撃を表している。


「ダメ押しは必要か?」


強烈なダメージを受けながらも笑いながらアイツはまだ立ちあがろうとしている。


「フッ。必要みたいだなぁ!!」


霞はその場で飛び上がり自身の鋼鉄な体をアイツに叩きつける。

ただ人が上に乗ったわけじゃない。鋼鉄が勢いよく体を潰したのだ。

普通なら生きてるわけがない。


「最後の勝負は楽しかったか?私は……まぁまぁだな」


そう呟くと霞はその場を後にしようとする。


「まぁまぁなんて酷いなぁ……」

「おいおい……」


声が聞こえて振り返ると、ボロボロ血まみれな姿のアイツが立っていた。


「あんなに楽しかったのに、まぁまぁじゃ終われないじゃん」

「お前本当に人間かよ……」


「人間だよ」

「バッカじゃねえの。なに真面目に答えてやがる。だからバカだって言われんだよ。そんなの私だって分かってんの!だけど普通じゃこんな展開ありえねぇんだよ!」


「アドレナリン出まくってるからかも……」

「バカなくせにそういう事は知ってんだな。なわけないでしょ…」


「じゃあ、本当にゾンビなのかもね」

「いくら異世界だからって笑えねぇよ……」


「なら一緒に笑おうよ。私が笑わせてあげるから!」

「遠慮しとくよ!」


壊れた机の破片を持って暴れまくるアイツ。

鋼鉄な体を持つ霞に効くはずもないがアイツはその手を止めない!


「キャハハハハハッ!!」

「ずっと気になってたんだ。お前笑い方が気持ち悪いんだよ!バカみてえだぞ!」


霞はそれ避けて後方へ回り攻撃を仕掛ける。


「死んでも死なねぇって言うならよ、戦う気が無くなるまで死なせてやるよ!それがいい!!」


背後から助走をつけて後頭部をつかみアイツの顔面を地面に叩きつけるフェイスクラッシャーで更にダメ押し。


「イヤハハッ!!」


それでもアイツは笑って立ち上がる。

今度はアイツが霞の胴体にミドルキック。そして直ぐに顔面を狙ったハイキック。それを連続で繰り返す。

だがやはり痛むのはアイツの足だけ。未だ霞にダメージらしいダメージを与えられていない。


「いつまでそうやって笑ってるつもりだ?耳障りなんだよ!」


霞は再びアイツの背後を捕えると得意のドラゴンスープレックスをもう一度狙うがアイツがそれを抵抗。

カウンターで霞の後頭部をジャンプして蹴り斬る延髄斬りでさらに応戦。

少しふらつく霞の体。


そこを狙ったアイツが椅子で叩きつけ追い打ち。とにかくアイツは一箇所を集中攻撃し続ける。


「だから無駄だ。私は決して傷つかない!!」

「……世界一硬いと言われてるダイヤモンドだって砕けないわけじゃない。弱い部分を叩き続ければ砕け散る!」


「そういうところはやっぱり妙に詳しいんだな。気持ち悪い。ダイヤモンドがそうだからって私がそうとは限らないでしょ!」

「そうだね……ただの……私の!!直感!」


叫びながら霞の胴体に椅子を振り下ろすと、ミシッと音と共に霞の体にヒビのようなものが入る。


「はぁ!?どうなってんのよこれ!?あり得ないんだけど!」


自らの体にヒビが入ったことで慌てふためく霞。


「あり得ない事が起きるから面白い。面白いから楽しいんでしょ!!」

「ふざけないで!!」


「面白いんだから仕方ないじゃん!!……本当ならもっと遊びたいけど流石に私も疲れた。だからこれで決める。1番好きなあの技で!!……お願いだから死なないでよ」

「死ぬわけないだろぉ!!勝つのは私なんだからぁ!!」


必死な形相で向かってくる霞。


それを迎え撃つアイツ。助走をつけ先に霞の腕に引っ掛けるように飛びつくと、腕を軸にして霞の体の周りを器用に旋回し、もう片方の腕を相手の首に引っ掛けて叩き落とす旋回式ネックブリーカー・ドロップを完璧に決める。

その衝撃によってまるで殻が剥けるように霞の鋼鉄の体はなくなり、生身のまま残りのダメージが直撃する。


「……まだ……まだ、終わってなんかない」


辛うじて意識が残る霞は立ちあがろうと試みるが体が動かない。


「……どうして、どうして動かないの……動けよ私の体!!」

「私の、勝ちだね……」

「認めない……私は認めない!!」


這うようにアイツに近づき体を掴む霞。


「まだだ……まだ終わってない。アンタだってまだ楽しみたいでしょ!!アハッ、アハハハッ!!」

「…………」

「ほら!!ヒャハハハハッ!!」


狂ったように笑い出す霞。


「もう、ダメだよ」

「お前が言うか?……」


霞の問いかけにアイツは笑顔を見せる。


「おやすみ」


そう言った瞬間ヘッドバットで霞を眠らせる。


「ふふっ。ふふふ……あーあ。もう笑い疲れちゃった……」


アイツは力が抜けるように地面に倒れる。

全身ボロボロで見た目は血塗れ。さっきまで大した痛みなんかなかったのに今はめちゃくちゃ痛い。

やっぱりアドレナリンは効いてたらしい。


「私もダメだなぁ……なんも感覚ないや。あんなに楽しかったのに今はつまらない。でもいっか。後悔はしてないや。……部長。私は先に行くけど部長は来ちゃダメだよ。約束、守れなくて……」


意識を失った霞の側でアイツは1人力尽きた。


△笠鷺 未唯奈(アイツ)VS △鋼金 (キャンサー)


威薔薇ノ棘VS獸虹死賭

残り5人   残り6人

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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