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七十七話 嚠陽凪蘇/ルピナス

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

獸虹死賭、宙愛と対峙中のサシミ。 


「……数多すぎ」


能力によって10人に分身した宙愛は半ば一方的にサシミを襲っていた。

サシミも得意の人並外れた足の速さで応戦するが数の多さと連携には敵わずにいた。


「……面倒ね。こうなったら奥の手を使うしかないか」


サシミは僅かな隙を狙って宙愛との距離をとる。


そして彼女が向かった先にいたのは。


「……ヤヨイ」

「サシミさん!大丈夫ですか!?…結構ボロボロみたいですけど」


「……平気。そんな事よりアナタの力が必要。手伝って?」

「あ、はい。私にできる事ならなんでもしますよ!」


「……いい返事。じゃああの分身の中から本体を見つけて。アナタの力ならそれができるでしょ?」

「なるほど。あれが本当に分身なら本体以外は幻のようなもの。だったらそんなのは相手にせずに本体を叩こうってことですね!」


「……分かりやすい説明はいいから。早く見て」

「ですね。了解です!」


ヤヨイはこちらに近づいてくる宙愛を<絶対鑑定>の力で見定める。


「え!?マジ?……」

「……どうしたの?」


「……さっき私が言ったこと忘れてください。あの分身は幻なんかじゃない。あそこにいる奴ら全員が命を持った本体なんです!!」

「……ということは全部やらなきゃダメってこと?」


「そうなりますね……」

「……最悪」


「どうします?流石にこの数を1人で相手するのは厳しいんじゃ。勿論私も出来ることはしますが……」

「……だけど私がやるしかない。当然ヤヨイにも協力はしてもらうけど」


「分かってますって。でもまともに戦うのは危険ですよ」

「……私もそれは分かってる。だからひとまず1番手前の奴を倒してから細かいことは考える。私、地道な作業は嫌いじゃないから。これしかない」


「ですね……なら私は他の分身を見張ってます。これだけの人数です。見る目は多い方がいい。周囲の様子は私に任せてサシミさんは戦いの方に集中してください」

「……任せた」

「ハイ!」


サシミは猛スピードで1番手前にいた宙愛に近づく。


「遅い!」

「……いいや、私の方が早い」


宙愛が攻撃する瞬間、カウンターの踵落としを素早く能天に直撃させる。

スピードにより勢いぎました踵落としは宙愛を1発で気絶させる。


「……あと9体。多すぎ。だけどこれが1番有効っぽい」

「サシミさん!3時の方向から一体来ます!」


「……了解」


ヤヨイの指示通り、少し先にいた宙愛をこれまた猛スピードで近づき素早い踵落としで沈める。


「……ありがと」

「いいえ。これだけの数の実体を完璧に統率することはいくらなんでも困難な筈。だったらその乱れた隙を狙って一体ずつ倒していけば勝ち目はあります!」


「……だね!」

「早速もう一体。今ならやれます!」

「……分かってる」


抜き出てきた宙愛をさっきまでと同様、素早い攻撃で仕留めようと近づいた瞬間、突如として宙愛はそこから姿を消した。


「……消えた」


「ここだよ!!」


声がする方へ振り向くとそこにはさっきまでバラバラな場所にいた筈の宙愛達がひとつの場所に集まっていた。

そこには同じく獸虹死賭の鈴原乙音の姿もあった。


「……今の、アンタの仕業?」

「思ったより察しがいいのね。お姉さん感心しちゃうわ。そうよ。アナタの想像通り今のは私の仕業。こういう風にね!」


乙音が自らのリズムに合わせて手を叩き始めると、そのリズムに合わせるように複数体の宙愛達がサシミの目の前に一瞬で現れる。


「アナタにはさっきの借りがあります」

「だからここでお返しします」

「暴力でね」


3人の宙愛は息のあったコンビネーションプレイでサシミを襲う。


「……騒がしい」

だがサシミは得意の逃げ足でそれを避けて反撃に移ろうとする。

が、


「どこ見てるんです?こっちにもいますよ」

「……!」


声が聞こえて慌てて振り返りもせずその場から退こうとしたがもう1人の宙愛の攻撃の方がはるかに早かった。

宙愛の強烈なエルボーによってサシミは大きく吹っ飛んでいく。


「サシミさん!」


受け身は取るもののこれによるダメージの大きさはさほど変わらない。


「サシミさん!聞こえますよね!?」

「……大丈夫。聞こえてる。このくらい問題ない」


ヤヨイの声を受けゆっくりと立ち上がるサシミ。

体勢を整える。


「どうかしら?お姉さんの瞬間移動のトリックは。結構痺れるでしょ?」

「トリックって。ただのアナタの能力でしょ?」


「あら、下品な子ね。種や仕掛けが分かってもそれを口に出すのはマナー違反よ。宙愛もそう思わない?」

「ええ。そんなんじゃつまらないですよ」

「そうよね。私もそう思うわ」


「……だったら私がつまらなくしてあげる」


サシミは速攻で乙音達の側まで近寄る。


「面白いけどまだまだね」


だが直ぐに目の前からいなくなってしまう。


「……チッ」

「怒らないで?そんなにカリカリしたらせっかくのカワイイ顔も台無しよ」


「……煩い!」


背後に現れた乙音達に回し蹴りを仕掛けるがまたその場から簡単に姿を消されてしまい攻撃は届かない。


「ほら、その顔よ。いいの?そんな顔しちゃって。ま、私は人のそういう顔嫌いじゃないけど」

「私もです。乙音さん」

「だと思った」


サシミの不意をつくように突如姿を現した1人の宙愛が背後からサシミの後頭部を狙った膝蹴りのニーキックを喰らわせる。


「これだけじゃありませんよ」


崩れ落ちたサシミを狙ってもう1人の宙愛と挟み込むように同時にサシミを蹴り上げる。


「!!……」


思わずサシミは地面に倒れる。


「サシミさん!!」


急いでヤヨイはサシミのそばに駆けつける。


「サシミさん大丈夫ですか!?」

「…………うん。なんとかね」


「サシミさん……」

「そこの子娘さん」


乙音はヤヨイに指を挿しながら問いかける。


「……なんでしょう?」

「アナタまでそんな怖い顔しないでよ。お姉さん興奮しちゃうわ」


「だったら変態ですね」

「初対面の人に対してそれは失礼なんじゃないの?でも合ってる。こうやってこの人達と一緒にいるんだから只者じゃないとは思ってたけど、やっぱり流石ね。見る目があるわ」


「見る目も視力にも自信があるんで」

「面白いこと言うわね。だったら今度はアナタが私達と戦ってみる?そしたらその間位はあの子も痛めた体を休ませられるんじゃないかしら?」


「…………」

「あらま。即決するかと思ったら意外と悩むのね」


「……分かりました。私が相手になります」

「そう言うと思った」


「……待って」


前へ出ようとするヤヨイをサシミが止める。


「……気にしないで、私は大丈夫。私がやる」

「そっくりそのままそのセリフお返ししますよ。私なら大丈夫です。少しの間だけですけど体休めてて下さい」


「……ダメ!アナタじゃ勝てない。死にに行くだけ。……そんなのさせられない」

「分かってます。だけど今の私には肉壁となって時間を稼ぐくらいのことでしか役に立てません。だからこんな時くらい役に立たせてください」


「……だからそんなのダメ。アナタの役目はそんなことじゃない」

「でもそれしか…」


「ねぇ、今って揉める時間?」

「私は違うと思います」

「そうよね。私もそう思うわ。だから思い知らせてやりなさい」


乙音が再び手を叩くと瞬時に複数人の宙愛達がサシミ達を取り囲む。


「ヤヨイ!!」


直ぐにサシミがヤヨイを庇うように覆い被さると全ての攻撃を1人で背負うことに。


「サシミさん……」


粗方リンチのような一方的な攻撃が終わると再び瞬間移動で宙愛達は乙音の側に集まっていく。


「ねぇ、お二人ともそろそろ限界なんじゃない?いや、限界なのは1人だけか。どうする?そのまま続けて無様に寂しく1人で死んでいく所を見届ける。それとも2人一緒に仲良くくたばる方を選ぶ?選ばせてあげるわ。因みに私はどっちでもいいわ。だってどっちの選択肢を選んでも私達には得しかないんだから」

「どうせなら私は2つ目の選択肢の方がいいと思います」


「なんでよ?」

「そっちの方が残ったあの女のいい顔が見れると思いません?きっと最高な表情をしますよ」


「なるほどねー。そう言われるとそっちの方がいい気がするわね。残る方はさほど強くなさそうだしそれでこっちが不利になる事も無さそうね。いいわ、決めた。宙愛の意見を採用するわ」

「ありがとうございます」

「ということだから悪いけど、選択肢は無くなったわ。そのまま無様に守られながら仲間が死ぬところを黙って見届けてなさい。それまでは生かしといてあげるから」



「……ヤヨイ。そういうことみたいだからアナタは直ぐにここから逃げて。私じゃアナタを守りきれない。このまま一緒にいたらいずれはヤヨイの命も危ない。だから早く!」

「でも……」


「……でもじゃない。誰でもいいから早く、他の誰かの側にいた方がきっとアナタも安心できる。私なんかよりよっぽど他の奴の方が上手くヤヨイを守ってくれるわ」

「そんな事ありませんよ!!私は……」


「いいから行って!!アナタが一緒だと本気を出せないから邪魔なのよ!!大丈夫、逃げる位の時間はちゃんと作ってみせるわ。それにタダで死ぬ気はないから。分かったなら早く行きなさい!!」


サシミらしくない言動と落ち着きのない慌ただしい喋り方。その全てかサシミの覚悟を伝えるようだった。


「んっ……」


すると乙音が再びリズムに乗りながら手を叩き出す。


「来る。急いで逃げて!!」

「サシミさん!…」


サシミはそうヤヨイに言い残すと猛スピードて乙音達の元へ駆け出す。


「無駄よ。幾ら足が速くても私の瞬間移動には敵わない。それにこれだけの人数相手を1人で相手するのは流石に無謀だと思うわ。私と宙愛の能力の相性はバッチリ。だからこんなに余裕で喋れる。ついでに相性の良さも見せてあげるわ。宙愛」

「いつでもどうぞ」


宙愛の合図で大量の宙愛が瞬間移動を繰り返しサシミを取り囲み惑わせる。


「はあぁ!!」


サシミはとにかく目に入った宙愛に猛スピードで近づき蹴り込んでいくがその時には姿がなく逆に背後から宙愛の攻撃を受けてしまう。

反撃をしようと距離を取りながら動き回るサシミだが常に瞬間移動によって回り込まれ、これまた攻撃を受け続けてしまう。


「サシミさん!!……」

「さあ、そろそろ終わりにしましょうか。そして見せてちょうだい。絶望と恐怖で歪む最高の顔をね。宙愛!」

「そういうことです。だからこれで終わり!!」


サシミを囲んだ複数の宙愛達が一斉にサシミにトドメを刺しに来る。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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