七十五話 織蓮侍/オレンジ
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「ありゃあ、2人とも死んだなぁ」
「オジョウ……」
遠くからそれを見ていた神奈。そしてそれと対していたアシュラはそれを遠くから見ている事しか出来なかった。
「あっという間にお前の仲間が4人も死んだ。それも全部お前達があの女と一緒に戦う事を選んだからだ。絆、友情、約束それらを大事にした結果がこれ。後悔してるか?」
「ちょっと黙ってくれる……」
「イヤだね。嫌がることなら尚更やめられねぇよ。だって私達はお前らの敵なんだからな」
「……黙れ」
「だからイヤだね。……結局、つまらない約束なんか守ってるから死ななくてもいい場所で死んじまうんだ。勝てる勝負をわざわざ負けに行くなんてバカがすることだ」
「だから黙れ」
「だけど最後は約束破って自分諸共麗央奈の奴を殺しに行くんだもんな。だったら最初から破ってれば良かったんだ。それなら無駄に命を賭ける必要もなかった。ホントお前らはバカばっかりだ!ハハハハッ!!」
「黙れって言ってるでしょうが!!」
「ヘッ……全部事実じゃねぇか。間違ったこと言ってるか?」
「いい?あの子達の死は無駄なんかじゃない……それにオジョウは約束を破ったんじゃない。破りざるを得なかったんだ!目的の為に仲間すら見殺しに出来るような奴らが私の後輩を、仲間を笑うな!!」
「オメェらとは最初から覚悟がちげぇんだよ。私達は1人でも多くこの世界から帰るって決めてんだ!!仲間が死んだくらいでいちいち動じる暇なんて私達にはないんだ。甘い事ばっかぬかしてる奴らに私達のやり方をとやかく言われる筋合いはねぇんだよ!!」
「違くて当たり前。一緒にされたらそれこそ困る」
「…だろうなぁ。だけど結局お前もそんな事言ったって最後にはさっきの仲間のように約束破って私を殺しにかかるんだろ?自分の為に、仲間の為にって!だったら最初からその気でかかってきやがれ!綺麗に返り討ちにしてやっからよ!!」
「バカ言わないでください。オジョウは最後まで約束を守ろうとしてきた。それなのに私が好き勝手な理由で簡単に約束を破れるわけないでしょ!!」
「バカ言ってんのはずっとテメェの方だ!そんなやり方で私達に勝てるとでも思ってんのか!!そのやり方で仲間が死んだのに。綺麗事ばかり抜かしてねぇでさっさと本気で来やがれってんだ!!」
激昂しながら神奈はアシュラに一発叩き込む。
「アンタの言う通りかもしれません。きっと最初に約束した遥部長も同じ事を思ってる……だけどね、人間、綺麗事が言えなくなったらマジで終わりなのよ……それが私達まで出来なくなったらあの子達の死が無駄になってしまう。だからそれを裏切る訳にはいかないのよ!!私達が信じた遥さんを1人にさせない為にも。約束するわ。私はアンタを殺さずに勝つ!」
アシュラは傷を拭いながら向くっと立ち上がった。
「ハハッ、立派だな。だったら証明して見せろ。お前が勝って全部私に証明してみろよ!!」
「言われなくてもそのつもりよ……バーカ」
アシュラは早速ヘアゴムを取り出しツインテールに纏めて気合を入れる。
「ああぁ!!」
アシュラは神奈目掛けて真っ直ぐ突っ込んで行く。
そのまま飛び上がると体を捻らせながら叩きつける回し蹴り、フライニングニールキックを叩き込む。
そのまま持ち上げようと掴むが麗央奈はそれを抵抗する。
お返しとばかりに抉るようなラリアットを叩き込む神奈。続けざまに助走をつけて走り込んでからの倒れ込むアシュラに向かってのスライディングラリアットで見事に流れを掴んでいく神奈。
今度は神奈が掴みアシュラを持ち上げると背部を叩きつけようと勢いをつける。
「んぐっ……」
アシュラもそれに負けじと抵抗するが僅かに及ばず、勢いのついたパワーボムで地面に叩きつけられる。
「おいおい、口の割にはそんなもんかよ!」
「……んなわけないでしょ!」
颯爽と立ち上がると再び勢いのつけたニールキックで神奈を地面に倒す。
今度はアシュラがオジョウを抱えるとそのまま後方へジャーマンスープレックスで投げ落としていく。
「どうよ、少しは効いたでしょ?」
「へっ、まぁな……。思ったよりはちゃんとやるみたいで安心したぜ。だけどまだまだだ!まだ全然足りねぇな、もっと来いよ!!」
「だったらこれならどうでしょう!!」
起き上がった神奈を再び地面に倒すと、足首を持ったアシュラがお得意のジャイアントスイングでブンブンと回していく。
「耐えれるもんなら耐えてみなさい!」
回転はどんどんと早くなっていく度に勢いは増していく。
「ハハッ!!お前やるなぁ!これだけのスピードで回し続けるなんて中々できねぇぞ」
回されながら神奈は平然な様子で喋っている。
「舌噛むわよ!!」
アシュラは更にスピードを上げて回していく。
「おいおい、マジかよ。まだ早くなるのか!尋常じゃねえよお前!!」
「!!……」
それでも神奈は相変わらず平気そうな顔で楽しんでいる。
アシュラは諦めずに回し続けるが100回転を超えたあたりで一度神奈を放り投げる。
「はぁ…はぁ……」
「お前凄ぇな。見直したぜ」
けろっとした様子で立ち上がる。
「アンタも大概よ……」
アシュラも立ちあがろうとするが先はどの疲弊で体が思ったより上手く動かない。
「今度は私の番だ。安心しな、お前は動かなくていいからよ」
少し離れた場所から神奈がアシュラに向かって指を鳴らすとアシュラの体が燃え始める。
「!!」
だが着ていた特攻服のお陰で炎の熱さは無傷で済んでいる。
「本当安心。これなら動かなくても平気だわ」
「おいおいマジかよ……あっ、その特服がワケありか?」
「……バレた?」
「当たり前だ!なるほどなぁ……いいもん持ってんじゃねえか!じゃあこっちも火力を変えなきゃならねぇな」
「!?」
神奈はさっきと逆の手で指を鳴らす。
するとアシュラを燃やしていたオレンジの炎は青く燃え上がる。
「だから平気だって言ってるでしょ…っ!!ああっ!」
今まで同様特攻服の力のお陰で炎の熱さは感じない。だがさっきまでとは明らかにアシュラの様子がおかしい。
「お前、勘違いしてるよ。さっきも言ったが私の炎は熱くはない。その特攻服のお陰で炎によるダメージ自体は防げているようだがな。だけどそれだけじゃダメなんだ。私の炎が与えるのはそもそも熱さなんかじゃない。痛みなんだよ。本来燃えて受ける筈の痛みを燃やさずに喰らわせる事が出来る。それが私の力!!つまりお前のそれじゃ炎は防げても炎によるダメージまでは防げないってことだ!」
「ぐあっ……んん!!」
「さぁ、いつまで耐えれるかな?言っとくが私の炎は燃え尽きないぜ。だからいつまでも付き合ってやるから安心しなぁ!!そのまま熱さも感じず痛みと衝撃だけを味わいながら狂い死ねぇ!」
アシュラは焼けるような痛みにもがきながら歯を食い縛る。
「……あああぁ!!!」
アシュラは突進すると神奈に抱きつく。
だが、
「一応言っとくがその炎は私には効かねぇぜ。さっきの仲間のように道連れを考えたなら無駄だから諦めな」
アシュラを逆さまに抱え上げると神奈は垂直落下式ブレーンバスターで地面に叩きつける。
炎による痛みと衝撃、そして物理的に受けるダメージがアシュラを苦しめる。
辛うじて立ち上がるがアシュラの限界は近い。
「あぁぁぁ!!」
「まだ立ち上がれんのかよ!!無理すんな、ここで頑張っても結果は変わらねぇ。お前は私には勝てない。だからさっさと死んで楽になりやがれ!」
「ああっ……そんな、訳にはいかないのよ。……こっちはね、死んでも死にきれないくらい……死んじゃいけないのよ……。色々と背負ってんの。…簡単に諦める訳には、ぐあっ!……いかないのよ!!」
「分かったよ。だったら好きなだけ無茶すればいいだろ。どうせ結果は変わらない。そんなに悪あがきが趣味なら仕方ねぇ。付き合ってやるよ!」
「……生憎、それは私の趣味じゃない。んっ…今の私の生き様よ。それに付き合った事後悔させてあげるわ!」
アシュラは必死で痛みに耐えながら、自らのポケットを弄り携帯用のハサミを取り出す。
「なにする気だ?」
「……ぐうっ……ハァ、ハァ。…私も覚悟決めんのよ……」
「もしかして、それで私を刺し殺すつもりか?おいおい、やっぱりお前もさっきの奴と同じじゃねぇか。結局お前もそうやって約束を破るんだな!」
「違う!……約束を守るために!これを使うのよ……」
「じゃあどうすんだ?」
「こうすんのよ……」
アシュラはニヤッと笑うとツインテールに結んでいた髪を解き靡かせる。そして手に持ったハサミで自らの髪を豪快に切り刻み始めた。
「おいおい……正気か?」
「正気よ……これが私なりの気合の入れ方……。覚悟の証明の仕方よ」
「気合ねぇ……面白え。だけどな髪を切ったところでなにが変わる?そんな事で本当に強くなるとでも?私に勝てるとでも思ってんのか!」
「強くなんか……ならないわよ。言ったでしょ。これは私なりの気合の入れ方だって。……モチベーションさえ上がれば、私はお前にだって勝てると信じてる。私はお前より強い!!」
「……お前は本当によく耐えたよ。普通ならこれだけのダメージを喰らって正気でいられるわけがねぇ。だけどお前は耐えた。でも正気じゃねぇからまだ私に勝てるなんて思ってやがる。だから、直ぐに楽にしてやる!そのままそこを動くんじゃねぇぞ!」
勢いよくトドメを刺しにくる神奈。
それを痛みに耐えながら黙って見つめているアシュラ。
「終わりだぁっ!!」
「ああぁ!」
アシュラはその攻撃をいなすと素早く神奈を前屈みの体勢に持っていく。
すると前屈みになった相手の頭を自身の股の間に正面から挟み込み、相手の腰を両手で抱え込んだ後、自身の体を360度前方回転させるようにジャンプして尻餅をつき、宙に浮き上がった神奈の頭部をパイルドライバーの要領で強く打ちつける。
まさにそれはかつて遥が決め技としてよく使っていたフリッピング・パイルドライバーそのものだった。
遥に憧れていたアシュラはそれをイメージと記憶だけで成功させてみせた。
「…………」
アシュラを包んでいた炎は消え、痛みや衝撃も新たに感じる事はなくなった。
「はぁ……はぁ……」
アシュラは倒れた神奈にゆっくりと近づき、息を確認する。
「スー……スー……」
驚いた表情のまま意識を失い気絶している神奈。
「……約束は守りましたよ、部長!」
気が抜けた遥は思わずその場で倒れてしまう。
「やばっ……思った以上に動けないわ。まだやんなきゃいけないことがいっぱいあるっていうのに……ほら出た」
倒れているアシュラを見下ろすように、アシュラの倍はありそうな背丈とガタイがいい体の大きな女がアシュラを見下ろしていた。
「ちょっと待ってなさい。ちゃんと相手になってあげるから…」
余裕な表情な女に対して、アシュラはゆっくりと起き上がった。
「ムカつくわー……」
○美津谷 朱美VS● 叫埼 神奈
フィニッシュ フリッピング・パイルドライバー(修羅転生)
威薔薇ノ棘VS獸虹死賭
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