七十一話 透兎蓮譜翔迦愛薔爪/ストレートカーバス
閲覧感謝です!
貴重なお時間にお邪魔します……
「ねぇ……いつの間に大変なことになってるよ」
「うん。……私達どうする?」
園芸部から聞こえる騒ぎの音を聞きつけてやってきたドヤガオとマケガオは扉を少しだけ開けて中で起こっている荒んな様子を伺っていた。
「どうするって、どうすんのよ」
「一緒に戦うとか?」
「馬鹿言わないでよ。私達は二人とも園芸部のあの人達みたいに強いわけじゃない。下手に行っても先輩達の足を引っ張るだけよ」
「だけど……」
「アンタも見てたでしょ?カモメ先輩が殺されるところを。中に入ったら今度は私達がそうなる番かもしれないのよ!?」
「……」
「だからってこのまま黙って見てるだけでよろしいんですの?」
「え?」
声が聞こえて2人が慌てて後ろを振り向くとそこには臨戦体制のオジョウの姿があった。
「先輩」
「私は行きますわよ。友のためにも……」
「……」
「…先輩は怖くないんですか?」
「怖いに決まってますわ。だって私なんか喧嘩のけの字も知らない素人程の強さしかございませんから。恐らく、このまままともに戦えば部長達の足を見事に引っ張った後に無駄死にするでしょうね。ふふっ…」
「笑えませんよ、それ」
「無理にでも笑わなきゃこんなノリやってられませんわ」
「だったらやらなきゃいいじゃないですか。そんな事で死ぬなんて私は耐えられません!ここで戦わなければ少なくても私は生き残れるかもしれないんですから!」
「ドヤガオ……」
普段マケガオには見せた事もないドヤガオが恐怖の表情。
「それも正しい選択だと思いますよ。部長だってその選択を否定しようとはしないと思いますわ。アナタがそれでいいのならどうぞお逃げください。でも私は放っておけない。だから無茶でも戦うことを選びます」
「勝手にしてください。私達には関係ないですから。マケガオ行くよ」
ドヤガオはマケガオを連れここを去ろうとするが、マケガオをその場から動こうとはしなかった。
「マケガオ?」
「ごめん……先行ってて」
「え、なんで!?」
「やっぱ私、一緒にはいけないよ」
「だからなんでそうなるのよ!?」
「戦わなきゃ!このまま放っておいたらもっと取り返しがつかない事になるもん!」
「放っておいていいのよ!忘れたわけ!?私達が行ったってしょうがないの!!私達はあの人達みたいに強くないんだよ!?」
「分かってるよそんなの!言われなくたって私が1番分かってる!」
「じゃあなんでよ……」
「このまま逃げたって何も変わらないじゃん」
「変わりたいの?」
「分からないよ、そんなの……」
「どっちなのよ…」
「分からないもんは分からないの。だけどこのままじゃいけないんだよ!私達は!」
「…………」
「……ドヤガオ。私にアナタの命を預けてよ。だから一緒に戦って」
「は?」
普段のマケガオなら絶対口にしないであろう一言。そんな事を言うマケガオが今日はなんだか少し頼もしくも見えた。
「私がアナタを絶対に死なせないから」
「何を言ってんの」
「私は弱い。瞳と組まなきゃ私はもっと弱い。だから私のために付き合ってよ。大丈夫、何があっても私が瞳を守って見せるから」
「だからいきなり何言ってんのよ!!さっきから意味が分からない。私を守る?弱いアンタが私を!?あのさ、私は別に守って欲しいわけじゃない!私はただ死にたくないだけなの!」
「瞳……」
「だからって、そんな理由で静乃に死なれたら私はもっと困るのよ!!迷惑なのっ!!」
「……」
「あーーーもうっ!!黙らないでよ!後から言ったこっちが恥ずかしくなるじゃん」
ドヤガオはひたすら頭を掻きむしった。
「……だから私もアンタと一緒に戦ってあげるわよ。それでいいんでしょ?」
「え、いいの?」
「しょうがないでしょ!私がいなきゃもっと弱いままなら私がいなきゃ話にならないじゃない!もう最悪……」
「瞳。ありがとう」
「……いいえ、どういたしまして。アンタのマイペースぶりには慣れっこだもの。強くもないくせにらしくもないカッコをつけちゃって本当、ムカつく。…せっかく付き合うんだから万が一勝ったらドヤ顔くらいさせなさいよ」
「ふふっ。もっちろん!好きなだけしていいよ!だって私達は2人とも弱いけど2人が組めば最強だもん!!だからドヤ顔し放題!!」
さっきのマケガオからいつものマケガオに戻ったらしい。
「大丈夫なのよね?その方程式」
「大丈夫大丈夫!」
「ならしょうがないわね。ったく!それじゃあこっちも覚悟を決めるしかないじゃない。マケガオ、いや、静乃」
「ん?」
「アンタの命は私が預かる。私が静乃を絶対に死なせない。だからいいわよね?預かっても」
「うん。もちろん!私も約束は守るからね!」
「当たり前よ。そうじゃなきゃ生きて帰れない!」
ドヤガオ、マケガオ共に見つめ合い頷き、覚悟を決める。
「お2人とも見事に決断なさったみたいですね」
「オジョウさん、お待たせしました」
「お待たせです!」
「あら、その呼び方をされたのは案外初めでですわ。いいですわねそれ」
「ふざけてる場合ですか?」
「だからふざけてるのですよ。言ったでしょ?こんな時だからこそ笑わなきゃ美しくありませんわ」
「フフッ。ですね」
「キャハハ!!よーーし!やるぞー!!」
「いい顔ですわ。それではお2人とも、共に開けましょうか。この扉の先が地獄でない事を祈って」
息を合わせて3人が扉を開こうとすると、先に中から扉が開く。
「うるさいなぁ。さっきから全部丸聞こえなんだよ」
目の前には見たこともない長髪が綺麗なスタイルのいい女。
「奇襲なら静かにバレないようにやりなさい!…こういうふうにさ!!」
「!!お2人とも伏せて!」
オジョウは2人の頭を無理やり下げさせて、自分も伏せる。
「きゃああああっ!!」
女は甲高い叫び声を上げると尋常じゃない勢いのまま飛び蹴りを叩き込んでくる。
なんとか3人はそれを避けるが、女が着地した地面には勢いによってヒビができていた。
「うわぁ……マジかよ」
「自分が1番大きい声出しといてよく言うよね、この人」
「はしたない女ですが、只者ではないようですわ。とにかくここは一度距離をとりましょうか」
「賛成です」
「私も!」
オジョウ達3人は女の猛攻を避けるながら部室内に入っていく。
レッカの魔法によって広くなった部室内を進んでいくと、目の前に現れたのは一体のマネキン。
オジョウ達はまだその正体を知らない。
「なんでこんなところにこんな物が?」
「オジョウさん!そんなの無視してまずは皆さんと合流しましょう」
「そうですわね」
ドヤガオの言う通りマネキンを無視して進もうとすると突如マネキンが動きだしその行手を阻む。
「なっ!」
「動いた!?」
「都市伝説?」
ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。
よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!
次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈ってお待ちしております。