六十八話 月契呪希華/ゲッケイジュ
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「エプロンさん!?」
遥は衝撃で深く仰反る。
「悪いな、遥。もう色々とうんざりやわ…。ウチもな、日本に帰りたいねん。だからウチの為でええから死んでくれ」
「何言ってるんですか!?エプロンさん!!まさかこの状況で裏切るつもりじゃないですよね!?」
「このタイミングだから裏切るんやないか……。和葉、紫鶴那!そういうことやから、ウチも仲間に入れてくれや!!ウチが入ると12人じゃなくなるけど別にええやろ?」
和葉と紫鶴那は互いに目を合わせる事もなく答えを決める。
「沙莉さん!アナタならいつだって大歓迎ですよ!」
「そうですよ。というか、沙莉さんは元から私達の仲間です。沙莉さんの居場所はあそこじゃない。此処なんですよ。その際人数が増えようが関係ありません。AKBとかと一緒ですよ。人数が変わろうがジュウニシトは獸虹死賭なんです」
「そう言ってくれて有難いわ…」
エプロンは来ていたハレ女の制服と持っていた特攻服を投げ捨てると和葉達の群れへ混じる。
「沙莉さん、どうぞ」
紫鶴那は自分が着ていた派手な上着を脱ぐとエプロンに渡す。
「コレ…」
「獸虹死賭結成当初の入場衣装ですよ。覚えてますよね」
「ああ…」
「今じゃ、それを持っているのは私と和葉さんだけ。それに私が着ていたのは元々沙莉さんが着ていた物だ。それを私が譲り受けたから。だから返します。この衣装は獸虹死賭初期メンバーの貴方が着るべきだ。私じゃない」
「懐かしいな……」
エプロンはゆっくりと衣装の袖に手を通した。
「これでメンバーは揃った。遥さん、今度こそマジで始めますよ」
「……」
遥は殴られた顔面を庇いながら起き上がる。
「やってくれたわね…こんなの久々よ」
「だろうな」
「リングの上に立ってた時はこんなの日常茶飯事だった。だけど今じゃちょっと珍しい。……だからムカつくわ」
遥は笑う。
「遥さん……。エプロンさんも急にどうしちゃったんですか!?こんなの何かの冗談ですよね?だったらやめて下さいよ!!」
状況を上手く飲み込めないアシュラ達。
「冗談でこんな事する訳ないやろ。遥でもあるまいし……お前らも覚悟決めろや」
「そんな……でも私は!」
「やめなさいアシュラ」
「部長……」
「好きにさせときなさい。私達は私達は仲間であっても家族なんかじゃない。仮に家族であっても決断を否定する権利なんかないんだから」
「…………ッ」
「だからアンタ達も好きにしていいのよ?エプロン、いや、沙莉みたいに裏切っても構わないわ。私をそれを咎める事も止める事もしない。さっさと決めなさい。これからどっちに付くのか」
「……何回言わせるんですか。私はもう覚悟は出来てます。何があっても私がいる限り部長を1人になんかさせません。……推しは変えない主義なんで」
今度こそ覚悟を決めた所を見せるアシュラ。
「エンジェルは?」
「私?私は……正直なこと言うと日本に帰りたい」
「エンジェル…」
「だってさ、いつまでも愛しのダーリンに会えないのは寂しいし、ダーリンだって私の事を待ってるだろうしさ…」
「いいわよ。アナタの好きにしなさい」
「だからこそ私は帰らない!!」
「え?」
「そんな顔しないでよ、アシュラ。私も一緒に戦う。だから部長、私も最後まで一緒に付き合わせて下さいよ」
「…いいの?愛しのダーリンがいる日本に戻れなくても?」
「それはイヤだ…イヤだけど!今じゃない。だって私は仲間や友達を裏切ってまで日本に帰りたいとは思わないから」
エンジェルは静かに沙莉を睨む。
「帰る時は皆と一緒。異世界からの帰還はそうじゃなきゃハッピーエンドじゃない!」
「そう…。サシミは?」
「……私も一緒に戦います」
「いいのね?」
「……私の居場所は日本だけじゃありません。部長と一緒にいられればそれでいい。そこが私の居場所ですから」
「そんな真っ直ぐな目で言われたら、私も照れるわね……。分かったわ」
「あっ、部長!!もちろん私は一緒にやるからねー!!」
「アイツ……」
「だってさ日本に戻ったってここ程ワクワクする場所はないでしょ?どんなに痛い目にあったって、あわせたっていい、なんでもアリの異世界。それってやっぱり最高じゃん!!」
「そう思うのはきっとアナタだけよ」
「そうなの?でもさ、部長といた方が楽しいって思ってるのは皆も一緒でしょ?」
アシュラ達は頷く。
「だから一緒にやるよ。どうせなら楽しい方がいい。それで死んだなら私は後悔なんかないもん!!」
子供のような笑顔を見せるアイツ。
「……だからって勝手に死ぬんじゃないわよ?」
「うん。分かってます!!」
元気に親指を立てるアイツ。
そんな彼女達の様子を微笑みながら見守っていたヤヨイ。
「いいですね。なんか青春って感じです」
「正しい青春じゃないと思うけどね。……でもいいんじゃない?普通らしくない私達らしくてさ」
「じゃあ、私も混ぜてくださいよ。その戦いに」
「ヤヨイ……」
「そもそも私はもうこの世界の人間です。日本に戻ったところで仕方がない。あの頃の未練なんかとっくにありませんよ。だから、必然的に私は遥さん達に付くんです。あ、と言っても私は戦えないんで、そこら辺は期待しないでくださいよ?」
「分かってるわよ、そもそもそんな期待なんか最初からしてないわ。やれる事をやってくれればそれでいい。だってヤヨイは役に立つんでしょ?」
「ハイ!!」
「ヤヨイ」
「はい?」
「ありがとう」
「…仲間ですから」
「あのーー、」
「ん?」
遥は振り返る。
「私の事もお忘れなきようお願いしますわ」
「レッカ」
「遥さんと私は友達、ダチなんでしょう?だったら私も混ぜて下さいまし。それに彼女達と戦っていれば王を殺し、遥さん達に罪を被せたゴブリンのクソ野郎とも会えるかも知れませんしね」
「クソ野郎って……口が悪いわよ」
「あらま、私としたことが。失礼」
「でも助かるわ。ありがとう」
「いいえ。礼を言われる程じゃありませんわ。それに彼女達が召喚者なら私のような戦える現地の人間がいた方が何かと便利だと思いますわ」
「どういうこと?」
「皆さんもさっき見たでしょう。1人だった筈がいつの間にか4人になったところを」
「見たわよ。でもそれがどうかしたわけ?異世界はこんな事普通でしょ?」
「普通じゃありませんよ。アレは特別です。彼女達が召喚者ならば、他の方達もあのようなおかしな能力を持っていると考えてもいいですわ。召喚者というものは、遥さん達転移者同様この世界の人間ではありません。そのに魔力を持たず魔法や能力を使う事ができない。ただ転移者と違うのはこの世界に召喚されてやってきたもの達は皆、固有能力を授かってやって来る事です」
「ふーん。あの忍者もどき特別なんだ」
「それってヤヨイとかと同じチート能力って事?」
アシュラやエンジェルも会話に混じって来る。
「いいえ。神によって命を授かりやってきた転生者と違ってこの世界の常識を壊す程の力は召喚者は持っておりませんわ。といってもアレが強力過ぎるだけでこれが厄介なのは変わりありませんがね…」
「でも、それなら私達でもなんとかなるって事でしょ?なら私達にも十分勝ち目があるってことじゃん!!」
「だそうです。部長。私達もやれるみたいです。だから私達全員最後まで付き合わせてもらいます」
アシュラが皆より一歩前に出る。
「アンタ達……ほんと、ありが」
「あのーー!!」
和葉が遥の言葉を大きな声で遮る
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