表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/107

六十七話 熾就鎖/オキナグサ

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

互いに蹴りを受け止め合ったまま、未だに硬直状態が続いている遥と和葉。


「ねぇ、あっちの会話も長引いてるみたいだし、私達も一度話さない?ずっとこのままよりはよっぽどいいでしょ。それともアンタが拳と拳でしか語り合えないって言うなら付き合うけど」

「……いいですね。私はそれでも構わない」


「バカ言わないでよ。…ってかアナタ元々そういうタイプじゃないでしょうが」

「私の事覚えてたんだ?」


「さあね?」

「冗談でしょ。アナタらしくない」


「そうよ。私が一度組んだ相手を忘れるわけがない。当たり前でしょ?」

「憧れだったアナタに覚えて貰えていて私は嬉しいですよ」


「……久しぶりね、一瀬和葉さん」


「フルネームで呼ばないで」

獸虹死賭 射手座 一瀬和葉


「嫌よ。別に仲がいい訳じゃないんだから。ましてや今は敵同士。そう思わない?」

「なら好きにしてください。正直どっちでもいいですし」


「そっちが言ったんでしょ…」


互いに足を下ろして態勢を整える。


「和葉」

「なんですか?」


「そろそろさ、いきなり私達の学校に土足で乗り込んできた説明をしてもらってもいいかしら?靴も脱がずにガラスも割って、めちゃくちゃしてくれちゃったんだからそれくらいはするべきなんじゃない」

「なら手っ取り早くしましょう。あんまり焦らしても間延びするだけですから」


そう言うと和葉は指を鳴らす。 


するとそれが合図とばかりに割れた窓からまた複数人の女達が一斉に飛び込んでくる。

そしてアシュラに捕まっていた筈の透明人間も逃げだし彼女達に合流する。

地面に叩きつけられそのまま物の様に放置されていたマネキンも再び動き出し起き上がる。

だがそのマネキンは歩けずにその場を動かない。

すると紫鶴那がマネキンをお姫様抱っこの形で抱える。


「行くわよ、ムラサキ」


そう言って紫鶴那は和葉の呼びかけに応えるように彼女達の集まりに混ざる。

紫鶴那達も合流した事で遥の目の前には総勢12人が揃いたった。


「あのさ、これで説明したつもり?」

「ええ。顔見て分かりません?」


「分からないわよ。あと、3階のこの部屋にどうやって飛び込んで来るのか教えてもらえる?どうせ来るなら表から階段使って来なさいよ!ややこしい…」

「ま、詳しい事は企業秘密ですよ。でも無駄に窓ガラスとか割って直接乗り込んだ方が敵っぽいでしょ?」


「…やっぱり敵なのね」

「分かってたでしょ?」


「分かってるわよ。念の為の確認をしただけ。で、そのヤンキーがわざわざ敵っぽい演出までして何しに来たわけ?元ヤンのくせにまだヤンキーだったことが忘れられないんじゃない?」

「桐生遥、アナタを殺すために私達はやって来た。ただそれだけ」


「ヤンキーなら人のことフルネームで呼ばないでくれる?らしくないわよ」

「アナタと違って私達は元ヤンなんで」


「生意気言っちゃって…」


その様子を見てエプロンやアシュラなどその場にいた仲間達も遥達の元に集まって来る。


「部長を殺すってどういうつもり!?」


アシュラが威勢よく和葉達に一言。


「やっぱり現役ヤンキーは元気ね。仲間想いで感心しちゃう」

「ああ?……」


「ムキにならないで。元ヤンとして現役ヤンキーの質問にはちゃんと答えてあげるから」

「その必要はないで」


エプロンが会話を遮って前へ出る。


「用件は紫鶴那から聞いたからな」

「沙莉さん…お元気そうで何よりです」


「それはお互い様やで。……お前暫く見いひん間に強くなったらしいな。口もデカくなった」

「沙莉さんが弱くなったんですよ…」


「かもな……でも強くなったのは嘘やないやろ。言わんでも雰囲気で分かるわ」

「それはどうも」


「そんなに強くなったなら遥殺してまでわざわざ日本に帰る必要あるんか?弱肉強食のこの世界にはむしろちょうどいいやろ。なのに日本に帰ってどうする?」

「この世界のために強くなったわけじゃない。リングの上でそれを証明しなきゃ意味がないんですよ。私達はそのために強くなったんだ」


「日本に帰れる!?」

「本当に?」

「……はったり」


和葉達の目的に動揺を隠せない、アシュラ、エンジェル、サシミ。


「はったりなんかじゃない」

「どうして言い切れる?」


「信じるしかないから。私達にはそれだけあれば後の理由なんてどうでもいい。信じるしかないのよ。私達には」

「……そんなしてまで帰りたいんか?」


「帰りたいですよ。恩人を殺してでも。逆に聞きますけど沙莉さん達は帰りたくないんですか?」

「ウチは……」


遥の方をチラッと見るエプロン。

だが遥は目を合わせようとはしない。


「もういいわ、和葉。アンタ達の言い分は分かった。要するに私とやりたいんでしょ?ならいつでも相手になってやる。殺せるもんなら殺してみなさい?その時は喜んで私の命を差し上げるわ……その代わり返り討ちにあっても文句は言わないでよ」

「そんなの言いません。こっちは覚悟が出来てます。出来てないのはそっちの方でしょ?」


「ホント言うようになったじゃない。私と組んだ時とは大違いね。あの時はまだ自力勝利も出来てなかったのに今じゃこんなに立派になっちゃって…人って変われるのね」

「変わりますよ。強くも弱くも、選択次第でどうにだってなれる。突如業界から逃げたアナタ達とは違うんです」


「かもね……だったらなんで来ないのよ?これだけ話していれば幾らでも隙なんてあったでしょうに…あ、それとも人数多いから誰から行くかで迷ってる?だったら分かりやすくしましょう。1人ずつなんて言わないで全員まとめて私にかかって来なさいよ。それなら揉めないでしょ?」

「いいんですか?そんな挑発しちゃって、後悔しますよ」


「するわけないでしょ。大丈夫、これでアナタ達が勝っても卑怯者なんて言わないから」

「じゃあお願いしますよ。こっちはこの世界に来た時点でプライドなんてないんです。どんなてを使ってでも勝たせてもらいますよ」

「いいからさっさと来たらどう?…来ないなら私から行くわよ」


「いいや、先手は譲りません!!奇襲攻撃は私の十八番、奪わせてなるものですか!」

獸虹死賭 魚座 川山 宙愛


和葉の背後から威勢よく飛び出るように突っ込んで来る女が1人。

いや、1人だった筈の女は突如として四人に分身すると、同じ人間同士息があったコンビネーションで遥を襲う。

驚く様子も見せないまま、挨拶がわりに一発受けてやろうと喜んで体を差し出す遥。


「……」


宙愛達の攻撃が当たる瞬間、それを遮るようにアシュラ達、四天王が前へ出て遥の盾となる。


「退きなさい!有象無象には興味ないのよ!」


「それはこっちのセリフです」

「そうそう。忍者みたいな事してもやってる事がこれじゃあモブと変わらないよね」

「……そんなんで大将の首が簡単に取れるわけがない」

「皆モブとか言ってかわいそうだよ。だから私が相手になってあげるね?」


「アンタ達……」


そうすると分身した宙愛を息のあったコンビネーションプレイでまとめて吹き飛ばす。


「部長!!何度言わせるんですか?なんでもかんでも1人で背負わないで下さいよ!!私達をもっと頼って下さい!!」

「アシュラ……いいわけ?私なんかにこれ以上関わると怪我だけじゃ済まないわよ。コイツらの覚悟は本物みたいだから。先輩後輩、仲間意識で庇ってるならやめなさい」


「そんな訳ないじゃないですか!こんな相手達を部長1人に任せる程私達は薄情じゃない。こうやって格好つけられたってね、私達はちっとも嬉しくなんかないんですよ!」


「そう……いいのね?」

「勿論。やりますよ。私も」


「本当にどうなるか分からないわよ?」

「こっちはこの世界に遥さんと来た時点で覚悟なんて出来てるんです。バカな質問はやめて下さいよ。それに、」


「それに?」


「遥さんと一緒なら負けるわけがない」

「言い切っちゃっていいの?」


「信じてるからです。それだけあれば私達にも十分なんですよ」

「フフッ……そんなセリフをさっきも誰かから聞いた気がするわ」

「気のせいですよ、フフッ」


遥とエプロンら微かに笑い合う。


それを少し遠くから見ていたエプロンが2人のもとに近づいて来る。


「エプロンさん?…」


エプロンの表情は暗く強張っているように見える。

だが何か、覚悟を決めていることだけは分かっていた。


「遥…。これでさっきまでの貸しはチャラにしといたる。だから許せや」


言い終えるやいなや、エプロンが遥の顔面を思いっきり殴り飛ばす。


「エプロンさん!?」


遥は衝撃で深く仰反る。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ