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六十二話 退散朴/タイサンボク

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

ガシャンっ!!


扉が勢いよく開けられる音がする。


「ほらね…思った通りよ」


騒ぎを聞きつけて大量の兵士達が駆けつける。


「王よ!ご無事ですか?!」

「…隊長!!アレを!」


「ん?……な、なんてことだ!?」


亡骸となったミラルダ達の姿に驚きを隠せない兵士達一度。


「おい、貴様ら!!どうやってここに入った!?そして貴様らがミラルダ様とヤーク様をこんなに目に合わせたんだな!?」


余りにも純粋過ぎる兵士達を見て遥達は……


「あの、全部誤解なんです!!聞いてください!!」

「やめなさい、ヤヨイ。今のコイツらに何を言ったって無駄よ」


「でも!!……」

「考えても見なさい。アイツらからしたら私達はもう1人殺してることになってる。そんな奴らの言うこと、理由がなんであれ聞く耳を持つはずがない」

「え……」


「隊長!!」

「どうした。王は無事か?」


兵士は首を横に振る。


「…………うおおおお!!貴様ら!!よくも我が王を!!」


慕う王を殺されたことに激昂する、兵士達一向。

兵士達は隊長の指示を待つことなく、素早く戦いの陣形を組み上げ遥達を取り囲む。


「ね。こうなったらもう何を言っても無駄よ。犯罪者の言うことなんて言い訳にしか聞こえない」

「そんな……」


「王の剣であり盾である騎士団の代表を殺しても事足りず、心優しき王の命までを奪うとは何事だ!!……貴様らの罪は決して許させる事はないだろう!!せめて死んで償うがいい!」

「遥さん。どうしましょう……」

「…………」


こんな状況にも関わらず上の空な表情を見せる遥。


「遥さん?……しっかりしてください!遥さん!」

「うん?」


「こんな状況で何考えてるんですか!!私達達大ピンチなんですよ!!こうなったら無駄と分かっていても正直に話して納得してもらうしかないんじゃ?」

「そんな事よりずっと気になってたんだけどさ、コイツら騒ぎに駆けつけたって割には余りにもタイミングが良すぎない?私達にとって最悪なタイミングでコイツらがやって来た。いくら私たちの運が悪かったからってこれは流石に出来すぎだと思わない?」


「そんな事よりってなんなんですか!……でも、確かに。言われてみたら変ですね。まるで何かの思い通りになってるみたいに……」

「まぁ、考えるのはそこら辺にしときましょう。こんな状況でそんな事をしてる場合じゃない」


「……私さっきそう言ったじゃないですか」

「そうだっけ?」


「そうですよ!!ほら、こんな事してる間に距離がジワジワと詰められてますよ!もう、遥さんて意外とこういうところありますよね……」

「可愛いでしょ」


「はい。って、だからそういうところですよ!!」

「冗談よ」


「だから冗談なんて言ってる場合じゃないんですって!!なんでそんなに冷静でいられるんですか?!遥さんがいくら強いとはいえ、この数の兵士達を相手にするには武が悪すぎますよ!」

「そうね。確かに私でもこれは分が悪すぎる」


「繰り返さなくても…」

「だから!全員の相手はしないし勝ちにもいかない。それが1番簡単に済む」


「あの、言ってることがよく分からないんですが……」

「直ぐに分かるわよ。……ヤヨイ。死にたくなかったら何があっても死ぬ気で私についてきなさい。悪いけど振り返りはしない。つい来れなかったらそれまで。それが嫌なら分かるわね?」


「え……」

「返事」


「はい!!」


遥は返事をするヤヨイの顔を見て頷き安堵する。


「よし……なら覚悟はできたわね?」

「はい!!」


さっきより大声で気持ちを伝えようとするヤヨイ。


「じゃあ、始まりのゴング代わりに私から一言言わせてもらうわ」


遥は王が座る玉座の方へ振り返る。


そしてニヤッと笑う。


「このバーーーーーカ王!!何勝手に私たちのことを誤解して面倒事を押し付けるのよ!アンタ、王のくせに見る目がないんじゃない?王だったら能力にも負けないくらいもっと自分の意思に自信を持ちなさいよ!」


「なっ!!……」

「遥さん!……」


遥の想定外の挑発とも言えるこの一言に周囲は震撼する。


「貴様ら…自らの手で王を殺しときながら、まだ侮辱をすると言うのか!!」

「こっちにだってね、色々とあるのよ!!このくらい言ったっていいでしょうが!!」


「戯けたことを言うな!」

「だからごめんなさい。私のせいでアナタをきっと巻き込んでしまったから」


「遥さん……」


玉座に向かって頭を下げる遥。


「今更謝罪をしても遅いわ!!」

「別にアンタらに言ってるわけじゃない!!悪いけど不器用な私にはこうする事が精一杯。伝わらなくても別に構わない。だからアナタや周りに呪われようがどう誤解されようが私の自業自得。私は全てを受け入れる。文句があるなら受け入れてあげるからさっさっとかかってこい。王とその側近の達を殺した私に敵うと思うならね……」


今度は兵士達向かって不気味な笑顔を見せる遥。


「!!…………」


純粋過ぎる兵士達はその言葉を受け少しだけ足がすくんでしまう。


「おい!お前達!聞く耳を持つな!!陣形を崩すなぁ!!」


完璧に組まれている兵士達の間に僅かな隙と動揺が生まれた瞬間を遥は見逃さなかった。


「ヤヨイ。行くわよ!!」

「あ、はい!!」


遥達は出口を目指して突っ込んで行くと強引に包囲網を突破していく。


「おい!逃げるな!!」

「悪いわね。ほんとなら売られた喧嘩は全部買ってあげたいのが本心なんだけど、生憎金欠気味でそんな余裕もないのよ。ごめんなさいね」


遥達はそのまま登ってきた階段を下へ下へと下がっていく。


「遥さん。本当にこれでよかったんですか?」

「いいのよ。あんな数まともに相手にしてたら日が暮れちゃう。かといって何もしないわけにもいかない。だから。だから勝ちに行かない方法を選んだの。これなら負けることもない。逃げるは恥じたが役に立つってよく言うでしょ」


「なるほど。そういえばそんな題名のドラマもありましたね〜」

「あら、知ってるの?」


「始まって間もない頃に日本にいた私は死んじゃいましたからよくは知りませんけど」

「そ。ならこれが流行った事も知らないわね」


遥は兵士達に追われている身にも関わらず余裕に某ダンスを踊りながら器用に階段を駆け降りていく。


「こんな状況だっていうのに引くくらいノリノリですね……なんか不安に思ってた私が馬鹿みたいにですよ」

「まぁ、どうせなら楽しんだほうがいいでしょ。下手したらこれで死ぬかもしれないんだからさ」


「それもそうですね……。なら私も!」


覚悟を決めたヤヨイも遥の踊りを見よう見まねで踊りながら階段を降りていく。

後ろから聞こえている兵士達の声をまるでBGMの様に感じながら2人は猛スピードで駆け降りて行った。



そして仲間達と別れたあの広間まで戻ってくる。

するとそこには先に戻ってきていたエプロン、アシュラ、エンジェルの3人が待っていた。


「お、遥!!お前も戻ってきたんか」

「部長。私達3人とも進んだ先は行き止まりで戻ってきたんです」

「あれ?部長もヤヨイもどうしてそんなに慌ててるんですかーー?そしてなんでノリノリ?」


エンジェル達の疑問に答えるように遥達は3人を追い抜き出口に駆け込む。


「え!?」

「部長!!?」

「遥!?」


「3人とも!!何立ち止まってんのよ!死にたくなかったら逃げるのよ!」


遥は走りながら3人に伝える。


「どういうこっちゃ……」

「さあ?でも……」

「ねぇねぇ、アシュラ。エプロンさんも!アレ見て!?」


「ん?」


エンジェルが指差す先は遥達が来た方向。

奥から段々と音が大きくなってくるとすぐに、遥達を追った大量の兵士達が凄い形相で追いかけてくる。


「なんじゃこれ!!どうなってんねん!」

「とにかく遥さんが言う通り逃げるしかないですよ。エンジェルなんてもう一足先に逃げてますし」


横を見るとそこにエンジェルの姿はなく、背後を振り返ると我先へと逃げるエンジェルの後ろ姿が見える。


「マジか。ならウチらも訳分からんけどさっさっと逃げるしかないな!!」

「分かってますって!!」


遥達を追うようにエプロン達も出口を目指して逃げていく。


そしてそれを追う大量の兵士達。甲冑をつけているとは思えないほどの速さで追ってくる。人間追い込まれると、とんでもないパワーを発揮するらしい。


いち早く出口を抜けて外へと脱出していく遥とヤヨイ。

それから少し遅れてエンジェル。そしてエプロンとアシュラも追いつく。


「遥さん!ここからどこ行きます!?」

「1つしかないでしょ。私達の家に戻るのよ!」


「家……ああ!学校の事ですか!」

「それしかない。それにレッカも言ってたでしょ?あの森なら騎士団といえども簡単には手を出せないって。私達みたいな逃亡犯にはうってつけの場所よ!」


「なぁ、遥?逃亡犯って。お前ら、階段登った先で何があったん?何をしでかしたんや!」


走りながら遥達に問いかけるエプロン。


「変なこと言わないで。私達は何もしてないわよ。私達はね」

「私達?」


「詳しいことは後で話しますから今はとにかく逃げましょう!!」


ヤヨイに説得されたエプロン。


とにかく逃げることに専念して走る遥達。

遥が壊した門の側まで行くと、そこには大量の兵士達がいた。


「!!」


だがそこにいる全員、意識を失いまるで人形遊びを終えた後のように様々な体制で転がって倒れていた。


その真ん中にはヒマそうな様子で寝転がってるアイツの姿が。


「ん?」


アイツは周囲の騒ぎに気づいて体を起こす。


「あれ?部長!?終わったの?」


アイツの質問に答える事はなく、一同アイツを無視して倒れた兵士達を踏み越えて逃げていく。


「え!?なんか新手の嫌がらせ?私なんか変なことしたかな〜部長!!」

「なわけあるか!」

「イテッ」


逃げる足を止めてエプロンがアイツの頭を引っ叩く。


「変なことばっか言ってるとホンマに置いてくで!?」

「え〜〜。ねぇ、どうなってるの?」


「ウチも知らん!!だけど今は逃げるしかないんやって!いいから行くで」


それだけ言うとエプロンも城を後にする。


「あーー!ちょっと待って!私も行く!!」


エプロン達を追いかけて最後に残ったアイツも城を後にした。


こうして遥達、転移者が売られた喧嘩を買いに行って得たものは王殺しの冤罪だけだった。


その噂は早くも町中に、そして、世界中へと伝わることとなった。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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