六十一話 慢咲/マンサク
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3人の戦いがそれぞれ終わる頃。
ひたすら上へと進み続ける遥とヤヨイは、ようやく長き階段を登り切ると一つの部屋の前までたどり着く。
「はぁ、はぁ…。遥さん。ようやくですね」
「うん」
「ここであってるんですかね?これだけ登らせといて違うなんて事はないですよね?」
「多分だけど、大丈夫でしょ。これ見よがしにこの先王がいそうな雰囲気の扉だからいるに決まってるわ」
黄金で装飾されたその派手な扉は妙な気配を漂わせている。
「だといいんですけど……」
「行ってみれば分かるわよ」
遥が率先して前へと進み扉を開ける。
鍵などはかかっていなく見た目以上に扉はとても軽かった。
2人は警戒しながら少しずつ前へと進んでいく。
昼間なのにも関わらず、カーテンで閉ざされ外からの明かりは入ってこない。だが辛うじて周りがうっすらと見えるほどの薄明るさはある。
そして中に人の気配はない。
周りを確認しながら慎重に進んでいくとヤヨイが何かに躓き転んでしまう。
「きゃっ。…いったぁ……」
「大丈夫?」
「すみません」
ヤヨイは立ちあがろうと、ふと地面に手をつくと何かを触る。
「ん?」
ヤヨイが自分の手を確認すると、暗くてよくは見えないが黒い液体のような物が手にビチャっとついていた。
ヤヨイは不審がり足を止める。
「遥さん、なんか嫌な予感がします……」
「それって当たるやつ?」
「分かりません。けどなんか、イヤーにゾワゾワします」
「じゃあきっとそれは、当たるわね」
遥は明かりを確保するために1人進みカーテンを開ける。
外から日の光が差し込まれ中に明かりが溶け込む。
「!、きゃあぁーーー!!」
悲鳴をあげるヤヨイ。
ヤヨイの手は赤く染まっていて、足元には胸を貫かれ、抱き合いながら死んでいるミラルダとヤークの姿が。
遥はヤヨイの悲鳴を聞いてそばへ駆けつける。
「、……ヤヨイ大丈夫よ」
「はい、すみません…なんとなく分かってた気もするんですけど、いざってなるとダメですね……」
「そういうもんよ。ところで、誰だか知らないけどこんな所で死んでるって事は王と関わる人なんでしょうね…」
「恐らく騎士団の団長の内の2人だと思います。だけどそうだとしたら、団長クラスの強者を易々と倒せる奴が存在するって事です。そんな人達、私は遥さん達くらいしか知りません。勿論疑ってるわけじゃありませんよ!」
「分かってるわよ。…それにしてもこの展開は最悪ね。このままいけばもっと嫌な事が起こりそうだわ」
「ええ。私も同じ気持ちです」
「だけどこのまま引き返す訳にもいかないでしょ。もう、なんとなく察しはつくけど…」
「ですよね。流石にアレを確認せずには帰れません」
ヤヨイは真っ直ぐ先を指差す。
遥達は渋々、指差された先へと進む。
目の前に見えるのはこの部屋の中でも最も装飾が派手に飾れていて、大きな椅子が一つだけ意味ありげに置かれている。
それはまさに玉座のよう。
玉座の上には人が1人背もたれに寄りかかるように座っている。
姿を見たことない遥でさえ分かる程の王らしき風貌の男。
ただ頭は下を向き体も服で隠れていて遠くからでは詳しい様子までは伺えない。
遥がそこまでたどり着くと、確認する様に頭を起こし、脈を確認する。
そこから分かるのはただ1つ。
意識がないということだけだった。
「ヤヨイ。一応聞くけど、この人ってそういうことでいいんだよね?」
「はい。この国の王であられるキング・カイザー王で間違いありません」
「そう。やっぱり……」
「なら私も一応聞きますけど、生きてるんですか?」
「生きてるわけないでしょ。…脈を確認する必要もなかったわ。…人は心臓を貫かれて生きているほど丈夫にはできてないんだからさ……」
「……分かってます。念の為ですよ。念の為」
「そう」
「……これって全員同じヤツにやられたっていう意味でいいんですかね?」
「多分ね。だけどそう考えると気味悪いわね。まるで心臓を何かに捧げるために殺したみたいにも見えるし…」
「嫌な事言わないでくださいよ……」
「冗談よ。だけど一国の王が意味なく殺されたとは考えづらいでしょ」
「それは、まぁ……」
「でもこういう時の私の勘って妙に当たるのよねー」
「だからやめてくださいよ!変なことを言うのは演技でもない。何が起こるかもわからないんですからね!」
「分かったわよ……じゃあ、これ以上縁起が悪くなる前にもう一つだけいい気がする」
「なんですか?」
「このままここにいたらヤバい気がする。きっと……」
「え、」
ガシャンっ!!
扉が勢いよく開けられる音がする。
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