五十七話 無蘇太刀有夢/ナスタチウム
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「ならこれで終わりだ」
スコルの手が拳銃のような形で私の額を指す。
このままでいいのか?
私、このまま何も変われないまま死んでいくのか。
いや、そんなのは嫌だ。
私にはまだやれる事があるはずだ。
諦めるのは出来る事をした後でも遅くない!
だって私は自分が思うより、よっぽど強いんだから!!
チャンスは気から。思ったんもん勝ち。だったら盛大に勘違いしてやるわ!
私は強い。
私は負けない。
私は死なない。
そして私は、
スコルが攻撃を放つ直前、アシュラの目がカッと開くと額に指された手を渾身の力で握ると
「なんの真似だ?今さら死ぬのが怖くなったのかい?」
「最強だぁぁーーーーー!!!」
ボキッ!
スコルの拳銃のような形構えられた人差し指を豪快にへし折る。
「がああっ!!……」
まさかの出来事にスコルは心身ともにダメージを受ける。
「なんて無茶苦茶な回避の仕方だ!!ぐっ……」
指がへし折られてしまえば今までのように雨や水を弾のように打ち出す事は出来ない。
まさにこれは必然として起きた合理的な回避の仕方とでも言えるだろう。
「だけど悪あがきはこれでおしまいだ!」
スコルは再び雨に紛れて水のように溶け混みその姿を消す。
「それはこっちのセリフよ!」
アシュラはそのまま真っ直ぐ突っ込んでいくと、体勢を低くして相手の足を払うように動く。
すると何もなかったはずの場所から、足を払われたスコルが無様に地面に叩きつけられる。
アシュラはポケットからヘアゴムを取り出すと慣れた手つきで瞬時にツインテールに髪を結び気合を入れる。
そして体勢が崩れている内にアシュラはその勢いのままスコルの足首をしっかりと掴み離さない。
「無駄だ!!」
スコルは再び雨を利用して姿を消す事を匂わせる。
だが、
「この体勢でやれるもんならやってみなさいよ」
「なっ!……」
「アンタ、雨を利用してまるで水のように溶けて姿を消しているように見えたけど、あれはただハッタリなんでしょう?」
「何故それを!」
「実際に姿が消えてるのは本当。だけど水のように溶けているわけじゃない。だって毎回アンタの足元だけは何故か消えてないんだもの。私には丸見えよ」
「!?……いつから気づいてた?」
「確信を持ったのはさっき。疑問を思ったのは最初から。不思議だったのはこの以上ともいえる雨の量。最初はアナタの能力に都合がいいからってだけだと思ってた。でもそれだとあまりにも量が多すぎる。これじゃあ、音を聞くのも周りを見る事すら困難。だから逆にそれが理由なんじゃないかと思ったの。この雨は唯一足下を消せないアンタの弱点を隠すものだった!そうでしょ?」
「……だったら何故、それが分かっても直ぐに反撃してこなかった!?」
「言ったでしょ。さっきまで確信はなかったって。疑問はあったけど、それを行動に移すだけの確証も勇気もなかった。だから諦めようとしてた。…だけど思い出したのよ。私は自分が思うよりよっぽど強いし、幾 ら自分の事を疑っていてもそれを信じればきっと上手く行くってね。やれる事はまだ残ってるんだから」
「随分自信家だったんだな…だけどそれが分かったところでなんだと言うんだ!それで勝ったつもりか!?」
スコルはもう片方の手でアシュラの額に狙いを定める。
「今度こそ終わりだ!」
「これでもやれるなら、やってみなさいよぉーー!」
するとアシュラはスコルを掴んだまま回転しだす。
どんどんとスピードが上がり回転数も増していく。
「ぐっ……なんて速さだ。これじゃ狙いが定まらない…だが奴もこんなスピードで長時間耐えられるわけがない。これが終われば奴も簡単には動けない。だったら俺の勝ちだ!!」
スコルの想いとは裏腹にスピードと回転数は比例するように増していく。
客観的に見れば人間技とは思えない程のスピードと回転数でその場をグルグルと回っている。
2人襲う大雨もそこだけはまるで晴れているかのように雨を弾いている。
「……まだだ!まだ!僕は!……僕がこんな奴に負けるわけがNAいn☆♪○*/&@@」
回転に耐えられなくり平衡感覚を失ったスコルは白目を剥き泡を拭きながら完全に体が真っ直ぐと伸びきってしまう。
だがそれでも回転は止まらず、速さだけが増していく。
そして、
「これで、どうだあぁぁ!!」
回転の勢いのままスコルを放り投げる。
放り投げられたスコルは鳥のように空高く飛んでいく。
そう、どこまでも。
人智を超える飛距離を出したアシュラ。だが本人にそんな自覚はなく、
「さぁ、これでトドメよ!!」
息を上げながらも目は回っていないアシュラが放り投げた方を振り向くと、そこにスコルはいない。
だって今頃、彼はお空の上だから。
「え、うそ……マジで?…私、鍛えすぎた?」
スコルがさしていた傘をさしながらそうアシュラは呟いた。
○美津谷 朱美VS●スコル
フィニッシュ技 ジャイアントスイング修羅式
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