五十話 撫至高/ナデシコ
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エプロン視点
現れた別れ道を左に進むエプロン。
暫く道なりに歩いている一つの部屋に辿り着く。
近くにはそれ以外の道はなく扉もない。
仕方なくエプロンはその部屋に入る。
「ここは……バーか」
城にあるとは思えないほどの妖艶な雰囲気が漂うこの場所。
室内は薄暗くカウンターの席には一つだけ飲みかけの酒が入ったグラスがある。
しかし室内には見渡す限り誰もいない。
エプロンは一通りウロウロと見渡すが何も変化も発見も起きはしない。
「……しゃあない、戻るか」
エプロンはバーの探索を終了しその部屋を去ろうとした瞬間、目の前が一瞬だけ白く光る。
「ん!?」
今の現象を不審に思うエプロン。だが何も起こらない。
見間違いか何かと思い、今度こそ部屋を出ようとする。
そしてその瞬間だった。
大きな稲光のような音と共に天井から男が降ってくる。
「はぁ!!?」
エプロンは瞬時に体を逸らしてそれを避けようとする。
男が地面に激突するや否や男はすぐに立ち上がりエプロンを思いっきり吹き飛ばす。
「おい……生きてるよなぁ?」
「……いったぁ〜。当たり前や!いきなりなんなんお前!?折角のいい部屋の雰囲気が台無しやないか!」
「ハッ!雰囲気なんてものはぶち壊すためにあるんだよ!!」
「コイツ……バカやな?なんかアイツと似た雰囲気を感じる……」
「なんの話だ?」
「ただの独り言や。気にすんな。そんな前にウチの質問の答えの方がが先やろ。お前は誰やねん?」
「俺か?俺はお前の敵だろ」
「そんなんは分かってるねん。敵でもない奴がこんなに殺気を剥き出しで出てくるわけないやろうが!名前や、名前を聞いてるねん!」
「ああ、名前か。俺の名前はガナリ!イカヅチノ騎士団の団長だ」
「なんだ王やないんか……分かってたけど」
「おいおい俺で不満か?」
「不満とかそういう問題ちゃうねん。目的がちゃうんや、目的が!!」
「なんだよソレ。まぁ細かい事はどうでもいい。……俺はお前の敵だ。ここまで言えば分かるよな?」
「ウチがアンタの相手をすればええんやろ?分かっとるわ、仕方ない」
「違う!」
「はぁ?」
「お前が俺の相手をするんじゃない……俺が!お前の相手をするんだよ!!」
ガナリはエプロンを指差し、一気に振り下ろす。
その時、エプロンの体にどこからともなく雷が落ちる。
衝撃で辺りは煙に包まれる。
「死んだか……聞いてたよりえらい呆気なかったな。…自分でやっといてなんだがちょっと大人気なかったか……」
ガナリはそのまま壊れかけのカウンターに座り飲みかけにしていた酒を飲む。
「……おい、」
「おお?」
「何勝手に人のことを殺した気になって、たそがれてんねん……」
「おおお!!」
「人を舐めたマネすんのもええ加減にせえよ!……」
煙が晴れるとボロボロな状態だがなんとか立ち上がり威勢を張るエプロン。
「いいや、もう舐めてないぜ……だから文字通り舐めてやるよ」
ガナリが雷のような速さでエプロンの元へ一瞬で近づくとエプロンの顔をペロッと下で舐める。
「!!……キショいわぁ!!!」
エプロンは思いっきりガナリの溝落ちに正拳突きを喰らわせる。
ガナリはその攻撃をまともにくらい蹌踉めく。
チャンスとばかりにもう一発エプロンが攻撃を入れようとすると、再びガナリが指を差し振り下ろす。
そしてまたエプロンを雷が襲う。
「さぁ、どうだ?2発喰らって生きれ残れた奴は1人もいないぞ……」
辺りの煙が晴れる。
「だったら、ウチがお前にとって初めての女ってことやなぁ〜……」
「ハハハッ、マジかよ!!なんだ、噂通りマジもんのバケモンじゃねぇか!!」
「…はぁ…はぁ……まさか、そんなん言いかたで褒めてるわけちゃうよな?」
「褒めてんだよー!!!…テメェ、一体どうやった?気合いだけで生き残れるほど俺の攻撃は甘くねぇ!!何か種があんだろぅ!!」
「ウチはただ仲間がくれたこの特攻服を着てただけや…」
「特攻服?ああ。お前が着ているその派手な服のことか。まさかそのとんでもないセンスの服に意味があったとはな〜」
「センスの事は余計や。コレはオシャレの為だけに着てるわけちゃう。…聞いた話やとこの服には鎧にも負けない頑丈さとあらゆる魔法や能力を無効化する事が出来る魔道具って話や」
「ほぉ……いいのかよ種明かしをしちまって。それに、そんな魔道具の存在は初めて聞いたな」
「そりゃそうやろ。ウチの専属クラフターのオリジナルやからな」
「それは羨ましいな。こんな高性能な魔道具を作れるクラフターがこの世に存在するとは知らなかったぞ。是非、俺にも紹介してくれよ!」
「するかバーーカ!!専属って言ったやろうが!」
「……でも、俺の雷を無効化出来るほどの強力な魔道具か…俺にとって相性はだな。ほんと、面倒で意外と厄介な奴だよ、お前はよ!!」
「厄介って分かったならウチの勝ちでええか?アンタの攻撃はもうウチには通用しない。勝負なんか見えたもんやろう」
「そんなわけに行くか。大体そんな事を言うがいつまでもそれが使えるってわけじゃないんだろう?」
「さぁ?どうやろうな?(チッ、バレとる……)」
「それに能力が無効化できたからと言ってそこに現れる衝撃までも吸収できる優れ物ってわけじゃなさそうだしなー……」
「……言っとけ。(その事もバレとるんか!?だけど悔しいけどヤツの言う通りや。ヤヨイの用意したこの特攻服がなきゃ今頃ウチはあの世行きや)」
「イキがるのもいいがどこまで耐えられるかな?」
さっきと同じようにガナリがエプロンを指差し能力を発動する。
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