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四十八話 美速奏/ミスミソウ

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

「皆さん、本当にお似合いです!!」

「ありがと」


「でも皆さん、この特攻服これで終わりだと思ってます?」

「どういうこと?」


「この特攻服はただの派手な服じゃありません!!」

「服は服やろ?」


「いいえ!だってこの特攻服は私が作ったんですから!!」

「ヤヨイがコレを!?ほぉ〜それは凄いなぁ〜」


「本当にヤヨイは凄いね!色々と作れるとは聞いてたけどまさか服も作れるなんて思いもしなかった」

「だって言ってませんから!」


「そうね……で、この服の仕掛けって?」

「…気になります?」


 ちょっと面倒くさいとも思ったが遥達は付き合う。


「うん。勿論気になる」

「そりゃ、こんな勿体ぶられたら誰でも気になるやろ!」


「ですよね!…実はこの特攻服ただの服じゃないんです」

「……それは分かってるし、さっき自分で言ってたじゃない」


「この特攻服には私のクラフターとしての技術が沢山込められているんです!…例えば、服自体はこんなに軽くて動きやすい材質ですが、防御性は騎士団の兵士達が着けている鎧よりもはるかに丈夫で頑丈な作りになってるんです!」

「へぇ〜、それは凄いわね」


「驚くのはまだ早いですよ。実はこの特攻服、魔石が仕込んであって魔道具としての役割も果たせるんです。因みに能力は、この前遥さんに渡したネックレスと似ていて、来ている本人が受けるありとあらゆる魔法や能力攻撃を無効にするんです!つまりこれを着ていれば皆さんは相手の魔法や能力を気にしないで戦う事が出来るんです!!凄くないですか〜〜!!」


「てことはこれ着てたら常時無敵みたいなモンやんか!!」

「そうです!!」


「すっごいなぁ!!ヤヨイやるやんか!!」


 ヤヨイの頭をぐしゃぐしゃに撫でるエプロン。


「えへへ、でもデメリットもあって、無限に能力を無効化が出来るってわけでもなく一定以上のダメージを喰らうと中に組み込んである魔石が砕けて用を足さなくなるので、そこだけ気をつけてください」

「その程度はデメリットって言わん!」


「ヤヨイ、随分頑張ったのね」

「……私も皆さんの仲間ですから。このくらいは当然ですよ。コレが私なりの精一杯の戦い方です!!」


「充分よ。ありがとう、使わせてもらうわ」

「ハイ!!」


「ならヤヨイは早く戻りなさい。ここに居て巻き込まれても知らないわよ?」

「いいえ!私も行きます!」


「いいの?どうなるか分からないわよ?」

「覚悟の上です。言ったじゃないですか?私も皆さんの仲間ですから!」

「そんな事言ってホンマは自分が作った魔道具の性能を確かめたいだけちゃうんか?」


 エプロンの一言はヤヨイの図星を突く。


「それはまぁ……勿論!!」


 開き直って自信満々なヤヨイ。


「正直でよろしい。いいわ。勝手にしなさい。でも死にたくないなら私達の側からは離れないようにね」

「最初からそのつもりです!」


「…じゃあ皆!!特攻服も着て準備はいいわね?」


 全員気合いを入れて頷く。


「ヨシっ!なら、売られた喧嘩、盛大に買いに行くわよ!!」


 遥達は再び閉ざされた門の前までやってくる。


「遥、さっき言いかけてたけどどうやって突破するつもりか聞かせてもらおうか?」

「決まってるでしょ?……こうするのよ!!」


 遥は思いっきり無機物の門に蹴りを入れる。

 辺りには鈍い音が響き渡る。


「遥?……」


 遥は間髪入れずに二発目、三発目とどんどん門を蹴り込んでいく。

 すると……


 バッガァーーーーーン!!!


 強固で頑丈な筈の門は人が放った三発の蹴りで粉々に砕け散った。


「さぁ、行くわよ!!」


 遥は平気な顔をしたまま、皆を連れて前に進む。


「無茶苦茶や……」

「それがうちの部長ですから!」


 無茶苦茶を当然のようにやり切る遥の行動に動揺するエプロンだったがアシュラに慰められる。



 文字通り破った門から城の内部に向けて進んでいると、大きな物音と共に遥達の方向に人が吹き飛んでくる。


「なんや!!?」

「アシュラ!」


 遥は吹き飛んできた人を見て慌ててアシュラに命令する。


「了解!」


 遥の指示を冷静に理解したアシュラは吹き飛んできた人間を受け止める。


「……この人は!」

「ん?、おっ、マジかいな!?」


 吹き飛んできた人間の姿を見ると周囲は唖然とする。


「これは予想外だわ…。まさか、助ける筈だったレッカが向こうから吹き飛んでくるなんてね」

「ホンマやで!大丈夫なんか?」


「大丈夫です。意識はありませんがまだ生きてると思います」


 生存を確認したアシュラの一言に安堵する一同。


「でもどういうこっちゃ!!何が起きてる?」

「さぁ?、まさかこんな形で救うことになるとはなんだか拍子抜けね」


「……だけどコレでもう帰れる」


 サシミのまさかの一言に驚く遥達。


「確かにそう言われればそうやな!後はこのまま逃げればウチらの目的は達成や!そんなら簡単や!」

「……部長、どうします?」

「…………」


 アシュラの問いかけに遥は答えを返さない。


「ちょっ、遥。何を悩むことがあんねん?形は別としてもレッカはこうして助けた。ならこれ以上やることもないやろ!?」

「な〜〜んだ。せっかくまた暴れると思って楽しみにしてたのにな〜……」


 エプロンの判断にアイツは深く落ち込む。


「アンタはこの前好き放題やったやろ!少しくらいは我慢しろ!」

「チェッ……」


 それでも遥はまだ答えを出さない。


 その時遥の手元を誰かが触る。


 遥は瞬時にそっちの方を見てみるとそれは、僅かに意識を取り戻したレッカだった。


「偉い目にあったみたいだけど、大丈夫?……」

「ええ、お陰様で……なんとか……」


「そ、なら良かった」

「!…皆さん、私のことは構いません。ですから、早くここから逃げてください!、!……」


「どういうこと?」

「もう直ぐ奴らが来ます。奴らの目的は皆さんだ!私はただの囮に過ぎない。……このままだと取り返しのつかないことになります!!その前に私がなんとか時間を稼ぎますわ……ですから一刻も早く森へ逃げこんでくださいましっ。あそこなら騎士団でも簡単にも踏み込めませんから……」


 レッカは介抱するアシュラの手を振り切り、なんとか立ち上がる。


「私の散り際ぐらい最高に美しくいたいものです。ただそれを皆さんには見られたくない……会って間もないですが遥さん…私のお願い聞いてくださいますね?」

「…死ぬ気?」


「……命を掛けるだけ。その先の結果に私はさほど興味はありません。今一時美しくいれれば私は満足です!さぁ、早く!!」


「嫌よ。意味分かんないし……」

「え?」


「大体ね、怪我人がわがまま言うんじゃないわよ!大人しく寝てなさい!話を聞くのはそれからよ!」

「……今はそんな悠長なことを言ってる場合じゃ!」


「レッカ。アンタもちょっと勘違いしてる」

「?」


「確かに私達はアンタを助けにやってきた。でもそれはついで。私達はこの国が売った喧嘩を買いに来たの。せっかく来たんだもの、何もしないでただで帰るってのは売り手に失礼ってもんでしょ?」


 コロコロ変わる遥の気持ち。だが遥の事を知っている仲間達はそれも知っている。


「あ、後ついでにこの喧嘩を売ってくれたきっかけを作った張本人にお礼もしないとね?」

「まさか……」


「だからアナタの代わりに私が直接この国の王様に文句を言ってあげるわ!」

「いや、それは流石に無理です!!そんなの騎士団が黙ってない!」


「無理なんかこの世にない。そうやろ?遥」


 特に付き合いの長い沙莉が1番知っている。


「分かってるじゃん。沙莉」

「レッカ、ウチらの事を思う気持ちは嬉しいけど諦めも肝心やで。遥は人の言うことに耳を貸しても、おいそれと聞くやつとはちゃうからな。言うだけ無駄やな」


「……」


「もうコレはウチらの問題や。だったらウチらが責任持って片付ける。そういうことやろ?遥」

「そういうこと」


「……でも!」


 遥達を助けようとするあまり中々納得しようとしないレッカに嫌気がした遥は。


「サシミ!レッカを連れて先に帰っててくれる?」

「……うん。分かった」


 そう言うとサシミは得意の速さでレッカに近づき、もの凄いスピードで首元を叩き気絶させる。


「迷惑かけるけど頼むわね。サシミ」

「サシミ。ちょっと重いかも知れへんけど頑張りよ!」


「……大丈夫。このくらいなら問題ないです。部長」

「ん?」


「バーーーーーーカ!!!」

「え……」


 サシミにして珍しい殆どの大きな声での突然の罵倒に驚き思わず動きが止まってしまう一同。


「……って、私の代わりにこの国の王様に文句言っといて下さい」


 発言の真の意味が理解できてホッとする遥達。


「あ、そういうこと。了解」

「……では」


 サシミはレッカを背負ったまま、もの凄いスピードでこの場を去って行く。


「サシミもあんなこと言うねんな…。めっちゃ驚いたわ」


「……アイツ。アナタはここで待機していてちょうだい」

「えぇーー!なんで〜!私も一緒に暴れたい〜!!」


「なんででもよ」

「ブゥーーー……」


 頬を膨らませ不貞腐れるアイツ。


「いい?アナタは私達にとって命綱のようなモノなの。もしも私達に何かあった時もアナタが外にいれば、助けに来ることも、誰かに助けを求めに行く事も出来る。信頼してるからこそアナタに頼むの。だからお願いできる?」

「うん……分かった」


「あ、それと、外に出てきた奴らに関しては好きにしてもいいから。煮るなり焼くなりお好きな方法で楽しんじゃいなさい。でも程々にね、殺しちゃダメよ」

「そういうことなら任せて!!」


 遥の一言でコロっと気が変わるアイツ。


「じゃあ頼むわよ」


 アイツにここを任せて遥達は先へ急ぐ。

 だが、そう簡単には行かないようで……


 騒ぎを聞きつけた兵士達が大量に現れた。


「貴様ら何者だ!!」

「侵入者!侵入者!!」


 呼びかけに応じ兵士達はどんどんと増えてくる。


「あれだけ派手にやったら騒ぎになるのも当然やな!遥のせいやで!」

「元々、静かに敷居を跨げるなんて思ってもない。……そういうことだから、アイツ!!早速出番よ!」


「私!?いいの!やっちゃって?」

「そうよ!ここは任せる。いいわね?」


「うん!!オッケーー!!」


 遥達はアイツに任せて城の内部を目指して先へ急ぐ。


「待て!お前らの好きにさせると思ってるのか?!」


 遥達の前を兵士達が塞ぐ。


 そこをテンションアゲアゲのアイツが割り込むよう飛び込んでくる。


「あっそぼーーー!!私の相手してくれるんでしょ!?」

「な、なんだ貴様!!」


 アイツは派手に動くことで兵士達の注目を一つに集める。


「部長!今だよ!!」


「アイツ!」


 遥が叫ぶ。


「何?」

「無茶しちゃダメよ!!危ないと思ったら逃げてもいいから!!」


「フフッ……大丈夫!!」


 遥の心配を払拭するようにアイツはVサインで返事をする。


 遥達はアイツが作った僅かの隙を利用して兵士達の合間を通り抜けて城の内部に侵入する事に成功した。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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