四十七話 紫華満/ムラサキケマン
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バルキュリア王国 城
遥達はレッカが囚われているという城のすぐ近くまで来ていた。
少しから遠くでみる限り、城を塞ぐ門の前には門番らしき人間は見当たらない。
「いやーー、やっぱり城って言うだけあって大きいね〜〜!」
「本当。某遊園地のやつとは大違いね」
「……絶景だ」
「そりゃそうやろ。こっちは見た目だけじゃないちゃんと実用的な城なんやからな」
城を目の前にしてはしゃぐエンジェルやアシュラ達。
「でもちょっとうちの学校と作り似てない?たまたまかもしれないけど……ほら、あそこの感じなんか特に」
遥の疑問に他の面々も頷きだす。
「ホンマやな。確かに言われてみると、落書きされる前のハレ女とそっくりやな」
「こんなにそっくりだとこの世界の連中が学校の事を城って言うのも納得ね」
「ちょっと!アイツさん!」
遥とエプロンの会話に割り込んでくるエンジェル。
「ん?どした?」
「アレは落書きじゃなくてアート!」
「いや、アレはどう見たってアートやなくて落が……」
「アート!!」
エンジェルの気迫と勢いに押されてしまうエプロン。
「そ、そうやな。アレはアートや!……」
「そう、アート!!落書きとかと一緒にしちゃイヤですよー。私のアートは1番カワイイんですから♪」
「うん。って、あの落書き、やなくてアートはエンジェルが書いたんか?」
「うん、そうですよー」
「へぇ〜、知らんかったわ。ウチがハレ女に来た時にはもう今の状態やったから…」
「やっぱり、学校だってどうせならカワイイ方がいいに決まってるじゃないですか?だから私が一年の時に、深夜勝手に侵入して描いたんです!あの日は徹夜だったんですよ〜。肌は荒れるわ、目にくまは出来るわで大変だったんですから。でもそのお陰で1日で完成したんですけどね」
「あの広さを1日で!それは凄いなぁ〜ー」
「でしょ?部長もそう思いません?」
「そうね。凄いと思うわ」
「!!ありがとうございます!」
遥のあっさりした態度でもエンジェルにとっては嬉しかったようだ。
「さてと、雑談はここら辺にして、そろそろ乗り込むわよ」
「やな」
「ハーイ!」
「なら行きましょうか?あの綺麗なお城、せっかくだから土足で踏み荒らしてあげましょう!レッカを助けるついでにね?」
「オーー!!」
「エンジェルも遥も意外と結構ノリノリやな……」
先陣を切るように前へと進み出す遥とエンジェル。
「ですね……。私達も遅れないようにしないと」
「あいよ」
それを少し後ろから追いかけるアシュラとエプロン達御一行。
城に入るため門の手前まで来た遥達。
「さーーて、ここまで来たはいいけど……。遥、この門どうやって突破するんや?」
エプロンの問いかけに、
「そんなの簡単よ、」
遥は体を動かし、その答えを見せようとした瞬間。
「ちょっと待ったーーーー!!」
後ろから叫び声が聞こえてくる。
「え?」
遥達が後ろを振り向くと、大声で叫びながら全速力で大荷物を持ったヤヨイが向かってくる。
「みなさーーーん!ちょっと待ってくださーい!」
「ヤヨイ?」
慌てて追いかけてきたヤヨイはようやく遥達元に追いつく。
「はぁ……はぁ……。なんとか間に合いましたね……」
「どうしたの、ヤヨイ?アンタまで一緒に来る必要は無かったのに…」
「そんなこと言わないでください…。前に言ったじゃないですか?私は役に立つって。その為にここに来たんです!……」
息が上がりながらもなんとか想いを伝えるヤヨイ。
「そう。ありがとう」
「でも、、私は皆さんみたい強くはありません。戦っても足手纏いになるだけ。だから、私の出来る事で皆さんの役に立ちます!」
ヤヨイは背負って来たリュックのような鞄から大量の服を取り出す。
「何コレ?」
「これが私だけの出来る事です!」
そう言ってヤヨイが見せてきたものは、異世界とは遠く離れた奇抜なデザインの服だった。
だけど、ヤンキーである遥達にとっては馴染みのあるデザインでもあった。
「コレって、まさか……」
「コレは…アレやな……」
「はい……アレですね……私、間近で見るのは初めてですよ。まさかコレを異世界で見ることになるなんて…」
「……昭和?」
「わぁ!カッコいい!!」
まさかの物に動揺する遥、エプロン、アシュラ、サシミ。
だが、アイツだけはその絶妙なセンスにとても喜んでいた。
「そうです。特攻服です!!」
ヤヨイが持ってきたのは人数分の特攻服だった。
持ってきたものは全て色違い。そしてその特攻服には<威薔薇ノ棘>と大々的に刺繍が刻まれている。
「どうしたのよコレ?」
「前聞いた遥さん達のプロレスの話から思いついたんです。やっぱり戦うときには衣装が必要だと思って、で、必死になって思い出したんです。ヤンキーと言えばコレだって!」
「それで特服……」
「あれ、間違ってました?」
「いや、間違ってはないけど、時代がな〜……」
「え?駄目ですか……」
珍しく落ち込む表情を見せるヤヨイ。
「いや、まぁ、でもいいか。衣装だと思えばコレもアリね」
「そうやな。ちょっと派手な気もするけど異世界にはこんくらいがちょうどいいんちゃうか?」
「そうね。ヤヨイ、ありがとう。せっかくだから着させてもらうわ」
「ハイ!どうぞ!」
努力が恵まれたヤヨイは喜ぶ。
遥達はヤヨイが持ってきた色とりどりの特攻服から好みの物を選び出す。
どれにしようか迷っていた遥にヤヨイが投げ渡す。
「遥!」
「!、赤?特服で赤って私にしてはいくらなんでも派手すぎじゃない?」
「そんな事ないって。それに遥のレスラー時代の衣装カラーも赤やったやろ?」
「それはそうだけど……」
「ええからまずは着てみろって!遥には絶対が赤が似合うから!」
半ば強引に赤い特攻服を遥に着せようとする。
「分かった、分かったわよ。自分で着れるから!」
遥は派手な赤い特攻服を身に纏う。
「どう、似合う?」
「お似合いです!!」
「うん、やっぱり遥は赤やな!」
「そう?なら、コレでいいわ」
意外と単純な遥であった。
「じゃあウチは黒やな」
エプロンは黒い特服を身に纏う。
「どうや?ええやろ」
「ねぇ、アナタが黒を着たいから私に赤を着せたとかじゃないわよね?」
「!…そんなわけないやろ!ウチは純粋に遥には赤が似合うと思って勧めただけや。言ってたみたいな思惑なんてあるわけない!!…」
「本当に?今正直に言うなら、私、怒らないわよ?」
「え?……」
「どうする?」
「…………いや、何も今のがウチの本音や!嘘なんかついてない!」
「……そ、ならいいけど……」
「……(あ、危なかったーー。一瞬、正直に白状してしまうところやった…)」
エプロンは安堵した表情を見せる。
2人がそんなやり取りをしている内に他の面々も続々と特服を身に纏いだす。
アシュラはピンクを。
サシミは青を。
エンジェルは黄色を。
アイツは白を。
各々の好きなカラーを身に纏う事で全員モチベーションが上がり気合いが入る。
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