四十六話 翠和羅/スイカズラ
閲覧感謝です!
貴重なお時間にお邪魔します……
アシュラの後ろから気まずそうに出てきたのは、冒険者ギルドの副マスター権ホムラノ騎士団副団長を務めるユウリだった。
「あ、アンタは昨日の!」
突然現れたユウリに驚くエプロン。
「どうも……」
「エプロン、知り合い?」
「前に遥に話したやろ。ヤヨイに誘われて街に行ったらそん時に厄介な奴に絡まれたって」
「ああ、ヤヨイとレッカの件ね。思い出した。ユウリって子が色々やらかしたって言ってたけ?」
「それや」
「あの、失礼を承知の上でお願いがあります!どうか、レッカ団長を助けてください!!」
あれだけプライドの高そうなユウリが易々と遥達に頭を下げる。
「おい、いきなり過ぎて話について行けへん」
「私が皆さんにした事は決して許されません。分かってますし反省もしています!命を持って償えと言うのなら償います」
「ちょっ、だからな…」
「だから!私の事はどうなっても構いません。ですから部長だけは助けてください!!」
ユウリは更に土下座までして遥達に頼み込む。
「だからはこっちのセリフや!話について行けへんって言ってるやろ!」
エプロンのツッコミはただただ、こだまするだけだった。
「ユウリだっけ、まずは頭上げてくれる?話はそれからよ」
遥の呼び掛けにもユウリは反応しない。
「……ユウリ!!」
「ハイっ!!」
遥の叫びにレッカとのやり取りの癖でユウリは思わず顔を上げてしまう。
「あ、」
「まずはなんでこうなったか説明が先でしょ。そうじゃなきゃ私も答えが出せない」
「……今朝、この手紙が私の元に来たんです」
「見せてくれる?」
ユウリから受け取り手紙を読み始める。
「遥、なんて書いてあるんや?」
「それがさ……達筆すぎて読めないや……」
「なんやそれ!?」
「ユウリ、アナタはこれが読めたの?」
「はい…この位は皆さんと違って私は器用ですので……」
しれっと遥達にマウントを取るユウリだったが遥達は気にしない。
「じゃあ要約して読んでくれる?不器用な私達の代わりに」
「遥、今のちょっと根に持ってるやろ?」
「…………」
遥は答えない。が、周りはなんとなくその答えが分かっていた。
「レッカ団長は今、バルキュリア王国の裏切り者として処刑されようとしています。それを止めたければ転移者達を城に連れて来いと…」
「これは思った以上に厄介な招待状ね」
「また処刑か……ここはホンマ物騒な国やなぁ」
「その手紙を書いた奴は私達を呼びつけて何がしたいわけ?」
「そんなの決まってます。この国の脅威を取り除きたいんですよ。転移者のアナタ達を殺す事によって。あ、私は皆さんにそんな気持ちはもう抱いていませんよ!」
ユウリにやりたい放題されかけたエプロン達は思った。
「絶対、思ってない!!」
ってね。
だけど口には出さない。何故なら大人だから。
「皆さんに死ねとは言いません。恐らくこのまま行けば皆さんはまんまと死ぬ事になるでしょう。だから逃げていただいても構いません。ただ、団長も一緒に救って欲しいんです!!だからお願いします!!」
「無茶苦茶やな……お前、全然反省してないやろ?」
「してますよ!してるからこうやって頭まで下げて頼んでるんでしょ?」
「だったらもうちょっと言葉を選んで話したらどうや?!」
「だからそうしたじゃないですか!」
「出来てへんねん!本当の気持ちが一切隠れてない、丸見えなんや!隠す気ないやろ!全裸や、全裸!それと同じや!」
「何が同じなんですか!!ってか急に全裸とか、変態なんですか?ふざけないでください!こっちは真面目に頼んでるんですよ!」
「ホンマに真面目ならもっと上手いことやれや!こっちは頼まれる側なんやからもっとそっちの態度ってもんがあるやろ?」
「分かってますよ!!だからこうやって頼んでるんじゃないんですか〜?ええ?」
「ああ?」
何故だか余計な所での言い合いでヒートアップするユウリとエプロン。
もはやこのままでは埒が明かない。
そこで遥が割って入る。
「はいはいそこまで。2人とも話が逸れすぎたから……」
「遥、そんなん言ったって、コイツがよ…」
「分かったから、一回落ち着いて。それとユウリ」
「はい……」
不貞腐れながら返事をするユウリ。
「色々と言ったし言ってたけどレッカは助けるから安心していいわよ」
「本当ですか!?」
「本当よ。…でも勘違いしないでね。アナタに頼まれたから助けに行くんじゃない。私は売られた喧嘩を買いに行くだけ。私のダチを救いにね…」
「ちょっと待った。遥、それ本気で言ってんの?今回はオジョウの時と違って仲間ってわけやない。私らにとっては少し前に知り合っただけのただの顔見知り。それだけの関係で背負うにはリスクがちょっと高すぎるんちゃうんか?」
「分かってる。だから今回は私1人でやるわ。リスクを背負うのは私だけで十分。それなら問題ないでしょ?」
「そうやな。それなら確かに問題ない。でもな、文句は言わせて貰う」
「なら貰ってあげる。聞かせて?」
「ウチらをもっと頼れや!!ホンマ学習せえへんなぁ。この前遥が言ってたよな?仲間に頼ってこそハレ女らしい戦い方が出来るって!なのになんで!そう言った本人が仲間を頼らない!ウチらはもっと遥に頼って欲しいねん…」
エプロンの叫びに共鳴するようにアシュラ達も深く頷く。
「それはそうかもね……でも本当にいいの?このままだとみんなまで背負わなくてもいいモノ背負わせちゃうけど……」
「背負いたいんです。私達も一緒に」
アシュラは想いを告げる。
「もっちろん!私もアシュラと同じ気持ちです!」
エンジェルもそれに乗っかる。
「……私も同じ。部長がやるなら私もやります」
サシミも同意する。
となると当然、
全員がアイツの方を見る。
「え?何?」
「アンタはどうするの?」
「私?私はね〜〜、やりまーーーー……」
無駄に最後の一言を溜めるアイツ。
「せんね。分かってる、強制はしないわ」
「いやいや!!部長!?何考えてるんですか!?やりますよ!やるに決まってるじゃないですか!私がこんな楽しそうな事を断るわけないでしょ?」
「冗談よ、冗談。でも、無駄に溜めたアナタが悪いのよ」
「えーーーー、そんなーーーーー!」
「また溜めてるし……いいわ、みんなの気持ちは分かった。でも念の為。もう一度聞くけど本当にいいのね?ここはなんでもありの異世界。私達がしてきた喧嘩とは世界が違う。この前みたいに上手く行くとは限らない。最悪の可能性だってある。それでも一緒にそのリスクを背負う覚悟はあるの?」
「遥。同じ事を何度も言わせんな。そんなのウチらはとっくに出来てる」
エプロンの言葉と仲間の表情を見て遥も覚悟を決める。
「分かった。……ならお願い。私と一緒に来て」
遥からやっと聞けたその一言に皆、一同喜んで返事をする。
「おう!」
「はい!」
「はーーい!!」
「皆さんありがとうございます……!」
「じゃあ、行ってくるわね。必ずレッカは連れて帰るから、アンタはいつも通り言われた仕事をこなしてなさい。じゃなきゃまたレッカに怒られるわよ?」
「そんな事言われなくても分かってますよ!」
「ハイハイ……」
そうして遥達、威薔薇ノ棘の面々は囚われたレッカを救うため、城へ向かったのであった。
ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。
よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!
次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈ってお待ちしております。