四十五話 呉零女/クレオメ
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最近、私は寝る度に毎回変な夢を見る。
それも毎回決まって全く同じもの。
ほら、今日も同じだ。
目に見える辺り一面真っ暗で何も分からない。
これが夢なのは夢を見ながらでも分かってる。
少しすると真っ暗闇なこの世界に人が現れる。
真っ黒なローブとフードを深く被っているその人物は毎回ただただ私を見続けている。
そして暫くすると夢は覚める。
いつものその繰り返し。
この夢になんの意味があるかなんて分からない。
夢だからなのかそれとも他に理由があるのか……
でも今日の夢はいつもと少しだけ違ったんだ。
いつも何もしないソイツが何故か今日は私に近づいてきた。
この夢を見出したのは異世界に来てから。
何度もこの夢を見てきているがこんなのは初めてだ。
ソイツは私の近くまで来ると顔を寸前まで近づける。
これでようやく正体が分かる。
だけども顔は見えなかった。フードの下の顔だけには謎の青いモヤが素顔を隠していて顔を拝む事は出来ない。
それは私を焦らしているようにも思えた。
だけど、これだけ同じ夢を見続けていると、そんな人物に心当たりが出てくる。
きっとあの青いモヤもソイツなりのヒントを出してるつもりなんだろう。
ってか正直ソイツしかいないと思う。
こうやって勿体ぶる性格は少しだけヤヨイに似ている気がする。
だってソイツはもう、夢でしか会えないんだから……
その人物は私に小声で語りかける。
「もうすぐだよ、遥。最高のタイミングまであともう少しだ」
この声はまさに私が思うソイツの声で私の中の疑惑は確信に変わった。
「ねぇ、葵。こうやって夢にまで出てきてなんのつもり?」
「…………フフッ」
「悪いけど成仏出来てないなら、さっさとしてもらえる?毎回こんなんじゃ疲れも取れないのよ」
「…………アハっ!」
モヤは晴れないままソイツは不気味に笑う。
そしてソイツは意味深に指を折って数を数える。
1
2
3
最後の数字がカウントされた時、私の体に強い衝撃が走る。
これは夢だ。だから夢に出てくるソイツもこの痛みも全部ニセモノ。
その筈なのに確かにこの痛みはリアルそのものだった。
そして私は飛び起きた。
園芸部 部室
「ハッ!…………夢だよね。……今日の夢はなんだか刺激的だった。疲れてんな、私」
「遥、大丈夫か?」
側にいたエプロンが私を気にかける。
「寝ている間なんかずっと変やったけど?」
「変?…もしかしてうなされてた?」
「いや、うなされてたってよりは笑ってたかな?」
「笑った?私が?冗談でしょ?」
「ホンマやって。声出してたわけちゃうけどずっと微妙に口角が上がっ
てんねん。一体どんな夢見てんのかな〜って思って不思議に思っとったら、今度は急に体が跳ね上がって苦しみ出したんや。そんなん見させられたら誰だって心配するやろ?」
「そうね……悪かった、心配しないで。もう別に大丈夫だから」
「ホンマか?ホンマに大丈夫か?なんかの病気とかちゃうよな?実はウチらにずっと隠して過ごしてたとかそんなのは無しやで」
「心配しなくてもそんなのは無いわよ。……ただちょっと疲れてただけよ。ほっといてもその内良くなるわ。だから大丈夫」
「ならええけど……。で、どんな夢見てたん?」
「別になんでもいいでしょ?」
「そうやけどやっぱ気になるやん。ええやん、別に減るものちゃうんやから教えてくれても」
「そういう問題じゃないのよ。教えるほど面白い夢でもないしね……」
「やっぱりやめた。…茶化すのはこんくらいで終いや。また出てきたんやろ?葵が」
「……さあね」
「誤魔化すのはやめろや。しょうもない」
「だったらどうするの?どうも出来ないでしょ?」
「だからってこのままって訳にもいかんやろ。遥、最近その夢のせいでまともに寝れてへんのちゃうか?」
「……寝てるわよ」
「寝てても体が休まってないんなら意味がない。このままやったらいつか体がもたなくなるで!」
「……大丈夫」
「何が大丈夫や!異世界来てからそれに悩まされて何が大丈夫なんや!」
「だから大丈夫。多分だけど、もうすぐこの夢も見なくて済むと思う……」
「なんか進展あったんか!?」
「うん。眠くもないのに昼寝を何度も繰り返して、何度もあの夢を見た甲斐があったのよ。ようやく、葵の方から喋ってきた」
「何やて!?なんて言ってた?絶対その言葉がその夢を終わらせるヒントになってんねん!」
「なに興奮してんのよ……」
「だってそうやろ。毎回同じ夢を見る不自然が起こるなんてそんなあり得ないことここが異世界だからに決まってる。遥以外にそれが起きてないのは謎やけど……絶対そうに決まってんねん!なんで夢に葵が出てくるのかも謎やけど、それもなんだかんだいって異世界のせいに決まってる!だったらそれを治す方法も異世界ならではの手段に決まってる!全然分からんけどな!」
「分からない事ばっかりならそんなに自信をもって言わないでよ…。それになんでもかんでも異世界の所為にするのはどうなわけ?」
「細かい事はええねん!で、葵はなんて言ってたんや?ええから教えろって」
「もうすぐだってさ……」
「もうすぐ?なにがや?」
「そんなの知らないわよ。…待ってるしかないんじゃない?そしたらそのうち分かるわよ。これがただの夢かそうじゃないかなんて」
「そんな悠長な事言っててええんか?……」
「しょうがないでしょ」
すると、威薔薇ノ棘のメンバーが続々と部室にやって来る。
「お疲れ様です。あの、色々と揉めてたみたいですけど、何か問題でも?」
アシュラは問いかける。
「いや、こっちの話や。なんでもない」
「…そうですか」
「ねぇねぇ、サシミ。私の髪型なにか変わったと思わない?」
エンジェルの問いかけに頭を悩ませるサシミ。
「……何も変わってないよね?」
「変わってるよー!!ほらちゃんと見て!」
「……やっぱり何も変わってないと思うけど…」
「えーーー。なんで気づかないかなー?ほら、ここら辺とか微妙にカールがかかってオシャレになってると思わない?ほら、似合ってるでしょ?」
「……あ、言われてみれば確かに。そうだね、似合ってると思う(今までと違いがよくわからないけど……)」
「ほんとに!分かってたけどやっぱりそうやって言われると嬉しいよねー!!」
想像通り褒められたエンジェルは飛んで喜ぶ。
めんどくさいのか、それとも単純なのか、いや、その曖昧さがエンジェルなのだとその様子を見ていた一同は思った。
すると遅れてアイツがやってくる。
「おっはよーーー!!」
大きな声で挨拶を済ませるアイツ。
「声が大きい!!そんなに大きな声じゃなくても聞こえてるわよ!そもそもおはようなんて時間は過ぎてるからね!」
アイツに文句を言うアシュラだったがアイツはそれを聞かないまま自分の話たいことを話しだす。
「そうだ、部長!」
「ん?」
「お客さん来てるよ?」
「……誰?」
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