外伝 来楽/ライラック~過去から紡ぐ未来へのゴング~PART2
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「じゃあ何かきっかけがあったって事ですね」
「そうなるわな……」
「聞きたいの?」
「それは、まぁ……。でも、別に無理に話してくれって訳じゃありません。言いにくい事もあるでしょうしそれに、私にそこまで追求する権利なんかありませんから」
「でも聞きたいんでしょ?」
「ですから別にそういうわけじゃ……」
ヤヨイとエプロンの目がふと合う。
エプロンはヤヨイに何か表情を使って必死に何かを伝えようとしている。
ヤヨイはその表情の意味を考える。
もしかして、聞いてほしいってこと?
「じゃあ、折角ですから聞かせてください!」
今まで殆ど表情が変わらなかった遥の顔が少しゆるんだ気がする。
「分かったわ。…エプロン代わりにお願い」
「ん、ウチが話すん?どうせなら遥から話した方がええやろ?」
「私はいいわ。こういうのは私よりアナタの方が向いてるから。私はそれを聞いて所々ちょっかいを出すくらいが丁度いいの」
「しゃあないな…。ならそんな恥ずかしがり屋の部長さんに代わってウチがウチらの過去を話したるわ」
「はい。お願いします!(これで良いんですよね?エプロンさん)」
「(バッチリや。サンキューな、ヤヨイ!)」
2人だけの心の会話が何故か成立する。
「ウチがどうしてハレ女に転校したかを知りたいなら、まずはウチと遥の過去について話さなきゃアカン。順番は大事やからな。当時、ウチや遥が現役の高校生レスラーだった頃。ウチは所属選手が全員女子の所謂女子プロの団体におったんや」
「それはそうでしょ。だってお2人とも女性なんですから」
「まぁな。確かに普通はそうや。でも別に例外がない訳やない。遥みたいに男しかいないプロレス団体にたった1人だけ女性が混じってることもたまーにある」
「ええ!?それって、遥さんは現役時代から男性と戦っていたってことですか?」
「そうやで。勿論他の選手は全員歳上で大人ばっかりや」
「いやいや、それってアリなんですか?どう考えたって女性の遥さんの方が不利だし色々と問題があるんじゃ?」
「何を考えてるから知らへんけど別に変なことはないから大丈夫や。それに遥は体重も体格も違う男を相手にして対等に戦えてた。ヤヨイだって遥の戦いぶりは見たやろ?それと同じこと日本でも起きてたってだけの簡単な話や」
「いやでもここは異世界ですから……」
「関係あらへん。特にプロレスはな。そりゃあ、遥みたいな未成年の女子がが男性しかいない団体に所属するって話が広まった時は色々と言われてもいたけど、暫くして遥の強さとプライドが伝わるとそんな事を言ってた奴らは皆手のひら返しや」
「遥さんってそんなにプロレスラーとしても強かったんですか?」
「そりゃあ、もう。なにしろ17歳にして男性20人以上が所属している団体の中のトップの称号を表すベルトを辞めるまで持ってたんやから」
「それってつまり……」
「そうや。遥が1番最も強いって書いて最強って事や!!」
「えぇ!!めちゃくちゃ凄いじゃないですか!!そうですよね!これって凄いことなんですよね?」
「当たり前や。業界的に考えてもめちゃくちゃ珍しいことや。快挙って言葉で括れないくらい凄い事なんやで!実際に遥は業界的に女子高生プロレスラーとしてもめちゃくちゃ注目もされていたしファンは勿論、一緒に所属している選手からもとても慕われてるって話題やったんやで。それに遥たちが余りにも強すぎるから一部のファンからは17って年齢を詐称して出場してるんじゃないかって噂が広まったこともあったしな」
「…達?」
ヤヨイの疑問は遥の呟きに掻き消された。
「さっきから色々とちょっと言い過ぎだから……」
「言い過ぎちゃうわ。ウチは別に嘘なんてついないしこれっぽっちも盛って話してないで」
「だとしても、昔のことだから。今の私にはとても無理よ。てか私のことはこれくらいにして今度は自分の事も話しなさいよ」
「え、ウチ?。ウチは別に遥と違って目立った成績はないし、別に良くない?」
「良くない。そもそもアンタが転校して来た理由を話すために話してるんだから話さなきゃいけないに決まってるでしょ?!。ヤヨイだってここまできたらエプロンの事も知りたいでしょうし?」
「勿論です」
「だってウチは遥や葵みたいにめちゃくちゃやってた訳ちゃうから、全っ然オモロクないで?」
「葵?あの、それって誰です?話に出てきましたっけ?」
「あ、……」
「沙莉…。そこまで話せとは言ってない」
「だってしゃあないやろ。その名前出さんとウチのことも話せないんやから。…しゃあない、こうなったらウチの事と一緒に葵の事も話したるわ。これならウチも多少は話し易い」
遥の顔が突如として暗くなる。
「ヤヨイにならええよな、遥」
「……うん。任せた」
「あいよ」
「あの、別にいいですよ。話しづらいなら話さなくても…」
「ウチらのの事を聞きたいって言ったのはヤヨイやろ?なら最後まで聞くのが筋ってもんちゃうんか?」
エプロンが凄む。
「それはそうですけど……(聞けって雰囲気を出したのはエプロンさん達なんだけどな〜。これ言ったらヤバそうだからやめとこう)分かりました。なら最後までちゃんと聞かせていただきます。もちろん口外も致しません」
「いや、園芸部の人間なら知ってることや。そこまで重く考えんでもええ」
「そうですか……(だったらそこまで勿体ぶる必要もないじゃん!!ここには殆どそういう人間しかいないんだから!)」
ヤヨイの心の中はとても忙しかった。
「さっきウチは女子プロの団体に所属してたって言ったけど、そこに一緒に所属して戦ってたのが<月美弥 葵>や。葵はウチとチームを組んで共にタッグのベルトを持ってた事もあったんやで」
「そうなんですか…」
プロレスの事をよく分かってないヤヨイは話についていけず凄さがあんまり分からない。
「特に葵は遥と似たり寄ったりで無茶苦茶でな、」
「葵と一緒にしないでよ……」
「一緒やって。2人ともウチから見たら天才なんやから。葵はな団体こそ違えど遥と肩を並べる強さの持ち主で業界からもライバルって名目で売り出されることも多かったんや。それに世間には公表されへんかったけど実は2人とも小さい頃からの幼馴染でもあるんやで」
「なるほど……。その葵さんはどのくらいお強い方だったんですか?遥さんと肩を並べる位と仰っていたので相当お強いとは思うんですが、目処がたたなくて…」
「葵も個人でウチの団体の最強のベルトは持っとったし、あらゆる戦いでも常に結果を残してきた奴や。それになんて言ったって葵は遥キラーやった……」
「遥キラー?」
「不定期でな、遥がウチの団体に遊びに来ることが多々あんねん。ウチの所属する他の子と遥がタッグを組んで戦う事もあったしシングルで戦う事もある。まあ、その辺は色々や。当然そうなると、ウチや葵と戦うこともある。ウチの事はさておき、遥と葵が戦う時は必ずと言っていいほどめちゃくちゃ盛り上がる。そして遥は必ず葵に負けるんや。まるでお約束みたいにな」
「え……」
「遥が誰かと組んで葵と戦うタッグマッチの時とかはそういうわけでもないけど、葵との一騎打ちとなると勝利の女神は必ず葵に微笑む。そんな葵の姿にファンが勝手につけたあだ名が遥キラーや。いっつも遥が葵と戦う時には必ず場内のお客さんが遥派と葵派に分かれて応援しだすのが恒例の流れでな、余りにその流れが定番化し過ぎてウチの団体なんか、それに合わせたグッズまで商品化してたからなぁ……。まぁそれだけ遥と葵が人気だったってことや」
「ほぉ……。お2人のことはなんとなく分かりました。でもそこからエプロンさんの転校の話に本当に繋がるんですか?それに今の話から行くとお2人は現役時代は今のようなヤンキーではなかったということでいいんですか?」
「まあまあ焦んなって。ちゃんと順番通りに話したるから」
「ハイ、すみません…(まだ続くの、この話?思った以上に壮大な話ってことね。ついていけるかしら?)」
「因みにさっきの質問の答えやけどウチらはYESで遥はNOや」
「?逆じゃなくてですか?」
「そうや。ウチと葵が現役当時もヤンキーで遥は不良だらけの女子校に通っているだけの至って真面目な女子高生だった」
「なんか意外ですね」
「かもな。ウチは当時通っていた高校の不良グループのNo.2で葵がそのNo.1やった。遥の通うハレ女とは少し離れてはいたけど敵対関係としては繋がりがあった。まぁ、その時の遥には全く関係ない話やけどな」
「ほんとうよ……」
「でもそんな派手にヤンキーをやっていて周りの人には全くバレなかったんですか?」
「それが全然。葵もウチも表で戦ってる時とヤンキーとして裏で喧嘩をしている時とは雰囲気が違ったから全くバレなかったみたいなんよ。そもそも、ウチの不良グループにプロレスが好きそうな子は居らへんかったし、所属団体側もまさかウチらがヤンキーとして裏でめちゃくちゃやってたとは考えてもいなかったんだろ」
「私は私で普段は目立たないように過ごしてたから私の事も世間に広まることはなかったかなそもそも私はその頃ヤンキーじゃなかったし」
「とにかく、そんなこんなな二重生活をウチらはしばらくしていた訳やけど、ある日ちょっとした転機が訪れた。遙と葵、互いのベルトをかけた真の最強を決めるビッグマッチが開催される事が決まったんや」
「となると勝った方が2つのベルトを持つって事ですね?」
「そうや。しかも2本とも各団体の最強を表すベルトや。こんな2本が同時に賭けられる事なんて滅多にあることじゃない。しかもそれをウチらの年齢の女子がやるなんて前代未聞の出来事や。業界内外、関係なくこの時だけは様々なメディアが遥たちについて回った。メディアの効果もあってその日を行われる大会のチケットは直ぐに完売。余りの人気に運営側が急遽立ち見席を用意しても足りなかったくらいの盛況ぶりやった」
「凄いじゃないですか。詳しくない私でもなんかこの凄さは分かりますよ!それで、その戦いの結果はどうなったんですか!?」
話を聞いてきて最初より興味が出てきたヤヨイ。
「そして大会前日や」
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