外伝 来楽/ライラック~過去から紡ぐ未来へのゴング~PART1
閲覧感謝です!
貴重なお時間にお邪魔します……
この物語は遥とエプロンの過去を紐解くお話。
よって、本編と多少時系列の都合が変わりますが御了承下さい。
ハレルヤ女学園 園芸部 部室
部室内にいるのは遥、エプロン、ヤヨイの3人が各々の時間を過ごしている。
特に会話もなくただただ一緒の部屋にいるだけ。
そんな空気に耐えられなくなったのか、ヤヨイが突然2人に会話を投げかける。
「あの、私!お二人に聞きたいことがあって……今いいですか?」
「ウチはええよ」
スマホをいじっていたエプロンはスマホを置き話を聞くことに。
そして遥は、
「寝ながらでもいいなら……」
いつもの様に部室内に置かれているソファーで寝そべりながら答える。
「もちろんそれでも構いません。とにかく私が喋りたいだけなんで」
「それで聞きたいことってなんや?」
「実は皆さんと一緒に過ごすようになってからずっと気になっていることがあって……」
「気になること?」
「はい。皆さんの戦い方ってちょっと独特だなぁ〜って思ってて。私もこの世界で色々な魔法や戦い方をする人達を見てきましたが皆さんの様な戦い方をする人達は初めてで。基本はきっとシンプルなのにちょっと変わった独特な動きと戦う姿勢。なんか知ってるような気がしないこともないんですが分からなくて……」
「なるほどな〜、確かにウチらの喧嘩スタイルは一般的なヤンキー達と比べても変わってるからな。疑問に思うのも当然か。特にウチと遥だけは他の子達と違って基本が全く違うからな。まぁ、それでウチや遥に影響されて他の子達もウチらの戦い方を真似するようになったんけどな」
「どういうことですか?…」
「この世界にはきっと無いから知らないのも無理はないけど転生者のヤヨイなら見たことなくても名前くらいは絶対知ってるはずやで、」
エプロンが最後まで話そうとした瞬間、遥が口を挟む。
「プロレスよ…」
「プロレス?」
「おいっ遥、せっかくウチが上手いこと勿体付けながらこれから少しずつ説明しようと思っとったのに何で美味しい所だけ持ってくねん!泥棒やで!」
「別にいいでしょ。言うことは変わらないんだしこっちの方が早いんだから…それに説明しだしたらどうせ長くなるでしょ?だから巻いたのよ」
「そういう問題か?…」
「いいのよ、それで」
プロレスの名前を聞いたヤヨイが突然大声を出した。
「それだぁっ!!…それですよ!それ!」
「驚いたぁ…だからそうやってウチらが言ったんやろ。そうに決まってる」
「そ、そうですねー。でも、お2人のお陰で私も思い出せたんです。日本にそういう格闘技があった事を!」
「それだけかい…あんなに叫んだからウチはてっきり転生する前のヤヨイが実はプロレスファンだったからと思ってしまったわ。そうやないんやろ?」
「スミマセン。そういうわけじゃなくて私、格闘技は愚かスポーツ自体余り興味がなくてやるのも見るのも全然なんです……。だからプロレスの事も存在を知ってくらいで、後はテレビとかによく出ている元プロレスラーの方を知っている程度なんです……きっとお2人にプロレスというワードが出てこなければきっと思い出せないくらい前世の私は興味がなかったんだと思います」
「別に謝る必要ない。別にこんなのはヤヨイだけやない。日本に住んでる殆どの人がヤヨイと同じ程度の知識しかないと思うで?プロレスが盛んなアメリカとかの外国は毎週のようにテレビや配信でよう見れるけど日本はそうやない。今でも野球やサッカーとかはよく日本のテレビとかでも生中継でやったりしてるけど今の日本はそうじゃない。精々、深夜の番組でダイジェストを流すくらいが現状の日本のテレビ業界の限界や。勿論、見ようと思えば今の時代幾らでも配信サービスで様々な団体のプロレスが見れるけどそれを知ってるのも、するのもプロレスが好きな奴か興味がある奴だけや。他のスポーツのようにテレビのニュースで報道される事もないしな。つまり今のプロレスは他のスポーツと比べて見ようと思ったり知りたいと思わなきゃ、気になるきっかけすら手に入りづらいのが現状や。だから詳しくないのも不思議やない」
「エプロンさん、随分プロレスについて色々とお詳しいんですね」
「まぁそれなりにはな」
「でもそれがお2人とどう関係するんです?」
「まだ気づかんか?」
「え?、どういう?」
「ウチらの戦い方がそのプロレスと似てるっちゅうってことがどういう意味か、勘のいいヤヨイなら分かるやろ!?」
「……あーー、成程。言いたいことが分かりましたよ。戦い方が似ててプロレスの事にも詳しいってことは…」
「そうや」
「お2人共プロレスの大ファンってことですね!!」
「違うわ!、確かに違くもないけどそう意味やないねん!特にウチらは!もういい、勿体ぶってもしゃあないからウチから教えたるわ。ウチらは2人共……」
エプロンが最後の一言を言おうとした瞬間、再び遥が口を挟む。
「2人共元プロレスラーなのよ」
「えぇーーー!!?そうだったんですかー!」
「遥、またか。また自分が美味しいところだけ持ってたな!次こそウチが言おうと思ってたのに、またやりやがって…もう常習犯やないか!!」
「意外とコレ面白いのよ」
「オモロくないわ!クセになっとるやないか!」
「そんな事よりお2人共どういう事ですか?プロレスラーって、ちょっとまだよく分かってないんですけど…」
「そんなことってなんやねん!、でも別にええか。話と関係ないし。だけどよく分からないって言われてもこれ以上説明のしようもないで?」
「いや分かりませんよ。だって私の中のプロレスラーのイメージって男性は勿論、女性でも体格やガタイがいい、見るからにパワーがありそうな人がやってるイメージがあったので。それに比べてお2人ともスタイルだっていいし、見た目からじゃプロレスが出来るくらいのパワーがあるなんて正直思えないくらいお綺麗ですから」
「スタイルがいいとか綺麗とかって言われたのは久々や。なんかちょっとこうまじまじと言われると照れるな……」
遥は態度に見せず真顔でいるが、密かに自らの手で体の一部をつねり平静を保っているだけだった。
「…ヤヨイが言ってたみたいに昔のプロレスは女子でもガタイのいい体格の大きい人も多かったけど、今はそういうわけでもない。やる方も見る方も色々と価値観や魅せ方が変わって来たって事や」
「なるほど。…なんか色々と知らなかった事が知れて嬉しい気分です。思い描いていたイメージも少し変わりましたし。つまり、今の話から行くとお2人ともご一緒にプロレスをやってたって事でいいんですよね?」
「いや、別に一緒ってわけやない。どちらかというと敵として会う方が多かったしたな。それにウチと遥はそもそも在籍してた団体が違うねん」
「?団体?チームみたいな事ですか?」
聞き慣れないワードに疑問だらけのヤヨイ。
「そうやなぁ、それでも間違ってはないけどもっと言うとグループって感じかな?」
「グループ?」
同じような意味の言葉が返ってきて更に疑問が増えるヤヨイ。
「それじゃあ言ってることが同じでしょ?分かりやすくなってないから」
「でもな遥、これ以上ウチは分かりやすく例えられへんよ」
「そうねぇ……団体ってのは大きくいって会社みたいなものなのよ。運営が役員で私達選手が社員みたいな?こんな感じなら伝わったかしら?」
「なるほどぉ!!分かりましたよ!」
「ホンマか〜?、今ので分かったんか」
「ええ、多分。要するに遥さんとエプロンさんは同じ社員でも全く別の会社で働いてたってことですよね?」
「そうや、それでおおよそは間違ってない。やっぱり遥は流石やな!」
「別にたいしたことないわよ。昔、似たような事を知人に聞かれて説明した事があったのを思い出しただけ。だって私達がいた業界って他のスポーツとかと比べてもちょっと違うこともあったからさ」
「そうやな」
「あの、私少し疑問なんですけど…遥さんとエプロンさんもやっていたのは同じプロレスなんですよね?」
「そうやで」
「だったら会社、団体が違う必要はあるんですか?だって団体が違うと何かが変わるって訳じゃありませんよね?」
「いや、変わるわよ。私とエプロンが居た場所だけで比べても大きくね」
「え!?そうなんですか?」
「そうやで。そりゃ団体が違うんやから当たり前やろ。団体が違えばその団体の色も変わってくる。戦いの技術と派手さを意識した団体もあればエンターテイメント性をより重視した団体もある。それらも含めて全部プロレスってことや」
「あー、なるほど。私はてっきり所属している場所が違うだけで後は全部同じだと思っていました。ということはお2人が同じリング?で戦うことは無かったって事ですよね?」
「基本的にはな。通常、プロレスってのは一つの団体に所属している選手同士が戦いあうってのが普通なんや。例えばサッカーの大会みたいに日本のチームとアメリカのチームの代表が戦うとかってわけじゃなくて、日本は日本のチームの中だけで互いに戦うって事や。他の団体から選手がやってくる事も珍しい事じゃないけど基本的には同じ仲間同士で戦う事の方が多いわな」
「そ。だから今みたいに私とエプロンが一緒にいる事も殆どなかったの。リングの上でも学校でもね」
「そもそも前まではウチら通ってる高校自体が別やったからな」
「そうだったんですか?お2人とも仲が良いからずっと一緒だと思っていましたよ」
「ちゃうちゃう。こうやって話すようになったのはウチがハレ女に転校してきてからや。それまではたまーに戦う事があっただけで、裏で話したりする事も殆どなかったしな」
「じゃあ何かきっかけがあったって事ですね」
「そうなるわな……」
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