四十二話 斗叉巳月/トサミヅキ
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そして、ある程度お茶会を楽しんだ頃。
レッカは今回の目的へと進んでいく。
「改めて、今回の部下の不祥事をお詫びいたします」
「ん、だからもうええって。疑いは晴れてこうして一緒に美味しいお茶も飲めてるんやからそれでええ」
「ありがとうございます。そう言ってくださると正直こちらも助かりますわ」
「でもアンタも大変やな」
「……」
「例の女。あんなにアンタが怒ったのにあいつは反省どころかちょっと喜んどった。ウチらがいうのもなんやけどあの子はちょっと変わっとる」
「あの子も変わったんです。前は何事にも冷静でいい事と悪い事の区別が自分なりについていた。以前ならあんな強引な方法で自分の意見を押し通すようなこともしなかったでしょう」
「人は直ぐには変われへんけど時間が経てば変わるもんや」
「そうですね……それに私が少しあの子に目をかけすぎたのもこうなってしまった原因なのかもしれません」
「そうか?」
「ええ。あの子は何故だか私の事となると周りが見えなくなり突っ走ってしまう癖がありまして……でも私の為にやってくれてることだと分かってましたから余り強くも言えず……でも強く言うべきだったんです。こんな事になる前にちゃんと、ハッキリと」
「アンタのせいやないやろ」
「それはそうですが、そういうわけにもいきませんわ…。貴女方がお気付きがどうかは分かりませんがあの子が皆さんに手を出したのは今回が初めてではないんですから」
「……?」
「もしかしてこの前の広場での件ですか?」
意味に気づいたヤヨイがエプロンよりいち早く答える。
「ええ。やはり貴方方なら覚えていると思っていましたよ」
「ヤヨイ、どういうことや?」
「この前のエプロンさん達の事ですよ」
「ああ、あれか。でもあれはダイチノ騎士団ってやつの仕業でここの人達は関係ないやろ」
「あ、そうか。エプロンさんはオジョウさんと共にいち早く広場から脱出したからよくは知らないんですね」
「?」
「エプロンさん達が脱出した後、遥さんはカイゼルに力を貸したホムラノ騎士団の魔法部隊によって殺されかけたんです」
「マジか!?でも遥は無傷やったよな?」
「私が渡したネックレスが遥さんを魔法から守ったんです」
「あの時遥に渡してたやつか」
「そうです」
「ウチの分は無かったやつやな」
「そ、そうですね……よく覚えてらっしゃる」
「当たり前や。でも、それで遥が助かったならええわ」
「実はその件に関してもユウリが関わっている事が後で分かったんです」
レッカは申し訳なさそうに語る。
「以前から今は亡きダイチノ騎士団と密かにユウリは関係を持っていたようで。副団長を通じて独断に動き部下を派遣した事が原因です……」
「…………」
「本来なら別部隊である我々がこのような事に力を貸すことなどあり得ないのですが……まさかこんな事までするとは、私も考える事が出来ませんでした。申し訳ありません…」
「もうええよ。済んだことやし謝るのはここら辺で終いや。流石にウチらももう謝罪は聞き飽きてお腹いっぱいや」
「スミマセン……」
「だからそれや。…ユウリの事はアンタがなんかとするんやろ。だったらウチらがいう事なんて何もない。後はアンタに任せた」
「心遣い感謝いたします」
「じゃっ、ウチらはそろそろお暇させてもらうことにするわ。時間もええ頃合いやしな」
そう言ってエプロン達は席を離れ帰ろうとするとレッカが声をかける。
「でも、それとこれとは話が違うんです」
「は?」
「今回の騒動の原因はあくまでもアキラやユウリと言えるでしょう。しかし皆様がお見せくださった映像?によると先に決闘を申し込んだのは皆様方ですよね?」
「それは…そうやけど、でもそうなったのはアイツらのせいや。ウチらは被害者みたいなもんなんやで?」
「分かってます。だけど被害者でありながら加害者である事もまた覆すことの出来ない事実です。決闘を行う際は専用の闘技場でやるというギルドのルールにも反していますしね」
「そんなん知らんし…」
「仮にそれを私が大目に考えたとしてもです。現にこうやって今回の決闘で被害を受けた方達の声も届いているのです。例えば、突然やってきた女がウチの店のテーブルや椅子を武器として使ってめちゃくちゃにしたとか?、心当たりがありますよね?まぁ、皆さんが見せてくださった証拠にそれも映っておりますので言い訳は出来ませんけどね。さぁ、どう責任をお取りになるつもりなのかお聞きいただけますか?」
ギルドに寄せられた様々な苦情が纏められた書類を見せる。
「それは……全部アイツがやったこと。だから今回の責任はアイツがとる!」
全ての責任をアイツに丸投げしようとするエプロン。
「えぇ!そんなの酷いよーー!」
驚き必死にそれを抵抗するアイツ。
「仕方ないやろ。こうなったら肉を切らせて骨を断つや。悪いが、生贄になってくれや」
笑顔でアイツに頼むエプロン。
そんな表情からそれが冗談で言ってるのかは分からない。
「それ本気?……」
「…………」
黙り込むエプロン。
このいやーな空気を嫌な空気にした張本人が声を発した。
「でしたら私と取り引きを致しませんか?」
「取り引き?」
「ええ。もしもその取り引きに応じてくださると仰るのなら今回の件はなかった事として目を瞑る事を約束致しましょう。ただし、それが出来ないというのなら私はこの街を仕切るギルドマスターとこの国を守る騎士団の団長としての両方の側面から対処をしなければなりません。いかがなさいます?」
「…そんなんウチらに選択肢あってないもんやろ」
「さあ?どうでしょう……」
「分かった。その取り引き受けさせてもらうわ」
「素早いご決断感謝しますわ」
「それはそうやろ。これしかウチらが進める道はない。流石にマジでアイツを生贄にさせるわけにはいかへんからな。おおよそここまではアンタの思惑通りって言ったところか?アンタはウチらに何を望む?」
「エプロンさん…」
ホッとした表情を見せるアイツ。
「そんな怖がらないでください。無理なことを頼むつもりはありませんから。どうか落ち着いて」
「……で、ウチらは何をすればいい?」
「せっかちですね。判断が早いのは良いことですが……私が望む事はただ一つ。皆さんがいう学校とやらに私を連れて行ってくださいまし」
「そんなんでええの?」
拍子抜けた条件に少し気が緩むエプロン達。
「それがいいんです。だってそこに行けば皆さんの代表とお話が出来るじゃありませんか。…それが私が望む唯一の条件です。まさか断るなんて事はしませんよね?」
「ええで。だったら案内するわ。ウチらの代表がいるハレルヤ女学園に」
こうしてエプロン達はオジョウを連れハレルヤ女学園に向かっていった。
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