四十一話 夜魔吹騎/ヤマブキ
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エプロンの心からの叫びは街中に響き渡った。
だがその叫びが届くことはなくアイツ達は笑いながらエプロンから離れようとはしなかった。
「皆様は随分仲がよろしいんですね」
「出会って間もない人にこんなこと言うのも変かもやけど、助けてくれへん?」
「そうですね……ではこうしましょうか。皆さん、この後お時間が宜しければ一緒にお茶なんかいかがでしょうか?今回の事で話したい事もまだありますし…それに来ていただけるのなら私オススメのとっておきのお菓子もご用意します!あ、勿論お土産付きですわ」
その一言を聞いた瞬間、エプロンにベタベタくっついて離れなかった彼女達全員が一瞬で離れる。
「お前ら、流石にチョロすぎやないか?……」
「だって私達、女の子だし、それに甘いものはだーーい好きだから!エプロンさんもそうでしょ?」
らしくない程の甘い声で喋るアイツの一言にエプロンはたじろぐ。
「え……まぁ、好きか嫌いかで言ったら好きやけどな…でもそれとこれとはなんかちょっと違う気が……」
「じゃあ、食べないの?」
「食べる。……そんなん食べるに決まってるやろ!」
「素直になったーー!!」
アイツ達は拍手で喜ぶ。
「話は決まりましたわね」
「ああ。じゃあ悪いけど頼むわ」
「いいえお気になさらず。では、参りましょうか」
レッカがエプロン達を連れてギルド内に戻ろうとするが立ち止まる。
「その前に。そういえばまだうやむやのまま放っておいたものがありましたね……そこの方々!隠れているつもりなんでしょうがバレバレですわよ。怒りませんから潔く姿を見せたらいかが?もう一度言いますが、バレバレですからね」
それを聞くと、物陰に隠れててこの場を上手くやり過ごそうとしていたアキラ達が観念して姿を見せる。
「…………怒らないんだよな?」
「ええ。怒りませんとも。ただ言いたい事は言わせていただきます。……アナタ達、分かりやすほど力や権力に溺れましたね。初めて会った時は譲れないプライドを持つもう少し見どころのある骨のある方々だと思ったんですが……私に見る目がなかったって事ですね。お恥ずかしい限りです」
「俺達は別に何も変わってない」
「いいえ、変わりましたよ。自分の事は自分がよく知ってるなんてよく言いますけど、アナタ達に限ってはそうじゃなかったみたいですね。いつからかアナタ達は他人の目でしか自分達の事を見ようとはしなかった。周りもアナタ達がそう望んでいたから見せようともしなかった。私もそのうちの1人ですが……。きっと昔のアナタ達のままなら少なくても今の様にはなっていなかったでしょう。アナタ達もそれ分かっていたから今回、追放したヤヨイさんに再び声をかけた。ちょっとはやり直そうとしたんでしょう?違いますか?」
「それは……」
「仮にそうだからといって今回の事がうやむやになるわけではありませんよ。自らの名誉や権力を振り翳し力を使って己の欲を他人に押し付けようとした事は決して許される事ではないっ!!ましてや、それがまるで英雄だからと、自分達だからと特別に許されると思ってたかを括っていたのなら言語道断!アナタ達にこの国の名誉であるSランクの称号を背負う資格はありませんわ!!」
アキラ達に厳しい言葉を浴びせるレッカ。アキラ達もそれにぐうの音も出なかった。
「さっきあの人、怒らないって言ってたのにめちゃくちゃ起こってるよ……」
アイツの鋭利な指摘にエプロンは。
「シーー。聞こえるで…。それ言ったら1番アカンやつや。私もそうは思うけど怒らないって言ったら決まって怒るもんなんや。日本語ってホンマややこしいわぁ〜……」
「でも話してる人は日本人じゃないですけどね……」
カモメの冷静な一言がエプロン達に深く突き刺さる。
「……でもアナタ達にまだ冒険者としての誇りと過ちをやり直す覚悟あるというのならきっとアナタ達はまたその資格を背負う事になると私は信じています」
「ギルドマスター……」
「とにかく今は反省する事ですね。そしてその全てを次に生かせばいいのです。失った物は取り返せなくてもまた新しく手に入れる事は不可能ではありませんよ」
「…………」
アキラ、シズカ、コハルその3人がこの後何かを喋ろうとする事はなかったがレッカの目から見る彼らの姿は少しだけ、初めて会った時の様な覚悟を決めた凛々しい姿勢と姿に見えたらしい。
「(あの時と同じですね……ならばきっとやり直せる。私もそう信じましょう)」
これは後の話だが、彼らは再び一度は剥奪されたSランクの資格を手に入れその背に背負う事となる。その時の姿は過去の姿と違ったという。見た目が変わったのかそれとも中身が変わったのか。いや、昔に戻っただけなのかもしれない。どうだったとしても、彼らは過去の偽りだった英雄から、民に愛される真の英雄となる事実は変わらない。そしてその栄光は長い歴史に名を刻むこととなる。ただし、そのきっかけとなった転移者の存在が歴史に刻まれる事はなかったという。
レッカは振り返りエプロン達の方を向く。
「お待たせしました。では改めて、参りましょうか」
こうしてエプロン達はレッカに案内されるがままギルド内の来客室に通されたのであった。
「どうぞお好きな場所にお座りください。今、お茶を用意させますので」
「お菓子も忘れないでよ!」
場を考えない大きな声でアイツが喋る。
「ふふっ。分かっておりますわ」
来客室はとても広く、高そうなインテリアが色々な場所に飾られていてオシャレに部屋を彩っている。
エプロン達は言われた通り各自椅子のある場所に好きな様に座っていく。
しばらくするとレッカの部下がお茶とお菓子を持ってやって来た。
「お待たせ致しました」
パッと見、お茶を持ってきてくれた彼女の姿は冒険者ギルドの職員というよりはメイドさんの様な格好をしている。
用意されたお茶やお菓子を配られた瞬間、とんでもない速さでたいらげてしまうアイツ。
「ご馳走様でした。あーー、美味しかった!」
それにつられるようにカモメ達も食べ始めていく。
「ちょ、オマエら。少しはマナーってものを考えたらどうや?……」
「いいえ、お気になさらず。構いませんわ。別に公式な場では無いのですから気楽に参りましょう。あ、良かったらおかわりもいかが?」
「いいの?」
「ええ。勿論ですわ」
「じゃあお願い!」
レッカは頷き部下に指示する。
「なんかすまんなぁ……ウチらこういう場にあんま慣れてなくて」
「だから気にしないでください。私がいいと言ってるんですからいいんですよ」
「そういうもんなんか?」
「そういうもんですわ」
「そうか…なら、」
エプロンもお言葉に甘えお茶会を楽しみ始める。
そして、ある程度お茶会を楽しんだ頃。
レッカは今回の目的へと進んでいく。
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