三十八話 堕纚愛/ダリア
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「勝者、アキラ様御一行！！」
「「「は？？？」」」
ユウリのまさかの宣言に驚きを隠せないエプロン達。
「なぁ、もう一回言ってくれへんか？なんか聞き間違いしたような気がして…。ヤヨイ達もそう思うよな？」
「はい。私も正直自分の耳を疑ってます……」
「構いませんよ。幾らでも答えて差し上げます。勝者、アキラ様御一行！！…これでよろしいでしょうか？」
「は？意味分からん……ちょっとウチらにも分かるように説明して貰おうか？」
「ですからこの決闘の勝者はアキラ様達だと言っているのです。お分かりになりました？」
「ふざけんな！！こんなのどう考えてもおかしいやろ！！！お前いい加減にせえよ…」
思わぬ宣言にエプロンはユウリに掴みかかる。
「離してください。既に決闘は先程の宣言で決着がついております。故にもう覆る事はありませんのでご理解ください」
「だから！それがおかしいって言ってるんやろうがっ！！この状況どう見たってウチらの勝ちに決まってるやろ！！お前の目は飾りか？その目凝らしてよーく見てみ！？」
「ええ、見てますし見てました。だから言ってるんです。勝者はアキラ様達だと」
「はぁ？ウチら3人の内立ってるのは1人。対して奴らは全員残らず伸びきってる。この状況から見ても勝ってるのはウチらに決まってるでしょうが！！」
エプロンの怒りのボルテージは上がり声も次第に大きくなっていく。
「うるさいですね……。勝負は決まったんですよ。いい加減にするのはそちらの方です」
「オマエな！！」
暴れ出そうとするエプロンを慌ててヤヨイが止めに入る。
「ダメです！！エプロンさん！！落ち着いて下さいっ！！！」
「ウッサイ！ヤヨイは黙っとき！」
「気持ちは分かりますが彼女を殴ったらそれこそお終いです！ですからここは一度離れて下さい……」
「！…………ッ。」
不本意ながらエプロンは手を離す。
「ヤヨイ、なんで止めた？」
エプロンの怒りは収まらないまま問いかける。
「…彼女がギルド職員だからです」
「それがどうした？」
「ギルドの掟で如何なる理由があれど職員に対して暴行行為を行ってはならない。そういう決まりがあるからです……」
「そんなの知るか！」
再びユウリの元へ行こうとするエプロンをヤヨイが止める。
「これはただの決まりでも掟でもありません！！これを破れば私達は完全にこの国から敵と見做される。…今やこのギルドの上にはホムラノ騎士団がいるんです。前に説明しましたよね？この国は六騎士団によって守られ管理されている。そのルールを破るって事は私達は国を守れる程の力を持ったその六騎士団全てを敵に回すって事なんですよ！！」
「…………」
「説明どうもありがとう」
ユウリはヤヨイに感謝する。
「アンタのためじゃない…….」
「そうですね。エプロンさんって仰いましたっけ？いいですか？この世界では強者が全て。その強者とは力だけではありません。知恵、権力、能力使えるものはなんでも使って思うがままにコントロールし、支配する事が出来る者を強者と呼ぶんです。それがこの世界の常識なんですよ」
「なんなんお前……」
「そういえばちゃんと自己紹介していませんでしたね。私、このギルドの副マスター兼六騎士団の一つ、ホムラノ騎士団副団長も勤めておりますユウリと申します。改めてよろしくお願い致します」
「だからなんやねん……偉いから何してもいいってそういう事か？」
「あら、結構お察しがいいんですね。その通りです」
「だから言っただろ……」
アキラやシズカ達がゆっくりと立ち上がる。
「俺達は負けない。俺達は必ず勝つってな！最初からそれは決まってたんだ……もう、諦めろ」
「ふざけんなぁっ！…そんなんできるわけないやろ。勝ったのはウチらや！お前らやない……あ！おいっ、女！」
エプロンはある事に気づいてキレながらだがユウリを指差す。
「女？……あ、私ですか。なんですか？そんな大声で騒いでみっともない」
「この決闘はお前らギルドが認めた正式な決闘て事でええんやろ？」
「ええ」
「正式な決闘やったからこそ見届け人が必要やった。そうだよな？」
「ですから私が…」
「お前は審判やろ。だからお前ちゃう。他にもいるだろ、あの男が言ってたみたいにこの決闘を楽しみに見ている奴らが大勢な」
「観衆だ……」
ヤヨイがそれに気付き声を出す。
「そう。こんな理不尽な結果にこれを見ていた皆さんが満足するわけがない！これが正式な決闘なら証拠さえあれば嘘の決着は無効に出来る。ちゃうか！？」
「……そうですね。確かに私達が嘘をつき決着を捻じ曲げたという証拠があるのならそれはやはり無効ですね」
「言ったな！」
「ええ。言いましたとも」
ユウリは何故か顔色１つ変えず淡々と答えていく。
「そんならウチらの証人はここにいる観衆全員や！！この人達全員連れて出るとこ出ようか？この人達がいればウチらの勝ちは証明出来る！」
「ふふふ……」
「ワハハハッ！！」
ユウリやアキラ達が突如として笑い出す。
「何がおかしい……」
「ふふっ。…いーや、スミマセン。どうしてこんな事も疑問に思わなかったのかと思って」
「疑問？」
「何か気づきません？この違和感、どう考えてもおかしいじゃないですか！！」
「それすらも気づかず俺達に勝ち誇るとは…哀れだな！そんなんだからお前らは負けるんだよ」
「…………っ！なんかしたな、お前ら？」
ようやくエプロンも奴らが言うその違和感に気づきはじめた。
「今更気づいたところでもう遅い。恥ずかしいだけだよ」
「まだ気づいてない方もいらっしゃるようですからお話致しましょう。その違和感が何なのか？……先程エプロンさんはここにいる戦いの一部始終を見ていた観衆達が私達が嘘をついている事を示す証人だと言った。こんな理不尽な決着に観衆達が納得する訳がないから。……ではなんで今のいままで観衆達話さず黙っているのでしょうか？本当にこの決着が納得言っていないと言うのならもっと騒ぎになってもおかしくはない。そう思いませんか？」
「確かに……言われてみれば変かも」
疑問に思ったヤヨイは観衆達を<絶対鑑定>の力で見てみる。
すると彼女の目には観衆達全員の頭上には<宣言>と書かれた印が見える。
「何これ？宣言？……」
「あら？アナタ、役立たずだと追放された割にこういうことは分かるんですね」
「私の特技ですから…そんな事よりこれどういう意味ですか？いや、答えなくても構いません。私が勝手にアナタを見ればいいだけの話ですね」
ヤヨイがユウリに対して<絶対鑑定>の力を使おうとした瞬間。
「その必要はありません。気になるのならちゃんと私の口から説明しますわ。私の能力<絶対宣言>の力をね」
「なんやそれ？」
「言葉通りの能力ですよ。私の宣言は絶対なんです。いかなる命令も私の宣言ならば言う事を聞かずにいられなくなる。つまり私の言葉には人を支配する力がある。お分かりになりました？」
「じゃあこの嫌な静まり具合もお前の仕業って事やな？」
「だからそう言ってるじゃないですか。私が先程、この決闘の決着を宣言した時点で観衆達はその宣言に従うようになった。つまり私の支配下にある。彼らは私の宣言に疑う事なく信じてそれに従い続ける。私がその宣言を撤回しない限りね。どうですか？私のチート能力ステキでしょ？」
「回りくどくてせこいだけやないか！そんな程度でイキがんな！」
「なっ！…」
「ついでに言えばこの能力の弱点は同郷の転生者や転移者には効かない。そして自分が好意を持っている人物にはその能力を行使することは出来ない。思った以上に弱点が目立ってめんどくさい能力ですね。私達には関係ないってことです」
<絶対鑑定>の力を使ったヤヨイが一言。
「だからウチらにはそれが効かなかったって事やな。それなら思ったより面倒やないかもな……」
「ですね」
「ちょっと！アンタ見るなって言ったのに見るなんて下品な女ね！！どうかしてるんじゃないの！？」
「見るななんて一言も言われてないわよ。必要ないと言われただけ。でも私からしたら必要なんだからそりゃあ見るでしょ？」
「見るわな」
「ですよね」
「2人揃って変な所で納得してるんじゃないわよ！！……まぁいいわ。見られたところでこの能力に支障はない。つまりアキラ様達の勝ちは揺るがないってことです！」
「……」
「どう？これで諦めがついたかしら？」
「いいや。寧ろ希望が見えて一安心や」
「なに？」
「色々言っても、要するにお前を倒せばその<絶対宣言>とやらも関係ないってことやろ。どんな強力な能力でも力でソイツを倒してねじ伏せればそれで終いや。…今度はウチらの番やからな！」
エプロンがユウリに攻撃を仕掛けようとする。
「あら、私がやられるわけないでしょ。「お前達、命をかけて私達を守りなさい！」」
ユウリの一言がこれを見ていた観衆達を動かす。
観衆達はエプロン達に様々な物を投げつけたり抱きついてきたりなど思い思いの方法でユウリを守ろうとする。
「いたっ！……わあっ！ナイフまで…。なんでこんな物騒なものが飛んでくるのよー！」
「退け！お前ら！おいっ！そこを退かんか！！…ちょっ、オッサンどこ触ってんだよ！離せってば！」
エプロン達は観衆達に邪魔されて思い通りに動く事が出来ない。
「いくら彼女達が強くても数には敵わない。まぁ、それでも彼らに倒す事は出来ないでしょうけど、それでも構いません。時間さえ稼いでくれればね。それではアキラ様。この勝利を確かなものにする為にギルドの方で最後のお手続きをお願い致します」
「ああ……。勿論だ。ユウリ、君のおかげで俺達の勝ちを確実の物に出来た。感謝するよ」
「そんな必要はありません。それに私は私で彼女達には少しだけ借りがあるんですよ。その為にも彼女達には苦しんでもらわなければ困るんです。あの方が楽に仕事を全う出来るようにね……」
ユウリ達は勝利を確定する為にギルドに入ろうとする。
「ふざけんなぁっ！！逃げんなぁって言ってるやろうが！！ッ！邪魔だ！道を開けんかい！」
エプロン達はなんとかしてそこを切り抜けユウリ達を止めようとするがそれも間に合わない。
その時。
「お黙りっ！！」
1人の女の声が街に鳴り響く。
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