三十二話 逃戯鑼/ニゲラ
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「それでは両者共宜しいですね?」
「ああ」
「ええ。勿論」
「楽勝だと思う」
息巻くアキラ達。
「…やるしかない!行くわよ、マケガオ!」
「うん!もう、めちゃくちゃだーー!」
2人が意気込む中いまだにアイツは何も発さずただただ奴らを笑顔で見ている。
「では……始めっ!!」
ユウリの掛け声と共に笛を鳴らし始まりの合図を鳴らす。
「マケガオ!一気に行くよ!」
「うん!先手必勝ってやつ?」
「それよそれ!」
合図と同時にドヤガオとマケガオが一気に前に飛び出す。
「いきなり飛び込んでくるとはいい度胸じゃないか。いいだろう。俺が相手をしてやる」
アキラがそれを受けるためにシズカ達より少し前へ出て受けて立つ。
だが、ドヤガオ達はそれを無視して後ろにいるシズカ達の前へ走り出す。
「なに?!」
「ふんっ。アンタが強いのは私らでも分かってる。だったら私達が相手するわけないでしょうが!それなら……」
「まだ可能性のある方を狙う!そういうことだよー」
「流石マケガオ。私の事分かってるじゃん!!」
「当たり前でしょ!」
「なら、せーので決めるよ!」
「うん!」
ドヤガオ達はシズカに狙いを定める。
「あら……初対面のくせに私も舐められたものね。ならお望み通り舐められてあげるわ」
シズカは身を守る素振りも見せずただ2人を見つめて受けて立つ。
「!!」
そんな様子に少し驚きを見せるドヤガオ達。
「……だったらそのままやられてよねっ!」
「「せーーのっ!!」」
飛び出した勢いのまま2人はシズカの顔面を狙って同時に殴る。
確実にその拳はサンドイッチの様に顔面に直撃した。
だが涼しい顔でシズカは微動だにせず立ち続けている。
それどころか……
「!!……イッタァ!!痛いっ!」
「……何これ、どうなってんの?……アンタ、本当に人間よね……」
2人の拳はまるで鋼鉄に打ち付け後のように赤く腫れ上がっていた。
2人があまりの痛さに動揺していると、シズカもまとめてコハルが放った巨大な火の球が3人を襲う。
「ウソっ!今度はなんなのよーー!!」
当たる瞬間、ドヤガオ達は寸前に距離を取り間一髪で火の球をかわす。
僅かに逃げ遅れたシズカは燃えあがりそのまま彼女を焼き尽くす。
「危なかった……」
「はぁ、はぁ……。でも助かったわ。何が起こったかはよく分からないし、巻き込まれた彼女には悪いけどお陰で1人減ったんだから!」
そして彼女を焼き尽くしていた炎が燃え尽きるとそこには、無傷で微笑むシズカの姿があった。
「残念ね。まだ3対3のままよ」
「…なんでそんな平気な顔でいられるのよ!ってかなんでまだアンタは生きてるのよ!!」
「私にとっては貴方達の拳も、全てを焼き尽くす炎もおんなじなの。つまり効かないってことよ。分かりやすいでしょ?」
「そんなのあり?」
「なしに決まってるでしょ……」
「でも、実際に!」
「分かってるわよ。もう……サイアク!!」
少し離れた場所からそれを見ていたエプロン達。
「おいっ!。えらい無茶苦茶な奴らやな……。ホンマにコイツら人間か?」
「この世界の常識から見ても人間離れしてるのは認めますが奴らはれっきとした人間ですよ。常識外れなチートスキルは持ってますけど……」
「じゃあ、さっきの奇跡みたいなやつも全部その能力のおかげってことか?」
「そうですよ。普通にはあり得ない奇跡を簡単に起こすのは転生者の専売特許ですから。ズルいのは変わりませんけど…」
「ヤヨイは奴らの持ってるスキルのこと知ってるんやろ?」
「ええ。2人のことなら完璧に」
「…なら早速説明頼むわ」
「かしこまりました。まずは何故即死間違いなしの攻撃を受けたのにも関わらず生きていたのか?それをご説明しましょう。普通じゃあり得ないそんな奇跡を可能にするのがシズカが持っている固有スキル。<絶対防御>です」
「なんや、その四字熟語みたいな名前の能力は?」
「能力はその名通り完全無敵の鉄壁な体を手に入れることができる。彼女が言った通り本当に分かりやすい能力なんです」
「完全無敵って……最強やんか!」
「ええ。防御だけで言ったら彼女を勝るものはいないと思います。だからといって弱点がないというわけでもありません。例えばその能力を攻撃として使う事はできないとか、対処を必ず目視していて意識していなければ防げないとか。能力の発動には色々と条件があるみたいなんです」
「成る程な。それだから防御の要か」
「でもその弱点を上手く補うのがさっき火の球で仲間を遠慮なく焼き尽くそうとした張本人のコハルです」
「ソイツもチート持ちなんやろ」
「はい。コハルの持つ固有スキルの名は<絶対支援>。この世に存在するありとあらゆる魔法の知識とそれを使えるだけの魔力量を持つのがその能力です。仲間を支援する補助魔法はもちろん、候補から攻撃も可能な魔法も放てる便利な支援職ですよ」
「なんでもってほんまになんでもか?」
「なんでもです。それこそ、死者を生き返らせることだって彼女には可能だってことです。ただ当然のようにそんな便利な力にもデメリットはあって、コハルが魔法を放つためには魔力の消費のほかに自らの体力も削らなければいけないということ。蘇生などの使用する魔法が強力な分だけ代償も大きいので連発とかは出来ません」
「あの子、見た目も他の奴らと比べて幼く見えるしあまり体力があるようにも見えんな」
「体力に自信がないのは見た目通りですけど、幼く見えるのは魔法のお陰ですよ」
「は?それってつまり、」
「ええ。魔法で無理矢理若作りしてるってことです」
「ホンマか?はぁ……人は見た目で判断しちゃいけないってホントやな〜」
「私も鑑定の力で初めてそれを知った時は大変驚きました。……それ以来むやみやたらに鑑定のスキルを使わないって自分で決めました。知らない方がいいこともあるって身をもって知りましたから」
「なぁ……そんなに言うならあの子のホンマの年齢っていくつなん?」
「…知りたいですか?」
「知りたい。小声でええ、ひっそりとな……」
「なら特別ですよ……。…………」
「ウソやろ!!ホンマもんのオバハンやないか!!!」
「シーーっ!!エプロンさん、声が大きいですよ!」
気のせいかあちらの方から冷たい視線を感じる気もする……。
「エプロンさん…今だけはあっちの方見ちゃだめですよ……」
「分かっとる……でも驚いたわ、まさかそんなに歳とってたとはな〜」
「だーから、ダメですって!…ほら見てる、見てますよ!」
「だから分かっとるって。わざとや」
「だったらやめてくださいよ。コハルが怒ってこっちに魔法でも撃ってきたらどうするんですか〜!」
「大丈夫やって。少なくてもああやって戦ってる内は何言っても平気や」
「じゃあ、戦いが終わって怒ってやってきたらどうするんですか〜!そうなったら一大事ですよ!」
「それも平気や。なんせ勝つのはウチらやからなぁ。戦いが終わった時にはあの子達にそんな元気は残っとらんよ」
「なんでそんな自信たっぷりで言い切れるんですか?仲間の皆さんを信じてるのは分かってますけど、彼女達の強さも分かりましたよね?それだけ面倒で規格外な奴らを相手するんです。そう簡単にはいきませんよ……」
「いいや、そんなことない!さっきのヤヨイの話を聞いて尚のこと自信もって言えるようになったわ!なんせウチらにはアイツがおるからなぁ……」
「アイツさんってそんなにお強いんですか?」
「強いは強い。それも凶暴なほどな。でも今回はそれだけやない。ウチも驚きや。アイツに持たせたアレがこうも奴らにハマるとはな……」
ニヤニヤと笑いだすエプロン。
「??」
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