二十八話 斬黎ノ美/ザクロ
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「だけどお断りよ。私はもうアナタ達と一緒にいる事はない」
ヤヨイはアキラの差し出した手を払う。
「…でも、その気持ちだけはちゃんと受け取らせてもらうね。正直、嬉しくなかったわけじゃないから…」
「じゃあなんで!?」
先程まで冷静に話していたアキラだったが徐々に声が大きくなり感情が出てくるようになってきた。
「本当に分からないの?」
「ああ!分からない!」
「あのさ、後悔も反省したのは十分に伝わったけどや大事なことがひとつだけ抜けてるんじゃない?」
「?なんだそれ?ここまで俺達に言わせて後は何が足りないって言うんだ!?…シズカ達は分かるか?」
「さぁ?単純にまだ私達の事が気に入らなくていい加減な事を言ってるだけなんじゃないの?」
「ただのワガママだと思う」
「そうなのか?」
「そう…なわけないでしょ!!これじゃ本当に変わったのかも怪しくくなってきたわね。…まぁ、いいわ。どうしても分からないって言うなら教えてあげる。2度は言わない。本当に変わったっていうならこの理由なら理解も納得できるわよね?」
「……」
「アナタ達、さっきから口から出るのは後悔してるとか反省してるとかそんな事だらけ。そんなんで私がアナタ達の事を許せると思う?本当に反省してて変わったって言うのなら、ごめんなさいの一言ぐらい言ってみなさいよ!!」
「……」
「それにもうひとつ。アナタ達が私を追放したのがよくあるテンプレならその後反省した彼らからの誘いを断るのもテンプレのうちよ。やるなら最後まで王道を貫かせてもらうわ!」
「何言ってる?!ちゃんと謝ったじゃないか!!」
「そうよ!私達の気持ちはちゃんと伝わったんでしょう?ならそれでいいじゃない!」
「私達はちゃんと誠意を示した。もう充分」
「それよそれ。そういうところはあの頃から全く変わってないのね。他人の意見には耳も貸さない感じ、ほーんっと嫌い。…気持ちで伝わる前にまずはちゃんと言葉で伝えなさいよ!それも出来ない奴らとまた一緒にいたいなんて思えるわけないでしょ!!」
「ぐぅぅ…………」
「ぐぅぅ……なんて言う人本当にいるんだねー?」
「ウチも同じ事思ったわ。いるところにはいるもんやなーー」
「…ここまで俺達が誠意を見せたというのになんなんだその態度は!!」
「本当に誠意がある奴はね、そう言う事を自分からは言わないの」
「黙れ!この街の英雄であり、この街唯一のSランク冒険者である俺達に元仲間の分際でそんな態度とってもいいと思ってるのか!!」
「だから、そういうことは自分で言わないでよ…。仲間だったのが恥ずかしくなるじゃん……」
「いい加減にしろよ。話させておけばペラペラと……その減らず口黙らせてやる!」
アキラは剣を抜きヤヨイに向ける。
「いいの?こんな街中で、しかも色んな人が見てる中でこんなことしちゃって。私は元冒険者ってだけのただの平民よ」
「いいんだよ。俺達は街の英雄だからな。何をしても許される。それが俺達Sランク冒険者の特権なのさー!!そんな俺達の事を文句言う奴なんて誰もいなければ楯突く奴もいない。仮にいたとしても俺達がソイツを放っとかない……」
「もうそれじゃあ、敵役のセリフね……それもタチの悪い退場キャラみたいな感じでやっぱり嫌いだわ〜」
「いい加減黙ってろ!!」
アキラは怒りに身を任せてヤヨイを切りつけようとした瞬間!
「ストップ!!」
エプロンが間に入りアキラの攻撃をやめさせる。
「なっ、邪魔だっ!!何をしてる?そこを退けぇっ!!」
「そこまでや!ストップってのが聞こえへんのか!」
「関西弁?……お前まさか、」
「そういうことや。分かったらまずはその物騒なモンしまって落ち着いて話そうや」
「……」
エプロンの問いかけにアキラは少しだけ落ち着きを取り戻し取り出した剣をしまう。
「…さっきから気になってはいたんだ。ヤヨイの側にいるだけのやけに親しげでめんどくさそうな奴らは一体なんなのかと。もしかしてお前達も元日本人なのか?」
「元やない。今もれっきとした日本人や。それに第一印象でめんどくさそうって大分失礼な奴やな」
「…転生者じゃないのか?」
「だからそうや。ウチらはアンタらが言うとこの転移者ってやつらしい。ほら、見た目で分かるやろ。明らかに容姿がお前らやこの世界の奴らとは違うやろ?お前の目は節穴か?」
「確かに言われてみれば……。とにかく話は分かった。で、なんで俺達の邪魔をした?理由がちゃんとあってなんだろうな」
「いきなり本題かいな。随分せっかちな奴やな〜。もうちょっと楽しめると思ったんやけどまぁ仕方ないか。ならこっちも早速言わせてもらうわ。ヤヨイはもうウチらの仲間や。誰にも渡さへん!」
「!……どういう事だ?ヤヨイ答えろ!」
「どういう事もなにもこの人の言った通り。ありがたいことに私の居場所はもうあるのよ。だから、尚更アナタ達と一緒に行く事はない!これなら納得できる?」
「出来るわけないだろう!!お前、俺達を裏切ったのか?!」
「はぁぁ??裏切ったも何も私とアナタ達の関係は3年前に終わったはずでしょう?それなら私が誰と何をしてようが勝手だし不思議じゃないでしょう。…思い通りに行かないからって逆ギレしないでよね!」
「そういう事を言ってるんじゃない!!もっと色々あるだろ?お前だって未練とか俺達の事が忘れられなかったからここに来たんじゃないのか?そうなんだろ?だってさっきもそんなようなことを言っていたじゃないか!それなのにその態度はなんなんだ!立派な裏切りだろ!」
「呆れた…。よく言うわね。私は裏切ってなんかいないしそもそも最初に私を裏切ったのはアナタ達の方でしょ。それをどの口が言ってんのよ!。後さ、私がここに来たのは未練があったからなんかじゃない。アナタ達の顔を見てちゃんとお別れをしたかったからよ。もう私とアナタ達は無関係だってちゃんと自分自身で証明したかったの。ただそれだけ…でもちゃんとそれが出来るかるか不安だった。だから皆さんについてきてもらっちゃったけど」
「なるほどな。そういう事やったんか。実はウチも内心ちょっとは不安やったんやで?」
「なんでですか?」
「いや2人の会話を聞いてる感じ、なんかどっちつかずの含みのある言い方が多かったから、もしかしたら多少は未練みたいなんもあるんかなーって」
「そろそろこれも慣れてください」
「え?」
「私の癖。前に説明しましたよね?」
「癖……。ああ!そういうことか!そう言えばそうやったなぁ!言ってた、言ってた!。意味もなく含みを持たせた言い方をするのがヤヨイの喋りの癖やったな」
「そういうことです。前にも言いましたけど私は本当にコイツらに未練なんかこれっぽっちもありませんからぁ!こうやって会うのもこれが最後です!」
アキラ達を指差しながらヤヨイは高らかに宣言する。
「ふざけるなぁっ!!」
「それはこっちのセリフや。これでもアンタ等ウチらよりも長い時間ヤヨイと一緒にいたんやろ。それなのにヤヨイのクセも理解せず振り回されてるようじゃもう無理やろ。いい加減諦めろや」
「……諦められるわけないだろ」
「なんでや?なんでそこまでヤヨイにこだわる?…アンタらヤヨイを調子に乗って追放した後もそこそこ上手くやっていけたんやろ?現に自分でも言ってたやん。俺達は英雄だって。その英雄様がどうして3年も経った後にわざわざここまでしてヤヨイを連れ戻そうとする?」
「それはだな……」
「待ちい。みなまで言わんでも分かるわ。どうせ、ヤヨイの能力とか存在の大切さに今更気づいたとかそんなんやろ?」
「違う!」
「え!?」
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