二十六話 墓怪/ボケ
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「でもヤヨイ、用がちゃんと決まってたんならわざわざ秘密にして嘘つく必要もなかったんちゃうか?別に隠す事でもちゃうし」
「それは……ちょっと言いづらかったってのもありますけど、でも1番はその方が面白いからですよ!!」
罪悪感の欠片もない満面な笑顔で微笑む。
それを微笑み返しながらエプロンはヤヨイの頭を軽く叩く。
「あんまり調子のらんどいたほうがええと思うで?」
「はい。以降気をつけます……」
「あの!」
今まで気配も感じさせず声も発さなかった1人の女が声を発した。
「!どうした?カモメ!いきなりでびっくりしたやんかー…あー心臓に悪いわー」
「…エプロンさんもさっきご自身で仰ってましたけど私達がこれに付き合う必要なんであるんですかー?百歩譲ってなんだか仲の良さそうなエプロンさんとかは分かるとして殆ど喋ったこともない私までついて行く必要はありませんよね?」
「そんな冷たいこと言うなって…ええやん。折角ここまで来ちゃったんやからヤヨイの頼み付き合ってやろうよ。な!」
ノリノリで肩を組みアピールするが頑なに拒否反応を示すカモメ。
「嫌ですよ。なんで私まで……」
「どうしたん、そんなピリピリして…カモメらしくないで」
「……かぶってるんですよ」
「え?……」
「だから、被ってるんですよ!ヤヨイと私のキャラが!!」
「…………はあぁぁ!?そんなことでか!?」
「そんな事とは失礼な!いいですか?私みたいな喧嘩も強くない人間がなんとか喧嘩が強い皆さんの中でも浮かないように情報屋と言う立場を手に入れて今までやって来たんです。それなのに!それなのにですよ。ボコボコにされて必死な思いで学校に戻ってきたのに、戻って来たらいつの間にかやって来た新キャラに私の立場を取られてるんですよー。まぁ、びっくりしましたぁ!」
大きな声で捲し立てながらヤヨイに対して募る思いを冒険者ギルドの手前でぶちまける。
「分かったから落ち着きって。誰もカモメの仕事を奪ったなんて思ってないって」
「だったら余計問題ですよ!悪意のない嫌がらせほど人を傷つけるものはないんですからね。…まぁ、この世界においては、つい最近日本からやって来た私がこの世界の知識において彼女に負けるのはまぁ、しょうがないとして」
「そうや。それもみんな分かってるから何も心配する事はないって」
「情報だけじゃありませんよ。私と違ってヤヨイは喧嘩とか出来るわけ?戦うのは自信あるんでしょうね?」
「いや、そういうのは全然……。なんの役にも立たないと思います…」
自信なさげに答えるヤヨイ。
「ほら、私とそれも被ってるぅ!!」
「偶然やって。喧嘩が苦手とかそんな奴の方が普通に考えて多いに決まってるやろ?どうしたんや、なんか悪い夢でも見たんか?」
「あれが本当に悪い夢だったら私も嬉しいんですけどね……」
「……カモメ?」
雰囲気がかわる。
「目の前でカカシが殺されて、私はそれを見てるだけ。何もできなかった。私がもっと喧嘩強ければカカシに全部任せっきりなんて事もなかった。そしたら、もしかしたら今もカカシは生きてるかもしれない。そう思う事ばかり」
「思い込みすぎやって……」
「分かってます。カカシはそんなの望んでない。それにたとえ私が強くてもカカシが敵わなかった相手に2人同士で挑んでも結果は多分変わらないとも思います。過去を振り返ったところでカカシが帰ってくるわけじゃない。だからこそカカシの生き様だけでも無駄にしないように私も得意分野だけでも頑張ろうって。もっと役に立ちたいって。保健室のベッドの上で思いました……でも、起きてみたらこの有様ですよ!あんなの便利なものも作れて活躍してる姿を見せられたらね、やる気だってなくなりますよ!役に立つどころか私はもうお役御免。ただの役立たずですよー!なんですか、追放された彼女を救ったら今度は私が追放される番なんですかーー!」
「分かったからええ加減にせえ!泣いたり怒ったり忙しい子ね…そんな事ばっか言ってもホンマは自分でも分かってるでしょ。誰もお前に対してそんな事思ってへんことくらい。……あのな、それともウチらがそんな事で仲間を役立たずだって見捨てるとでも思うとるんか!?」
「それは……」
「あぁ?!」
「思いません……」
「やろ!だったらもっとウチらの事を信用してくれてもええやろ。…あと、ウチの奴らは皆自分に正直になれない奴が多すぎなんよ。恥ずかしがりやばっかりでホンマに大変や」
「そうですよ。私から言わせれば、あれだけよく知ってる異世界なのにテンプレ通り目立たない私を見捨てて多少は後悔してるかもしれない最低な奴らと皆さんを一緒にしちゃいけませんよ!」
「ありがと…でもあんまりヤヨイにだけは言われたくないかな?」
「えー……」
「私はまだ、ヤヨイの事を認めわけじゃないから」
「カモメ……」
「でも、さっきみたいな事はもう言いませんし思いません。皆さんがまだ私の事を必要として信じてくれてるってさっきのエプロンさんの話を聞いて勝手に思うことにしましたから。今まで通り好き勝手に自分のやれるだけの事をやれるだけ頑張りますよ」
「カモメは自由気まま。そういう生き物や。それでええ。どう、今のちょっと上手くない?」
「15点」
「えーー、嘘やろ。流石に低すぎん?」
カモメの想いは叫びに変わり、そしてやがてカモメの癇癪は満足と共に勝手に落ち着きを見せた。
そんなやりとりをおおっぴらに公衆の面前でしていると、背後から声をかけられる。
「テンプレ通りの最低な奴ってもしかして俺達の事か?」
声がした方を見てみるとそこには豪華な装備と強気な立ち振る舞いをした3人の冒険者らしき男女がいた。
「アキラ……」
「久しぶりだな。元気そうで何よりだよ」
転生者 Sランク冒険者 アキラ
「ほーんと。その様子が見れて私も安心したわ」
転生者 Sランク冒険者 シズカ
「相変わらず声は大きいけどね」
転生者 Sランク冒険者 コハル
「それはヤヨイが大きいんじゃなくてコハルの声が小さいのよ」
「そんなことないょ……」
「ほら!それよそれ」
「シズカやコハルの関係性も変わらないみたいね。こっちもそれが見れて安心したよ」
「ありがとう。…お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞じゃないよ。嘘をつくほど私はあなた達に未練なんてないもの」
「言うようになったじゃん!」
「それはどうも……」
「やめないか、2人とも。みんな見てる」
少し前から周囲は私達の騒ぎに聞き耳を立てていたようで、有名人なアキラ達も関わって来た事で私達の周りには人だかりができている。
「それにここじゃギルドに用がある人の迷惑になる。せっかくだから話をするのは場所を変えてからにしないか?落ち着いた場所の方がヤヨイもいいだろ?」
「いやだ。私はここがいい。別に聞かれて困るような話をするわけじゃないでしょ?」
「それはそうだが…迷惑になったらそれどころじゃないだろ」
「だったらここでもいいでしょ。それに有名なSランク冒険者様が話してるんだからこんなタイミングで用事があってここに来る人なんていないでしょ。この街にいる人達は皆あなた達の事が大好きだもん。アナタ達の邪魔なんかしないわよ」
「ヤヨイ…お前、変わったんだな」
「私も生きていくために色々あったのよ。それがこの結果。意外と悪くないでしょ…」
かつての仲間達と会話するヤヨイ。
そんな空気感に飲み込まれてしまい少し居場所の無さを感じるエプロン達は。
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