二十五話 螺辞華/ネジバナ
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バルキュリア王国 冒険者ギルド付近にて
「ここか?ヤヨイが連れて来たかった場所ってのは」
「はい。そうです!ここが王国随一の超大手ギルド、ハテナキボウケンシャです!!ここで皆さんは冒険者として旅立つのです!」
この国唯一の冒険者ギルドの前までに来たエプロン達御一行。
「…ほんとうにウチらをここに連れて行きたかったん?」
「?…そうですよ?どうしました?」
「あのな、いつウチらの誰かが冒険者になりたいって言ったか?異世界生活を存分に冒険者として楽しみたいって誰か言ったか?」
「いいえ。でも、せっかくですし。それに異世界ですし…」
「イヤや。ウチは帰る!」
「え!?な、なんでですか?!」
「なんでってウチらは別に冒険者なんかに興味はないねん。……楽しい事をしに行くって言ったからアイツや後輩達も一緒に来たっていうのに散々やわ」
「だから、楽しいことしに行くなんて言ってませんから……でもせっかく来たんですからギルドの中ぐらい覗いてみません?色々と日本には無いような変わった物とかが見れて発見もあるかもしれませんよ」
「ええよ…そんなん興味ないわ」
「いや、そんな事言わずに。あっ、じゃあ、冒険者にならなくてもいいですから一応登録だけしましょうよ。ギルドカードを持っていれば何かあった時に証明できる身分証にもなりますから!」
「身分証?」
「そうです。ね、この世界で生きてくなら身分証は必要でしょう?最低ランクなら試験も必要事項を書くだけで殆どありませんから簡単に終わりますよ。本当は遥さんや他の皆さんにも持っていただきたかったんですけど、来られなかったので今日は皆さんだけでも是非!」
「えぇ……必要になったら身分証を持ってるヤヨイに助けてもらうからウチらはいらんよー。そういう時のためにヤヨイがおるんやろ?それになんでどうしてもウチらに身分証を作らせたいねん?…まるで私達に帰ってほしくないみたいにさ」
「えっ、だって必要じゃないですか?これがあればトラブルがあった時も比較的穏便に済みますし、年会費とかも一切かからずいい事しかありませんから皆さんにも持ってて欲しいなぁ〜って思ってただけですよ」
「ホンマに?……」
「ええ、勿論です…」
「嘘やな」
「なんでですか?!私嘘なんてついてませんよ!」
「いやいや、ついてるやろ?」
「だからついてませんって!」
「じゃあ、なにを隠してるん?」
「えっ!……いゃ〜何も隠してませんよ〜。そんな事どうでもいいじゃないですか〜」
急に目が泳ぎだし挙動不審になるヤヨイ。
「いいやバレバレや。…どうしてもって言うんならその隠し事ぐらい打ち明けてもらわんとな〜ウチらも従えへんわ」
「え……」
「なぁアイツもそう思うやろ?」
「うん!ヤヨイちゃん、隠し事はダメだよ〜〜」
アイツの絵に描いたような不気味な笑顔がヤヨイに迫る。
「…………分っかりましたぁ!正直に言いますよ!それでいいんでしょ!」
「そうや、それでいいんよ」
「実はこのギルドにさっき話した転生者3人がもうすぐ来るんです」
「ヤヨイの昔の仲間か」
「ええ。そして私を追放した人達です」
「で、それがどうしたん?」
「昨日、彼らから私宛に手紙が来まして話がしたいから会いたいって連絡が来たんです」
「ふーん。良かったやないか。ようやく時間が経ってヤヨイの大切さが分かったんちゃう?」
「そうだとしても都合良すぎですよ!離れてから3年以上経ってるんですよ。流石にもう彼らに未練なありませんし今さら謝られた所で戻る事はありませんよ」
「ならどうして来たん?そんなに気持ちがハッキリしてるならわざわざ来る必要もなかったのに」
「それは…なんででしょうね?……」
「はぁ?」
「いや、言われてみたらその通りなんですけど、何故か会ってもいいかなぁーって思っちゃったんですよね。興味なんかもう全く無いのに。不思議だー」
「だとしてもウチらまで付き合わせる必要はないやん」
「いてくれたら心強いじゃないですか。皆さんならなんかあってもなんとかしてくれそうですし…心強いんで」
「なんやそれ!ウチらはヤヨイの護衛か!?」
「スミマセンっ!でもそこをなんとかお願いします!私の3年ぶりの再会に付き合ってください!……ダメですか?」
「…分かった。しゃあないな。それによく考えたら結構面白そうやからな。ええよ。特別にウチらが付き合ってやるわ。その代わり帰りになんか美味しい物でもご馳走する事が条件や。アイツはよく食うでー。それでもええか?」
「そのくらいは想定内です。美味しいステーキっぽいお肉が食べれるお店、既に予約してますから楽しみにしててください!」
「なら交渉成立や。お前ら良かったなぁ、ヤヨイの奢りで肉が食えるでーー」
「わーーーー!!」
喜ぶアイツ。
そんな様子を見ながらとある事を疑問に思うドヤガオとマケガオ。
「ねぇ、私達必要かな?」
「さぁね?いきなり教室に来たと思ったらエプロンさんにここまで強引に連れて来られてこの状態だからね。でも、よかったんじゃない?威薔薇ノ棘の2人がいれば大事になってもなんとかしてくれると思うし安全でしょ」
「それもそっか」
「そういうこと。だから、ラクして肉を食えてラッキーくらいに私達は思っておこう。私達はただ皆さんについていけばいいだけなんだからさ」
「ラクな仕事だね!」
「うん。(なんかめちゃくちゃイヤな予感がするけど気のせいだよね?)」
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