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二十四話 月栩紫/ツクシ

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

自分で話しながら気を落とすヤヨイに対して遥は問いかける。


「でも後悔してないんでしょ?」

「……」


「後悔してたら彼らに対して復讐でもなんでも上手い事やってるでしょ。ヤヨイだってチートスキル?ってやつを持ってるんだから。それに頭脳の要だったんでしょ?。頭が良くて彼らを恨んでるならいくらでも方法は思いついた筈。違う?」

「ええ。その通りです。後悔なんかしてませんよ。するわけがない!後悔なんかしたらアイツらが上だって自分で認めてるみたいなものなんですから、そんなのするわけがない!」

「そのいきよ」


「でも彼らには感謝もしてますよ。前も言いましたけど追放してくれたおかげで皆さんに出会えましたから」

「だったらもうちょっと早く転生してた事ウチらに教えてくれても良かったんちゃう?ウチらだって似たようなもんなんやから別にわざわざ隠す事でもないやろ」


「それは……その方が面白いと思ったからです」

「なんやて?」


「私、昔からのクセで自分が面白いと思った事は意味もなく隠してみたくなったり、伏線でもないのに脹らみを持たせた言い方をしてみたり。無駄な事なのは自分でも分かってるんですけどその方が楽しいし面白いと思いません?私、ネタバレとかくらいたくないタイプなんで…」


「遥、やっぱりこの子変わってるわ…」

「別にいいじゃない。これも個性よ。それに個性は理解されないくらいが丁度いい。知ってるでしょ?」


「なら、ヤヨイは主人公の器って事やな」

「なんでそうなるのよ…」

「そうですよ…それは流石に言い過ぎです」


「言い過ぎちゃうよ。遥とヤヨイはちょっと似てるもん。面白いとか楽しいを基準に動くヤツは大体主人公って相場が決まってるんやから。でも今回の場合、主人公はヤヨイじゃなくて遥やけどな。みんなもそれはそう思うやろ?」


ヤヨイ含め後全員、至極当然のような顔で頷く。


「え…やめてよ。なわけないでしょ…私もそこまでは思ってないから。お願いだからそんな風に見ないで……」


顔をほんのり赤くして照れる遥。


遥は照れる自分を隠すべく急いで話題を変えようとする。


「ねぇ、そういえばさ、ヤヨイはなんで日本人なのに漢字が読めなかったわけ?あの当て字だってアニメやマンガを読んでたなら少しくらい見た事だってあったでしょ?難しい漢字だってわけでもなかったし」

「やっぱり照れてるんですね?」

「照れてないわよ。…いいから答えて」


「はい。この世界は皆さんが来たことで世界の言語は日本語に変わりました。私達が気づかない間に文字も言葉も全て日本語が当たり前になった。でも不思議な事に当たり前になったのはひらがなとカタカナだけ。漢字だけはこの世界には存在しない言語なんです。前世の記憶が辛うじて残ってる私は、読める文字もありますけど前世の頃と比べれば読める漢字は恐らく半分以下でしょう。漢字がないこの世界に長く住んでいたら読めなくもなりますって。

後、ヤンキーの皆さんならではの当て字やあだ名で呼ぶ事が分からなかったのは前世の私はそれとは無関係の生活を送っていたから。記憶にある限り、その手のテーマの漫画やアニメも見た事はありません。正直、ヤンキーってもの自体も噂程度でしか聞いたことがなくて皆さんに出会うまではその存在も忘れていました。これが遥さんの疑問に対しての答えです。…少しは落ち着きました?」


「私はずっと落ち着いてるわよ!…もう、」


まだ少し照れてるらしい。


「でも、これでようやくスッキリはしたかな。今までずっと引っかかってたから」

「ならよかったです」

「それにしても、偉く饒舌に喋るようになったなぁ〜。少し前までのヤヨイはこんなんちゃうかったのにな。これが素のヤヨイって事か」


「そういうことや」

「!関西弁…まさか、アンタ?」


「ええ。ウチの前世は生まれ育ちも大阪や」

「げっ!…こんな所に本物が……」


「沙莉、怒られるかもね。だから、早いところエセ関西弁はやめた方がいいって言ったじゃん」

「そんな怖いこと言わないでよ〜〜。私だって結構内心ビクビクしてるんだから!」


遥の指摘に対して普段の共通語で必死になって答えるエプロン。


「大丈夫ですよ。私、そんな事じゃ怒りませんから」

「本当に?」


「本当ですよ。安心してください。私の前世、通ってた高校は東京でしたから普段は私だって普通に共通語を喋ってましたし、まぁ、ちょっと関西弁のぎこちなさは感じましたけど…でも怒ってませんから。別にもう私は関西人でもなければ日本人でもありません。自分の国の言語なんです、好きに喋ってくださって構いませんよ。とにかく私は気にしませんので」

「…ホンマに?」


「ホンマ」

「良かったぁ…。これで数少ないウチの個性が無くならずに済んだわーー。ホンマありがとうな、ヤヨイ」

「いいえ。どういたしまして」


「ヤヨイはさ、日本人だった前世の頃はどんな名前だったの?」


遥は問いかける。


「変わらず弥生でしたよ」

「転生してもそこは変わらないんだ…」


「不思議なんですけど、私以外の転生者も皆名前だけは変わってないみたいなんです。でもお陰でそれが転生者だってことを見分ける鍵にもなるんですよ。日本人らしい名前でこの世界の人間の容姿をしていたら10割転生者だと思っていいと思います。私達もそれで転生者達を集めてパーティーを組みましたから」


「えらく分かりやすい目印やな。となるとヒロシとかって名前のヤツがこの世界におったらソイツは転生者って事やろ?」


「そういう事です。間違いありませんよ。この世界の人間の名前の在り方と日本人の名前の在り方は根本的に違いますから」


「でも、転生者の前世がキラキラネームみたいなヤツだったら話は変わるんじゃない?」

「そやな。そうなったら見分けるのは難関やで…。例えばキララとかどっちにいてもおかしくなさそうな名前やもんな〜」


「キラキラネーム…そんなのもありましたね。久々に思い出しましたよ。それ」

「聞いといてアレだけど、そんなので悩む必要もないんだけどね。別に転生者を探すことが目的じゃないんだから。てか、そもそも今の私達に目的なんかないし、そもそも必要ないんだから。気にするだけ無駄よ。時間が勿体無いわ」

「そりゃ、そうや。ウチらは常に行き当たりばったり精神だけで今までやってきたからな。今更関係ないわ」


「でしたら皆さん!せっかくですから目的作りません?」


ヤヨイは声を上げて遥達に問いかける。


「目的?なくていいわよ、そんなの。さっき言ったでしょ?私達にはそんなの必要ないんだから」

「いや、でもこの世界で生きてくなら絶対に必要になってくる物がある筈です。目的とかは別としてもそれがなきゃこの先困る事もあるかもしれませんし…」


「必要なもの?」


嫌々答える遥。


「ええ。きっとこの世界で生きていくために必要不可欠な物です。仮にそれが目的にならなくても構いませんから、一度一緒に街に行きません?」


何とか嫌がる遥達を説得しようとするヤヨイ。


「…………なら、エプロン行ってきて」

「えーーー、ウチかいな!…」


「他の子達も連れて行っていいからさ、おねがい」

「……どうしてもか?」


「うん。ずっと隠していた事をヤヨイは話して正真正銘私達の仲間になったんだから、仲間の頼みに付き合ってあげて?」

「…だったら遥は行かへんの?仲間って言うなら尚更、遥も一緒に行くべきちゃうの?」


「私は……お昼寝で忙しいからパス。アシュラ、3時間経ったら一度起こして。お腹空くと思うから…」


「分かりました。おやすみなさい、部長」

「うん。おやすみ」


アイマスクをつけて部室内のソファーに寝そべり速攻で眠りにつく遥。


「はぁ……仕方ないやっちゃなぁ。なら言われた通りウチが行くしないか」

「いつもこんな感じなんですか、遥さんって」


「まぁな。でも、遥は遥で色々と大変やねん。悪く思わんといてあげて。まぁ、自分を維持する為には夢見ることも必要ってことや」

「?…どういう意味ですか?」


「気にせんでええんよ。ウチらにとっては関係ない事やから。そんな事よりほな行こうか。いい所に連れてて行ってくれるんやろ?それならそれで楽しもか!」

「あの、いい所なんて私は一言も言ってませんよ」

「え、そうなん?……」

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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