二十二話 舞薔嚠弟婀/ブバルディア
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数日後。
「大変です、大変ですよー!!」
慌ててヤヨイが部室に駆け込んでくる。
「どうしたんや、そんな慌てて。生き急いでもいい事なんかないんだからもうちょっとゆっくり生きいや」
「エプロンさん!そんな事言ってる場合じゃないんですよ!もしかしたらまたとんでもないことになってるかも知れないんですから!」
「なんの話や?」
「皆さん、この前何のために街に行って誰と戦ったか覚えてますよね?」
「はぁ?」
「え、まさか……覚えてないんですか?」
「何言ってんの?…覚えてないわけないやろ!ちょっと前の話やろ。忘れるわけないわ。オジョウを助けにウチと遥が街に乗り込んだんやから。ダイチノ騎士団やったけ?そこら辺はあんまりよく覚えてへんけどソイツらと戦ったんやで。流石にそのくらいのことは忘れへんよー。まさか、ウチらの事年寄り扱いしてる?」
「いやいや、そんなわけないじゃないですか。確かに今の歳は私の方が少しだけ若いですけどそんな変わらないんですからそうは思いませんよ。でもよかったぁ…という事は皆さんも覚えてらっしゃるんですよね?」
他の皆も当然のように頷く。
「はぁ…本当によかったぁ。これでひと安心ですよ。話が通じてよかったぁ!!」
「一体どうしたん。何があったん?まるで怖い事でもあったみたいに…」
「実はですね、ダイチノ騎士団がこの世界からいなくなったんです!」
「…それがどうしたん?なんか問題でも?」
「なんでそんな冷静にいられるんですか!いなくなったんですよ。街の人達の記憶からも歴史からもなかった事になっちゃってるんですよ!もっと驚いてください!」
「ふーーん。、、はぁ?!!それどういう事や!!」
「私だってよく分かりませんよ!今日、街に行ってみたらいつもと様子が違くて調べてみたらこんな事になっちゃってるんですから。何故かダイチノ騎士団がいた場所にはホムラノ騎士団が平然の様にいて仕事をしているんですよ。まぁ、ダイチノ騎士団の奴らと違ってホムラの人達は礼儀はなってるし困ってたらちゃんと助けてくれるし、いい事ばかりなんでそこは別にいいんですけど……」
「ならええやんか。分かったから、とにかく落ち着きいや。一つ一つ冷静に話していこうか?そうじゃないとこっちがついていけへんからな」
「あ、スミマセン。ですね」
一呼吸おいて再び話し始めるヤヨイ。
「端的に話すとですね、ダイチノ騎士団の代わりにホムラノ騎士団が表に出るようになった。そして何故か人や歴史からもダイチノ騎士団という物が存在しなくなったって事です。街の皆んなは当たり前のようにホムラノ騎士団の人達と接しています。少し前まではホムラノ人達が表に出ることなんて殆どなかったのにです」
「それって気のせいとかではないんよね?」
「間違いありません。だって、こんな事は初めてじゃありませんから…」
「前もあったん?似たような事が?」
「はい。私以外、殆ど誰も覚えてはないみたいですけどね。例えば昔は七騎士団じゃなくて十騎士団だったとか。そして今では六騎士団が当たり前になってる。いつの間にかにね」
「でも、こんな事普通は起きるもんちゃうんやろ?」
「その筈です。でも、出来ないこともないのかもしれません。皆さんが言うみたいにここは異世界ですから。私が知らないだけで記憶や歴史その全てを好きな様に書き換えてしまう魔法や固有能力も存在するかも知れませんから」
「じゃあ仮にそうだとしてや、なんでウチらは覚えてるん?ウチらだけ例外なのはおかしいやろ?」
「……きっとそれは皆さんが転移者だからだと思います。転生者も含めてこの世界の人間ではない皆さんには一部の魔法や固有能力には対抗できるのかもしれません。確証はありませんが……」
すると話を寝ながら聞いていた遥が喋りだす。
「そろそろ話す気になったの?」
「え?何の事ですか?」
「…自分でも気づいでるでしょ。もう隠せないって。というか、自分でも面倒になってきてる。隠す気もなくなってチラチラとそれらしい事言ってさ、私達に気づかせようしてる」
「……」
「さっきのだってもう答え言ってるみたいなものじゃない。もしかして自分で言うの恥ずかしくなっちゃった?」
「それは……いや、…」
「分かった。ならお望み通り私達の方からから言ってあげる。特別よ。アイツ、答えてあげなさい?」
いきなり指名されたアイツは慌てふためく。
「えっ!……いいよ。ワタシが答えてあげる、ね?」
自信なさげなアイツ。
「ねぇ、本当に分かってる?」
心配してアシュラが小声で声をかける。
「え?、そういうアシュラは分かってるの?」
「まぁ、何となく」
「そ、そうなの?ならさ、こっそり答え教えてよ。こんな状況で間違えたら私は部長に殺されちゃうかも…」
「いや、流石にそれはないでしょ。いくらなんでも」
「分からないよ!あの部長だよ。こんな雰囲気で変な事言ったら何をされるか分かったもんじゃないんだから」
「だったら人の話はちゃんと聞いてなさいよ。そうしたらこんなに悩む必要もなかったんだからさ」
「それは無理だよ。諦めて」
「アンタってヤツはね……」
エプロンが呆れた頃、再び遥が話しかける。
「アンタ、もしかて分かってないの?」
「え!?、そんなわけないじゃないですかー?分かってますよ、そのくらい。だってヤヨイは私がここに連れてきたんですよー。私がヤヨイのことで知らないことなんてあるわけないじゃないですかー」
「そうよね?だったら答えてちょうだい?」
怪しげに微笑みながら遥は再びアイツに問いかける。
「あ、え〜っと、実は、本当はヤヨイは……」
その時、
「もういいですよ、私がちゃんと自分の口で言います。アイツさんじゃ多分無理ですから……」
ヤヨイが観念して喋りだす。
「え…もしかしてヤヨイって結構ドS?」
「そう?ならヤヨイ本人に言ってもらいましょうか?よく分かってないアイツの為にもね」
「遥、アンタこうなる事分かっててアイツにふったやろ?ヤヨイが自分で言わせる為に。アイツが分からないの分かってたくせに」
「そうなんですか、部長!?」
今度はアイツが遥を問い詰める。
「近いな…たまたまよ。たまたま。偶然って言った方がいいかしら?」
「偶然ね。…必然かも知れへんけどな」
「ふふっ。さぁ、どうでしょう?……じゃあヤヨイ教えて?」
「……はい。実は、実は私は皆さんと同じ日本から来た転生者なんです!!…驚きました?」
「んな訳あるか。分かってたわ!最初からそんな気がしてたわ」
「…やっぱりそうですよね……」
全員、ヤヨイの答えに想像ついていたせいかリアクションは薄かった。
1人を除いては。
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