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外伝 英奪龍湧威総/ハナコトバ PART2

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

 翌日。


 いつものように2人で暇な時間をどう過ごそうか談笑していたりすると、昨日と同じ声がしてドアが開く。


「また、たっのもぉーー!!」

「……嘘やろ。オマエなぁ……今日は何しに来たん?」


「もう一度遥とタイマンしに来たに決まってるだろ!!」

「オマエ、昨日その遥にタイマンで挑んでコテンパンに負けたばっかりやろ?!昨日の怪我だって治ってないみたいやし。忘れたわけちゃうやろ」


 昨日の喧嘩で受けた生傷が癒えていないようだが、それすらも隠す事なく晒している。


 ある意味変態だ。


 普通じゃない。

「忘れてないよ。忘れるわけないじゃん。だからもう一度来たんじゃん!」

「そんなら普通多少は懲りて大人しくなるもんやろ。それにリベンジするにしてもいくらなんでもタイミングが早すぎへんか?」


「別に早くないよ。リベンジに早いも遅いもないでしょ。やりたい時にやり返す。それが私の流儀だ!!」

「負けてる癖にカッコつけんなや……遥、どうする?コイツはこんな事言ってるけど別に断ってもええんやで。こっちはわざわざ受けるメリットなんて最初からないんやから」


「……これ以上怪我しても私は知らないよ。それでもいいって言うなら相手してあげない事もないけど」

「今日は怪我なんてしないから問題なーーしっ!!こっちはいつでも準備は出来てるよ!」


「あっそ。なら仕方ないわね。…いいよ。そんなに言うなら私がアナタに目にもの見せてあげる」

「遥……」


 少しだけ心配そうな顔でこちらを見る副部長。


「そんな顔で見ないでよ。大丈夫。私が負けるわけないでしょう?」

「遥の心配ちゃうよ。ここまで来るとあのバカがどうなるのか逆に心配になってな」


「そっちかい。…でもそんなのいらない心配だと思うよ」

「なんでや?」


「この子との喧嘩、思ったより面白いから」

「…………」


「じゃあ、行くわよ」


 そして私と彼女の喧嘩、因縁のリベンジマッチのゴングはなった。


 結果は私の圧勝。


 彼女は私に全く敵う事はなかった。


 今度こそこの結果に懲りてもう一度来るなんてそんな事はないと思ってた。


 だが、それだけじゃ彼女は終わらなかった。


 翌日も彼女は同じように部室に来ては平然な顔して私に勝負を挑んできた。


 そしてまた怪我をする。


 そのまた次の日も、更に次の日もいくら負けても彼女は毎日当たり前のように私と喧嘩をしては負け続ける。


 そんな日々がずっと続いていた。


 私にとっては学校に出席する度に得られるログインボーナスのように彼女は毎回現れた。互いに得る物は何もないボーナスだが……。


 そのちょっとおかしなログインボーナスは半年後も変わらず続いていた。


 いつものように部室の扉が開いて彼女が入ってくる。


 初めの頃はたっのもぉーーみたいな元気な挨拶もあったけど今ではそれも無く来るのが当たり前で私に喧嘩を挑み負けるのも当たり前のようになっていた。


 彼女と私の目線が合うのをきっかけにしていつも通り屋上へ行く流れが出来ていた為その間に会話は無い。

 もう会話なんか必要ないくらい私達は喧嘩をしてきてしまったって事だ。


 懲りずに来る彼女の頼みを断る事なく私が受け続けてきた結果がこれ。


 その日もいつも通り彼女と目線が合ったのでいつも通り私も屋上へ向かおうとすると、珍しく副部長が私達に話しかけてきた。


「なぁ、2人ともそろそろいい加減にしたらどうや?」

「……なんで?」


「だってなぁ、外だってだんだん寒くなってきたしお互いに色々と大変やろ。そろそろ区切りを付けるには丁度いい頃だと私は思うねん。だからな、ウチに1つ考えがあんねん。聞いてくれるか?」


「…………」

「…………」


「沈黙か……。まぁええ。どっちにしろウチは言うつもりやったから言わせてもらうで。翔子、アンタ正式にウチの部員にならへんか?それも四天王として。1人しかおらへんから四天王とは呼べへんかもしれへんけど足りない分はそのうちな。でもどうや?悪い話ではないやろ」

「……私は別に部員になりたいわけじゃない」


「分かってるよ、そんなの。でもな、このままよりは絶対にええと思うで。部員になるって事はいつも遥の側いれるってことや。今までみたいにわざわざ部室に来る必要もないし、何より遥の強さを知れるチャンスになるかもしれへんで。翔子、自分の喧嘩行き詰まってるんやろ?結果の出ない毎日でやりたい事も出来やしない。無理もないわ。だからこそ何か変化が必要だとウチは思うねん。翔子の強さはウチも遥も分かってる。威薔薇ノ棘に入るには十分な実力も持ってる。だったらここら辺で一度折れてウチらの仲間になれ。必ずウチがオマエを強くしたる。少なくても遥と対等に戦えるくらいにはな」

「私は別に……」


 翔子が何かを言おうとした時、


「ダメよ」


 私が遮った。


「……なんでや。今となったら別に問題あらへんやろ」

「とにかくダメよ。私が彼女の入部は許さない。何があってもね」


「理由は、理由はなんやねん?遥だって翔子のこと認めてる筈やろ!」

「そこまでよ。…翔子、いつもの場所に先に行っててくれる?。直ぐに追いかけるから。安心して、私は必ずアナタとの喧嘩を受けてあげるから。いつも通りね」

「……分かった」


 そう言うと彼女は先に屋上ヘ向かった。


「どういうつもりや?」

「それはこっちのセリフだから。私に相談もせず勝手に話を進めないでくれる?」


「2人しかいないんやからわざわざそんなのも必要ないやろ。…何が不満なん?今まで翔子と喧嘩し続けてきた遥が1番彼女の強さは知ってる筈やろ」

「分かってるわよ、そんなこと」


「だったら嫌がる理由はなんやねん。まさか、翔子が一度も勝ててないからとかつまらない理由ちゃうよなぁ?」

「そんなわけないでしょ。それに私が負けたら部員になる前に翔子は部長になっちゃうでしょ。違うわよ」


「なら、他に納得の出来る説明してもらおうか?ないんやったら、副部長権限で強引にでもウチが翔子を引き入れる!」

「……チッ。……そんなの彼女の為に決まってるでしょう」


「どういうこっちゃ。このまま遥に負け続けるのが翔子の為だって言ってんのか!?」

「そうよ」

「遥!それ本気で言ってんの?」


 副部長は私の胸ぐらを掴む。


「……本気も本気よ。変えるつもりもないわ」


 雑に私の胸ぐらから手を離す。


「怖いんか?これ以上翔子が強くなるのが。この半年以上で少しずつだけど翔子は強くなってきてる。こののまま行けばいつかは遥を超えるかもしれない。それが怖いんやろ?そうなったらウチらの約束も守れなくなるかもしれへんからな…」

「なわけないでしょ……舐めないで」


「舐めてへんよ。ウチが知ってる遥は少なくてもこんな怖がりじゃない事ぐらいウチも知ってるよ。でもな、今の遥じゃそうは思いたくないけど思っちゃうねん」

「……私はさ、別にこの部長って椅子にこだわってるわけじゃないんだよ。約束なんか私が部長になった時点でほぼ果たされたような物だし私が部長を辞めても困ることじゃない。だから、場合によってはこの椅子を渡してもいいって思ってる。私自身この椅子に思い出なんか何もないから」


「………」

「でもさ、翔子が相手なら話は別」


「それや。なんで翔子だけ…」

「最初から言ってるでしょ?あの子の為よ。沙莉が言ったみたいに私と毎日喧嘩するようなってから翔子は確実に強くなってきてる。そんな翔子と毎日喧嘩をするのが私は楽しくてしょうがない。強くなってもらうのは寧ろ私だって大歓迎よ。期待してなきゃ毎日相手なんかしないわよ…」


「それなら!」

「私の側にいても強くなんかなれないわよ」


「そんなことないって。昔から遥のパートナーになった奴らは皆遥のお陰で実力をつけて結果を残してきた。それは私が1番よく知ってる」

「ありがと。お世辞でも嬉しいわ」


「お世辞やないよ…」

「………そうだとしても翔子は例外。私の側にいて何かを学ぶとか私が教えるとかそんなので伸びるタイプじゃないのよ。あの子は。ひたすら目標に対してぶつかり続けて追いかけ続ける、そっちの方がきっと彼女の性にあってるのよ。翔子も自分でそれが分かってるからわざわざ私に負けるって分かってても毎日来るんでしょ。さっきだって断ろうとしてたみたいだしね。私がその前に遮っちゃったけど。だけどそれが翔子の望みでもあるのよ。だったらそれを私達が断る訳には行かないでしょ?」


「それはそうやけどさ……」

「私はね、彼女にとってライバルじゃいけないのよ。ライバルなんかじゃ彼女はこれ以上強くなれない。だから私は彼女にとって無理ゲーだって思うくらいのラスボスでい続けなきゃいけないのよ。ラスボスが途中で仲間になんかなったら今までの意味が無くなっちゃうでしょ。私の努力を無駄にしないでよね」


「遥……意外とちゃんと後輩の事とか考えてるんやなぁ…。ちょっと驚きやわ」

「それどういう事よ!私だってね、物理的以外でも頭は使ってるのよ!もう……」


「分かったわ。遥の考えは最もやし、間違ってもないと思う。だからもうウチの方からは何も言わない。今のところはな」

「今のところ?何よ、その引っかかる言い方は?」


「その通りの意味や。私は別に翔子の園芸部入りを諦めたわけやない。でも翔子の為に今は我慢しとくわ。でもいずれは必ず説得して納得させてみせる。勿論両方ともな」

「フンッ。…それなら好きにしなさい。私を納得させられたらその時は私も認めてあげる。沙莉は沙莉なりに翔子の事を考えてるって私も分かったから」


「当たり前やろ。ウチは遥と違って物理的に頭は使わず常に知能として使ってるんやからな!」

「……蹴り倒すわよ」


「久々にやるか?」

「冗談よ。なんで喧嘩しに行く前に喧嘩しなきゃならないのよ。バカじゃないんだから」


「遥だったらやりそうやったから。連戦は得意やろ?」

「さあね、どうだったかしら?」


 それだけ言うと私は翔子が待つ屋上へ向かう。


 こうして私と翔子の無謀な喧嘩な毎日は続いていった。


 一年後も変わらず。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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