十九話 嚠煌装/ルコウソウ
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ハレルヤ女学園 一年教室
「部長が蘇ったーーー!!」
「ええぇぇーーー!」
「どうなってんのよーー?!」
「もしかしてだけど、これってヤヨイの仕業なのよね!?」
「ええ。上手くいったみたいで何よりです」
「何したの?」
「何って…私は何もしてませんよ。ただ、ちょっと特別なネックレスを渡しただけです」
「ネックレス!?」
少し時は戻り、遥、エプロン、ヤヨイ、3人でのガールズトークという名の作戦会議の時。
「分かりました…。もう止めはしません。ただその代わりに受け取ってほしい物があるんです」
「何かくれるの?それともガラクタか何かを高値で売り付けるつもりかしら?」
「冗談言わないでくださいよ。これでも結構本気で真面目に言ってるんですから」
「分かってるわよ。これが私なりの意思表示」
「遥が冗談言うって事はそれだけヤヨイに気を許したって事や。喜び」
「そうですか……でも、そう思っていただいているなら渡しやすい。変に誤解されるのも恥ずかしいですから」
ヤヨイは遥に歩み寄り赤い宝石が埋められたネックレスを首にかける。
「え……どういうつもり?」
「はーー……えらいでっかい宝石やなー。それに派手な装飾まで。そんな高価なもん遥に渡してどうするつもりなん?」
「装飾は私の趣味です。あと宝石じゃなくて魔石です。それにこの世界では魔石自体は高価な物でもありませんよ。モンスターを倒せばいくらでも手に入りますから。まぁ、といってもやってる事自体が本来の使い道とはちょっと違った使い道なんで正確な価値はつけらないんですけどね」
「?」
「細かい事は気にしないで。遥さんはいつ何時もそのネックレスは身につけていて下さればそれでいいんです。特に、戦いに行く時なんかは必ず。絶対ですよ!いいですね?」
「でも、こんなんぶら下げながら喧嘩するなんてちょっとやりにくいやろ」
「それでもです!でも、どうしようもないくらいピンチの時、いざって時はそのネックレス思いっきり引きちぎっちゃっていいですから。きっと流れを変えるきっかけになってくれる筈。どうなるかはその時のお楽しみって事で。大丈夫です、遥さんにとってはプラスの事しか起きませんから」
「ふーん。分かったわ。なら、有り難く貰うわ。使える物は何でも使わなきゃね」
「なぁ、ヤヨイ。ウチの分は?」
「あ、あーー、すみません。今は1つしかないんです。だからって別に変な意味はないんですよ。たまたま今は持ってないってだけですから。あの、申し訳ないです……」
「そうか…ええよ。気にせんで。別にウチはこんなの興味はあらへんから。いらん、いらん。大丈夫や。……ちょっと傷ついただけやから」
「……なんかスミマセン」
そして時は戻る。
ハレルヤ女学園 一年教室。
「なるほど。で、そのネックレスがどう関係してくるわけ?」
「実はあのネックレスには、一度だけありとあらゆる魔法を無効化し吸収する力があるんです」
「はぁ?何なのそれ、チートじゃん!」
「流石にそこまでは言い過ぎです。そこまでの物じゃありませんよ。使用できるのは一度きりで使い切りですし、発動条件なんて魔法を受ける直前にネックレスを自ら破壊しなければならない。少しでもタイミングがずれたら能力は発動しません。
意外とシビアで使いにくんですよ、アレ。自分で言うのもなんですけど」
「だから、部長の手に持ってるネックレスは引きちぎられてるって事ね」
「そういう事です。でも、本当に上手くいってよかった。アレを使用した人、実は遥さんが初めてなんです。あ、この事遥さんには内緒ですよ」
「そうなの?!よくもまあ、そんなリスキーな物を簡単に渡したもんよね〜」
「何言ってるんです。リスキーだからこそ、戦況を変えるだけの力を持った切り札になるんですよ!」
「でもそんな貴重そうな物よく持ってたわよね。こんな事言うのはアレだけど、本当に渡してよかったわけ?本来は自分で使うつもりで持ってたんでしょ?」
「あ、大丈夫ですよ。家に帰ればストックはまだありますし、無くなっても作れますから」
「え?」
「あのネックレス私が作ったんです」
「えぇえぇ!そうなの?」
「ハイ」
至極当然とのように答えるヤヨイ。
「アンタ、本当は何者なの?」
「フフフ。酒場で働くオネェちゃんは私の仮の姿。……私の本職それはクラフターなんです。どうです?驚きました?凄くないですか?」
「そうだったんだ!びっくり!……ごめん。全然分からないや。説明してくれる?」
「ですよねー。クラフターってのは分かりやすく簡単に言うと物を作る仕事をしている人の事をいう通称です。例えば洋服や雑貨とか。でも私の場合はちょっと特殊で魔力を応用して魔法を付与した魔道具を主に作ってます。こんな説明でどうです?」
「なんとなく、かな?」
「ならこのまま続けますね。ちゃんとついてきてくださいよー。…実はこの世界、今の所魔道具は余り普及していなくて、そもそも認知すらされてないことも珍しくない。だから私が作った物はデタラメなガラクタ扱い。誰も能力の事を説明してもあり得るわけがないの一言で誰も信じてはくれません。そんなんじゃ売れるわけもなくて……。
だから本職の筈のクラフターも今じゃ殆ど趣味同然。
これじゃ生活なんて出来ませんから仕方なく酒場で働きながら男の相手もするようになったわけです。でも、後悔はしてません。お金はそれなりに稼げるしニッチな情報だって手に入る。しかもそのおかげで皆さんにも出会える事が出来たんですから、結果的にいい事だらけで万歳って感じですよ!」
ペラペラと饒舌に喋るヤヨイ。
「わかった、分かったから、」
「本当に伝わりました?」
「うん。クラフターの事もアナタの熱意も伝わったわ。思ったより温度が高くてびっくりしたけど……」
「私めちゃくちゃ嬉しいんです。自分が作った魔道具を誰かが使ってくれるのも初めてですし、自分が作った魔道具が誰かの役に立ったことが本当に嬉しいんです!あの、ありがとうございます!」
「え、いや、私にお礼を言われても困るから。言うなら後で部長に直接言ってよ」
「ですね……」
「寧ろお礼を言うのは私達の方よ」
「え?」
「ヤヨイのおかげで部長は助かった。アナタがいなければどうなってたか。……ここに居る園芸部、そして学園の生徒を代表して勝手にお礼を言わせて貰うわ。本当にありがとう」
「!!……ハイ。こちらこそありがとうございます!」
2人は互いに握手をする。
でもそんな様子を話を聞いていなかった周りはついていけないようで……
「コレ、どうなってんの。私達がテレビに夢中になってる間に何があったのよ…あのアシュラが、誰かと握手しているなんて、どうかなっちゃうんじゃない?私達ともまともにスキンシップが取れるまで時間が掛かったっていうのに。ねぇ、何でこうなったか誰か知ってる?」
エンジェルはアイツ達に問いかける。
「う〜〜ん」
「何よ、その返事は。どういう意味?」
「知ってるような、知らないような、分かってるような、分からないような、そんな感じ」
「うん。こっちもさっぱり分からない。聞いた私がいけなかったわ、ごめん、忘れて」
「うん!」
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