十七話 姫夢罹/ヒメユリ
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広場。学園での会話より少し前。
ディーノ含むモンスター達の協力によりオジョウの救出作戦は成功間近だった。
エプロンはいち早くオジョウの近くまで行く事に成功。
ならば、後は助けるだけ。
が、そう上手くはいかないようで、
「そこまでだ、小娘達!」
「なんや?」
「悪いが好きにはさせない。我も騎士としての人生がかかってるのでね」
ダイチノ騎士団副団長カイゼルが目の前に立ち塞がる。
「誰や!オッサン!?」
「オッサン……まだ、30歳なんだがな、」
「30はもうオッサンやろ」
「そ、そうなのか?……て、こんな事をしている場合ではない。お前達はここで私が止める」
「なんや、おっさんが相手か?ええで。やったろやないか!」
「ちょっと待って」
そこに遥が追いつく。
「コイツの相手は私がやる。オッサンもそれならいいでしょ?だからエプロンは早くオジョウを助けてあげて」
カイゼルは黙ったまま遥を睨み続ける。
「遥。それは部長命令か?それとも、」
「どっちもよ」
「……しゃあないな。じゃあ、ここは遥に任せて私は先に行くわ。ほな」
エプロンは紅生姜に乗ってオジョウを救いに先へ。
「追おうとしなくていいわけ?オッサンの仕事は私達を先に行かせないことなんでしょ。ほら、先に行っちゃったよ」
「フッ。キリュウハルカ。お前が相手なら話は別だ。任務なんかやってられるか。お前とは今度こそ、本気で戦いたかったんだ」
「名前、覚えたんだ?覚える必要なんてなかったのに。…でもいいや。今のアンタの目には私も興味がある。何がなんでも勝ってやろうって目だ。そんな目されたら、こっちもちょっとは応えてあげなきゃね。……かかってきなよ、オッサン」
遥の口が閉じた瞬間を合図に戦いが始まる。
「オッサンって言うな…!」
広場。処刑台
オジョウを救いに邪魔する兵士達を吹き飛ばしながら突き進み、遂にオジョウの間近に来たエプロンと紅生姜。
「エプロンさん!」
「助けに来たでオジョウ!」
「ギュワーー!」
「ありがとうございます!でも、部長じゃないんですね……」
「そんなん言うてるとこのままはっ倒すで!」
「、申し訳有りません。じょ、冗談ですわ。でも、本当に助けていただきありがとうございます」
「ええよ。礼なんか。でもどうしても言いたいならそれこそ遥に言ったり。ま、遥も気にするなって言うだろうけど」
「ですね……。でも、私は言いますよ。必要なくてもこれが私の意思ですから」
「ええんやない。オジョウらしくてさ。ほな、背中に乗りな?」
「あの、ずっと気になってたんですが、この恐竜みたいなのはなんなんですか?!」
「恐竜やない。モンスターや。ウチもようはわからん。因みに名前は紅生姜や。ええ名前やろ?」
「名前はどうでもいいですわ」
「どうでもええってなんや!!」
「ほんとに大丈夫なんですの?急に襲われたり、食べられたりしませんでしょうか?!」
「悪口ばっか言ってるとホンマに食べられてしまうかもしれへんな〜」
「ええっ!!」
「冗談や、冗談。さっきのお返しや。…疑う気持ちは分かるけど安心していい。この子達はウチら味方や。信じて?」
「……っ」
すると紅生姜が戸惑いを見せるオジョウの手をペロッと舐める。
「ふぇっ!…」
「な、大丈夫やろ。紅生姜が私達を襲う気なら今のでバックリ食べられてる。それでもうおしまいや」
紅生姜は信じて欲しそうにオジョウを見つめる。
「…分かりましたわ。私もこの子のことを信じますわ。よろしくお願いいたしますね、紅生姜さん」
紅生姜は自信満々に頷く。
「ヨシ、なら行くで!」
オジョウを乗せた紅生姜は広場を抜けるために後方へ進んでいく。
紅生姜達は遥の側まで戻ってくる。
「遥!オジョウは助けたで!この通り、元気ピンピンや!」
「部長!」
「サンキュー。…あなただけでも無事で良かった」
「あの、部長!本当にありがとうございましたっ!!」
「いいよ、気にしないで……」
「ふふっ」
「なっ、言った通りやったやろ?」
「ですわね」
「何が?」
「遥は知らんでええのよ」
そんな会話の中カイゼルが無神経に体ごと割り込んでくる。
「余所見をして、溝端会議とは随分余裕だなぁっ!!」
カイゼルは手に持った剣を振り回す。
エプロン達や遥はそれをかわして一歩下がりカイゼルと距離をとる。
「どうする、遥もこのまま一緒に逃げるか?当初の目的は達成したんや。これ以上ソイツに構う必要もないやろ」
「それもそうね。…でも、少なくても私とサシミはそういうわけにもいかないでしょ?」
「なんでですの?お2人も一緒に逃げればよろしいではないですか!」
「このまま逃げてもまたコイツらから変に因縁を買うだけ。それならここではっきりさせておいた方がいい」
「でも!……」
「それにさ、私達は売られた喧嘩を買ったのよ。オジョウも知ってるでしょ?ヤンキーの世界にクーリングオフはないってことぐらい。だからやるしかないのよ。大丈夫、負ける気はないから。そういうことなんで、エプロン。先に学校戻っててよ」
「ほんま、私達ヤンキーも面倒な性格やな」
「アンタもヤンキーでしょうが」
「フンッ。……オジョウ、ウチらは先に帰るで」
「はい……」
「遥!」
「ん?」
「、何か言っとこうと思ったがやめとくわ。変にフラグになったら面倒やからなぁ!」
そう言い残すとエプロン達、紅生姜、そしてモンスターの仲間達も一緒に帰って行く。
しかし、一頭だけ頑なに動かないモンスターがいる。
「ほら、他の仲間達は皆帰ってたよ。後はディーノ。あなただけよ。迷子にならないようにさっさと皆を追いかけな」
ディーノは必死に首を横に振り帰るのを拒否する。
「もしかして、あなたも一緒に戦いたいの?」
ディーノは頷く。
「そっか。…ありがと。なら、お言葉に甘えて最後まで一緒に付き合ってくれる?」
「グワァッーーーーーー!!」
ディーノは声で、体で、元気に返事をする。
「わかった、わかったわよ。そんなに喜ぶこと?でもディーノの気持ちは伝わったわ。……一緒にやるよ」
「グアッ!」
ディーノは遥の横に並び互いに臨戦態勢に入る。
「オッサン、律儀に私達の事を待っててくれるなんて意外と優しい所もあるのね。それによく分かってる」
「…別にお前達のために待ってたわけじゃない」
「本当に?」
「当たり前だ。我らにとっても都合が良かったから利用したに過ぎない」
「ふーーん」
するとカイゼルの後ろから赤いローブを纏った女達が大勢現れる。
「もしかして、このため?」
「その通り。察しがいいじゃないか」
「バカにしないで。こんなこれみよがしに突然現れたら誰でもわかる事でしょ」
「そうだな。じゃあ、彼女達が何のためにいるか分かるか?」
「さあね?でも、おおよそ私達を倒すための何かなんでしょうけど」
「その何かを聞いてるんだろ?」
「そんなの知るわけないでしょ!バカじゃないの」
「でも、何となく分からないか?この格好を見て」
女達はローブの他に分かりやすいぐらいイメージのしやすい杖を持っていた。
「…魔法使いとか?」
「大正解!!ご褒美に燃え盛る熱き炎を沢山プレゼントしてやろう!!…やれ」
合図を受けた女達は一斉に魔法を発動して杖から大量の炎を生み出し全てを遥達に向けて放出する。
「!…いきなり随分センスがない物騒なプレゼントをするのね」
「グァッ!」
ディーノは遥を守ろうと率先して遥の前に行き、盾になろうと体全体で遥を覆い隠す。
「ディーノ…」
ディーノは黙って頷く。
「気持ちは嬉しいけど、大丈夫。私が信じたものは私が必ず守る。全てを信じきったあとでね」
そう言うと遥は強引にディーノより前に飛び出し今度は遥がディーノを守る形になる。
「グァッ!、グァッーーー!」
ディーノが遥を守ろうと再び前に出ようとするが遥がそれを拒む。
「我の勝ちだ……悪いな、こっちも後がないんだよ」
そしてとうとう、燃え盛る炎が遥を焼き尽くしたのであった。
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