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九十七話 紅乃薔薇/バラ

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

「その姿、俺のパクリか?」

「アンタにだけは言われたくない。2人とも似たようなもんでしょうが」


「フフッ。そうだな。だけど見た目が変わっただけなんてオチはやめてくれよ。本気を出すんだろ?」

「やってみれば分かるわよ」


「なら、続きと行こうぜ遥!!」


 飛びかかり殴り込んできた葵を凄いスピードで避けると葵の脳天に踵落としを叩き込む。

 遥の一連の動きはサシミにそっくり、いや、まるでサシミが戦っているようだった。

 葵は衝撃で膝をつきかけるがギリギリの所で堪える。


「それもパクリか?似たような事をする能力の奴を俺は知ってるぞ…」

「あんなパチモンと一緒にしないでくれる?私のは全くの別モンよ!」


 素早く叩き込まれたもう1発の踵落としが葵の膝を地面につかせる。


「私は独りよがりで満足するような遊びは嫌いなの。私は皆と一緒に遊んでのよ!!」

「あっそ!」


 遥の追撃をかわした葵は遥の顔面を張ると、遥もそれを同じように返す。


「ハハッ……いいね!!」


 痛みを感じ笑った遥の姿はアイツの姿に重なる。

 遥は右手で、葵は左手で、互いの利き手を互いにぶつけ合い続ける。

 1分ほど続いた殴り合いを制したのは葵だった。崩れ落ちた遥目掛けて葵はロープへ走り反動をつけてからの渾身の一撃を狙う。

 が、それを待ってましたとばかりに起き上がった遥は敢えて利き手ではない左手で葵を殴打。迎撃に成功すると続けざまにヘッドバット。連続攻撃で葵は転がりおちる。


「よっしゃ、行くわよ!!」


 遥は徐に髪をかきあげると葵の足首を掴むと全力で回りはじめる。

 回転速度はどんどんと速くなっていく。10回、20回、50回と数える事もままならない程の速さで葵を回していく。

 リング中央で堂々とジャイアントスイングをする遥の姿はアシュラにしか見えなかった。

 最高速度まで到達し放り投げられた葵はロープに打ち当たる。


「っ……」


 遥の戦い方が変わってから明らかに流れも変わった。

 その流れを証明するかのように立ち上がる葵を襲撃。スリーパーホールドで葵の首元をがっちりと締め上げる。


「あの日の約束…これで決着つけさせてもらうわ!」

「ぐぅっ……」


 抵抗する葵だったが、遥はそのまま胴締めスリーパーへと移行し葵の動きを制限する。

 締め付けは時間が経つたびに厳しいものとなっていき、そのしつこさはエンジェルにも優る。

 だが葵も諦めはしなかった。


「……まだだぁ!!」


 決死の力で葵の足はロープへと届く。

 先程までプロレスというものにこだわらなかった葵がこの世界で初めてプロレスに頼った瞬間だった。

 遥は律儀にそれを受け入れ手を離す。

 その手が離れた瞬間、身を翻した葵が今度は遥をスリーパーで落としにかかる。

 同じ技でも遥のスリーパーとは目的が明らかに違う全くの別物だった。

 口と鼻を塞がれ軌道を封じられた遥はただもがくしかなかった。


「あああっ!!」


 確実にここで勝負を決める、そう決めた葵の腕は深く首元に入り込んでいく。

 変わった流れはまた風向きが変わり変貌を遂げる。

 身動きは取れない。呼吸も殆ど出来ない。それでも、それでもただもがき続けるしかない。

 遥は締め上げる葵ごと強引に持ち上げる立ち上がると、後方にあるコーナーへ打つける。

 それでも葵の手は遥から離れない。

 体には力が入らずその場で崩れ落ちる遥。まだ、もがこうとする遥だがその目は虚になっていく。


「(ッ、、ヤバ……)」


「遥さん!!」


 遥を鼓舞するヤヨイの声も聞こえはするが届かない。

 そんな時だった。

 2人以外誰もいないリングの上に1人の人影が見える。

 目に映ったその人物は遥に告げる。


「カッコつけるんやろ。ならカッコつけんなや」

「(ったく、幻のくせに好き勝手言っちゃってさ……格好よすぎんのよ!!!)」


 遥の表情は変わり、再び葵ごと持ち上げ立ち上がるとそのままトップロープまで登る。


「遥まさかっ」

「っ!!」


 ヤヨイを抱えたまま飛び上がると諸共リングへ叩き落とす。

 こんなの技ですらない。ただ飛び降りただけなのだから。

 だからこそ2人とも受け身なんか取れるわけがなかった。

 そして遂に葵の手は遥から離れる。


「はぁ……はぁ……」

「ぐっ……相変わらず無茶苦茶だな遥は!!殺す気かよ」


「ヘッ、アンタにだけは言われたくないっつーの」


 超人となった2人の体も既に限界は来ている筈だ。それでも2人は懲りずに立ち上がり向かい合う。


「葵……」

「遥……」


「「あああっ!!」」


 このタイミングで2人はエルボーの打ち合い。何度殴れば2人は気が済むのか、そんな声が聞こえてきてもおかしくはない。

 でも肝心の2人の表情だけは明るかった。


「遥ぁ!!」


 葵が放った渾身の1発。それを避けた遥はカウンターで得意の回し蹴りを叩き込む。不意打ち気味に入ったその1発は葵を崩れさせ立ち上がらせない。

 すぐさま遥は葵を仰向けにするとその上に乗っかり固める。


「ヤヨイカウント!!」

「え!?」


 唖然と見ていたヤヨイは突然のお願いに頭がついていかない。


「いいから早く!!」

「あ、はい!えっと、、ワン、ツー、ス」


「ざけんなぁ!!」


 直前で葵は肩を上げ飛び上がり立ち上がる。


「何度も言わせんなぁ!!これはプロレスなんかじゃねぇんだ。フォールしたってな、仮に3つ叩かれたって……終わりになんかならないんだよ!!」

「はぁ……ん、ならどうして今、わざわざあのタイミングで肩を上げたのよ!?」


「……黙れ!!」


 激昂した葵は遥の顔面を拳で殴打。

 最後の1発の強い衝撃で遥の体は深く仰反る。

 だが不思議と遥の体は仰け反ったまま戻らない。

 構わず更なる追撃を試みる葵。

 その瞬間遥は体勢を戻し起き上がると、口の中に溜まった血液を葵の顔目掛けて毒霧のように噴射する。


「うっ!」


 まさかの攻撃に葵は動揺を隠せない。

 その隙に葵をボディスラムのような姿勢で逆さまに抱えると。


「これが私の、いや、私達の!!本気のプロレスだぁ!!」


 飛び上がり両足を前方へ開脚し尻餅を着くように着地すると、葵を後頭部から背面にかけて叩き付けるように投げ落とす、みちのくドライバーIIを決める。

 これぞ必殺技と言わんばかり撃ち込まれた究極の1発だった。

 遥は片エビ固めの体勢で葵をフォールする。


「フォール!!」


 それを見たヤヨイは今度こそ躊躇いなくカウントを宣言する。


「ワン! ツー!  スリー!!!」


 決着を知らせるカウントが今数え終わった。

 遥は戦闘態勢を解き崩れる。

 それと同時に2人がいたリングは役目を終え存在を消した。


「遥さん!!」


 ヤヨイは急いで遥の元へ駆け出し介抱する。


「遥さん!」

「……大丈夫よ、そんな顔しないで。2人ともちゃんと生きてるから」

「はい」


「まだだ!……」


 葵は立ち上がろうと膝を立てるが体がいうことを聞かない。


「決着はついた。約束も果たされた。もう終わりよ葵……」

「だからまだだ!!……決着はまだついてない!俺も、お前もまだ生きてる!はぁ……どっちかが生きてる限り決着はついてないんだよ!さっさっと立て遥!!」


「……それはこっちのセリフよ。そんなにやる気なら立ってみなさいよ」


 遥は先に立ち上がり告げる。


「当たり前、だ……」


 立ち上がった瞬間、力が抜け膝から崩れ倒れてしまう。


「まだだ、まだ終わってない……ちょっと待ってろ」


 それでも葵は立ちあがろうとするが……。


「やっぱりもういいわよ、葵」


 遥は葵に抱きつく。


「離せ、離せよ……」

「もういいって、本当は満足してるんでしょ?」


「満足なんか、するもんか!!」

「だったらなんでアンタは笑いながら泣いてんのよ」


「そんな事知るか……」

「なら教えてあげる。それはきっと本気で楽しかったからよ」


「楽しかった?……」

「ええ。私はマジで楽しかった!!正直今まで1番だったと思うわ。観客がいないのが残念なくらいよ。葵はどうだったわけ?」


「……そんなの、決まってる」

「どう決まってんのよ?」


「楽しかったに…決まってるだろうが!!」

「ふふっ…良かったわ」


「……最高だった。俺の負けだ。だけど……暫くはいいや。遥と闘うのはたまにでいい…」

「奇遇ね。私も今ちょうど同じ事を思ってたところよ……」


 2人は笑顔で微笑みながら見つめ合うと、電源が落ちるように2人とも意識を失った。


「遥さん!!……遥さ……はる、、」


 理不尽な程の犠牲をはらった1人の女のワガママは1人の女の我がままにこうして決着をつけたのであった。

 そんな彼女達の未来は明るく照らされるのか、暗き闇で包まれたものとなるのか。

 はたまた、異なる未来が彼女を変えるのか。

 彼女達の物語の終着点はもうすぐだ。


 メインイベント QUEEN VS GODDESS"FINAL"時間無制限一本勝負


 ○桐生 遥VS●月美弥 葵


 フィニッシュ みちのくドライバーII(愛怒龍)

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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