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九十六話 裵邏龍極人優夢/ペラルゴニウム

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

「なんとか、間に合った!……」


「アキラ!」


 遥を命からがら復活させることが出来たヤヨイ達。コハルは急いで倒れるアキラの元へ急ぐ。 


「アキラ!!しっかりして!」

「ぐあっ…コハル。間に合ったんだな……」


 コハルに会った事で少し落ち着きを取り戻したアキラ。


「うん!全部アキラのおかげだよ!本当によくやったね!」

「そっか……良かった、、」

「アキラ!!」


 役目を果たせたと分かり安心したのか一気に全身の力が抜けるアキラ。


「ごめん、アキラ。今の私じゃ、どうしようも……」

「気にすんな、コハル……。俺達は役目を果たした。シズカもお前も俺も。今日の事で後悔なんてないだろう」

「だけど、だからってここで終わるなんて!早過ぎるよ……」


「元々2度目の命だ。この世界で俺達は好き勝手やってきた。で最後には仲間の為に命張って死ぬなんて…まるで漫画だ。やっぱり異世界だからな。らしい死に方が出来て良かったよ」

「アキラ……」


「俺達は先に行くけど、コハル。お前は……生きてく……」


 アキラは想いの全てを口にできないまま力尽きた。


「………」


 悲しみの中コハルの視線には遥と葵だけが映っていた。


「遥さん!」

「ヤヨイ」


「すみません……」

「謝らないで。アナタだけでも生きててくれて良かった。本当に」


「………」

「後は任せて。……借りは必ず返すから」


「…遥さん!」


 ヤヨイは遥に赤い宝石が埋め込まれた指輪を投げ渡す。


「これは…」

「私が作った魔道具です。効果と使い方は、」


「みなまで言わないで」

「え?」


「私だってね、ただ死んでたわけじゃない。ずっと見てたのよ。文字通り指を咥えて地団駄踏んでたわ。だから沙莉にだけあんな良い格好はつけさせない、アイツらの分まで私がリングの上で最高に格好つけてやるわ!!」


 遥はヤヨイに頷いてみせる。

 ヤヨイも遥の意気込みに応えるように頷き返すと後ろへ下がった。


「さぁ、見せてやろうじゃないの!最初で最後の葵とのシングルマッチ、メインイベントの始まりよ!!」


 遥は敢えて左薬指にした指輪を空高く突き出す。その瞬間、指輪は眩く赤く光り出し魔法陣が展開されると2人は遂にリングの上で再開する。 


「葵、約束を果たさせて貰うわよ」

「遥……遥!!ああ、最高だ。俺はこの時をずっと待ってたんだ!!全部今日の為に俺の人生はあった。俺は、俺は!!」


「分かった、分かったわよ。あんま興奮しないで。ちゃんとアンタの気が済むまで相手してやるから。葵のワガママは全部私が受け止めてやるわ。そして今までしてきた事全部反省させる」

「反省?…俺のどこに反省する事があるっていうんだよ!皆、俺と遥の戦いを望んでた。それが叶ったんだぞ!!俺との戦いを望んでたのは遥も一緒だろ!!それのどこが悪いって言うんだ!」


「それに気づかないから言ってんのよ。私がしたかったのは喧嘩なんかじゃない。ちゃんとプロレスで決着をつけたかった…」

「そんなの言い訳だ!プロレスだってなんだって戦えるならなんでも一緒だろ!!」


 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 廃墟となった教会の普段は鳴らない筈のベルが何故かこのタイミングで鳴り響いた。

 まるで戦いの始まりを合図するゴングの代わりのように。

 2人はそのベルの音を聞いた瞬間前へ駆け出した。


 遥の顔面を狙った葵の拳を掴むと強引にロックアップの体制に持っていき組み合う。 


「遥、なんのつもりだ!お前ならあのタイミングで俺に殴ってこれただろうが!」

「まだゴングは鳴ったばかり。最初は慎重に行かなきゃ、盛り上がるところで盛り上がらなくなっちゃうでしょ」 

「ふざけるな!これは勝負だ、ただの喧嘩だ!!盛り上がりなんていらないんだよ!!」


 葵はロックアップの体制を無理矢理崩すと遥の顔面に1発拳を叩き込む。

 だが遥の体は揺らぐ事なく、葵の流れを切り裂くように持ち上げ抱えると前方へ叩き落とす。

 勢いのまま、うつ伏せに倒れた葵を足で引っ掛けひっくり返すと自身も後方へブリッジで倒れ込むジャパニーズ・レッグロール・クラッチ・ホールド葵を丸め込む。

 が、


「冗談だろ、遥……」


 丸め込まれた体制のまま遥に問いかける。


「本気に決まってるでしょ?」

「だったらふざけんな!!!これはプロレスじゃねぇ、試合でもないんだぞ!これは殺し合いなんだよ!どっちかが死ぬまで終わらない。これはそういう戦いなんだよ!丸め込んだところでなんの意味もない!」


 葵は力強く上に乗る遥を弾き飛ばすと、倒れた遥の上に馬乗りになると遥の顔面をタコ殴りする。


「舐めんな、舐めんな、舐めんな!もっと本気出せよ!俺が戦いたいのは本気のお前だ!プロレスなんかさっさと忘れろ!!」

「……それは、無理な相談ね」


 再び葵をひっくり返すと今度は遥が馬乗りになると葵の手を押さえる。


「これでも一応元プロなの。私が言えたようなセリフじゃないけど、プロレスラーとしての誇りは忘れたことがない。ここが異世界だろうが、誰も求めてなかろうが、リングの上に立ったなら私はプロレスラーとしてプロレスでお前を止めてやるわよ!」


 遥は馬乗りの体勢を解くと直ぐに葵の手首を掴み足を脇付近にに入れると力の限り引っ張りあげるストレートアームバーで極めていく。


「…………」

「苦しいならロープでも掴んでエスケープしたらどう?レフェリーはいないけど、ちゃんと逃してあげるわよ」


「どれだけ俺がお前との戦いを楽しみにしてきたと思ってんだ!!」


 遥に極められながらも気にせず立ち上がった葵は片手で遥を持ち上げる叩き落とした。


「ぐっ……」

「分かったよ遥。そっちがその気ならこっちがさっさと本気をだして無理矢理にでもお前をその気にしてやるよ!」


 自らの指の爪を噛み切ると、葵の体はオーラが包み込み髪も青く染まり上がる。


「……知ってるわよそれ。確かにここまで変われば本気を出してるって誰でも分かる。やっぱりこれってスーパー、」


 喋り終わるのを待つ事なく顎を狙った膝蹴りで遥を黙らせると直ぐさまバックをとり後方のコーナー角へジャーマンスープレックスで放り投げる。

 頭をきつい角度で打った遥だったが倒れてるわけにはいかない。コーナーの近くだった事を利用して遥は急いでトップロープへ登る。

 それを見た葵も直ぐにトップロープへ登り遥の動きを阻止すると、そのまま雪崩式で叩き落とすため遥を抱えようとするが。


「さっきまであんな事言ってたくせにちゃんとプロレスらしい事するじゃないのよ…」

「黙ってろ!!」


 遥に挑発された葵は不完全な姿勢のまま強引に持ち上げようとするが、叩き落とされる瞬間遥は葵の拘束から抜けて着地。葵をロープに引っ掛け固定すると、渾身のトラースキックを顔面へと叩き込む。

 流石にこれは超人状態の葵にもダメージがあったようで表情が変わる。

 それをチャンスとみた遥は葵を担ぎ上げてリング中央まで移動すると、遥は尻もちをつく形で飛び上がると落ちる寸前膝を立て葵の腹部に突き刺した。


「ったく…これで少しは効いたかしらね」

「……ハハッ!痛いって思ったのはマジで久々かも。でも、今のままじゃ俺は倒せないぞ。遥、俺のことを恨んでるならもっと全力で来やがれ!」


「恨んでる?私が葵を?なわけないでしょ」

「どうしてだ!?俺がお前をこの世界に呼んだからそれに巻き込まれた仲間は無様にに死んだんだぞ……もっと恨めよ!前みたいに、もっとに俺に怒れよ!!」


「めちゃくちゃ怒ってるわよ。でもだからって恨んだってしょうがないでしょ。それであの子達が帰ってくるわけじゃない。多分だけど皆も私にそんな事を望んでなんかいないと思うから。私は仲間を信じて、仲間を信じた自分を信じ抜くって決めたのよ!!あの世でね…」

「ッ……仲間を巻き込んだのは余計だったな。なんでこうも遥に関わりのある奴は全員俺の思い通りにならないんだよ。本当に大迷惑だ、お陰で俺の計算は全部パーだ!!期待してた遥すら俺の考えを超えて先に行こうとする……もうめちゃくちゃだ!!」


 頭を抱える葵。


「最初からその計算が間違ってんのよ。そもそも私達を思い通り動かそうとしてた時点でアンタは負けてたのよ。葵なら知ってるでしょ。私が大人の事情なんて気にしないこと」

「……忘れるわけがない。遥の初めてのデビュー戦。5年も上の先輩相手に時間も流れも気にせず粘り続けて時間切れ引き分けに持ち込んだあの伝説を」


「伝説は言い過ぎよ。勝てないってのは戦う前から分かってた。だけど負けたくなんかない。だから勝ちも負けもしない方法を選んだ。それだけよ。ま、あの後大人にも怒られたし、周りの先輩連中も暫く口聞いてくれなかったけどね」

「自業自得だろ。おかげでお前の後だった俺のデビュー戦は殆ど話題にならなかった。あの時くらいだよ、俺の事が話題にならなかったのは」


「私はただ負けたくなかったのよ。相手が先輩だからとか、実力が離れてるとか、そんなんで戦う前から結果が見えてるみたいなそういうのが大嫌いなのよ!!勿論、今だって負けたくない。私の相手が神殺しでも一度も勝ったことがない相手でも負けたくなんかないのよ!!」

「だったら本気出せよ!!プロレスとかそんなの忘れてさ!」


「忘れやしないわよ。私にとっての青春なんだから。忘れられるわけがないでしょ。…だけど本気は出す。私のやり方で葵に勝つために。異世界らしい方法でね」

「異世界らしい?…何するつもりだ」


「私も強くなるのよ。こうやってね!!」


 遥は髪をかきあげると神経を集中させる。


「アンタの力、使わせてもらうわよ」


 遥は胸に手を当て呟く。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 突如として遥の体を気迫のようなオーラが全身を纏い始め遥の髪を赤く染めあげる。


「……しゃあっ!!!」


 少し離れた場所から2人の戦いを見ていたヤヨイとコハルも驚きのあまり口を開けて唖然としていた。


「どうなってんのよあの人の体。私、異世界生活長いけどこんなのの初めて。なんでそうやって都合よく強くなるのよ!!あれじゃ、スーパーs」


 ヤヨイは慌ててコハルの口を塞ぐ。


「それ以上はダメよ、コハル!いくら異世界でもなんでもあり過ぎる」

「だけどあれは」


「分かるけど、色々気になる気持ちは分かるけど!今はちょっと我慢して見守りましょう」

「分かったわよ……なら、そういうもんだと思えばいいのよね?」


「そう。今起こってるのはそういうもんよ」

「そ。なら聞きたいんだけど、あの葵って女が強くなるのは分かる。色々と能力を持ってるみたいだから。だけどあの人はそうじゃないでしょ!?それならどうやってアレを説明すんのよ!」


「きっとディーノのお陰よ」

「ディーノって、あの時の古龍よね。それがどう関係するわけ?」


「きっと今の遥さんはディーノと一心同体なのよ」

「は、なんでそうなるの?」


「今の遥さんは素材となったディーノの命で生きている。つまりあの人の体にはディーノの魂が。そして伝説の古龍の血が流れている。それがあり得ないのお約束なご都合パターンを現実にしてるのよ」

「それも随分都合が良すぎる説明な気もするけど」


「それでもそうなのよ。この世界はそういう世界だから!無茶苦茶であり得ないは当たり前。だってそれが」

「異世界なんだから。でしょ?」


「うん。そういうこと」

「もう覚えちゃったわよ、その無茶苦茶理論。ならきっとこの後の結果は」


「それは……信じよう。異世界に匹敵する遥さんの無茶苦茶ぶりを!」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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