九十三話 王弐祖雅羅武/オーニソガラム
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「マジかよ……俺達が転生したのも全部ソイツを倒す為だったってことかよ」
「神を殺したって、それが本当だったらそんな相手に敵う奴がいるわけ?」
「正直言うと、今のあの人を止めるのは私達転生者でも無理だと思う。聞いた所によるとあの人は能力以前に元からの身体能力自体が人間離れしてたらしいから」
「じゃあどうすんだよ、どうやってそんな無茶苦茶な奴を止めんだよ!ヤヨイが言うみたいにその遥って女を仮に生き返らせても無理なんじゃないか?俺達やその女のように能力があるわけじゃないんだろ」
「うん。だけど遥さんしかあの人は止められないと思う。元からあの人は遥さんと戦うのが目的だった。少なくても遥さんなら対等に相手が出来るようになってるはずなのよ。そうじゃなきゃ、普通に戦ったって結果は見えてるもの。そんなつまらないこと多分だけどあの人は望まない」
「そんなに強いのかその人?前に戦ったアイツって人よりも。あれでもめちゃくちゃだったのにまだ上がいるのかよ」
「うん。確かにアイツさんもめちゃくちゃだったけど遥さんは比べ物にならないくらい無茶苦茶だよ。化け物みたいに強いからこそ戦う事を望んでたのよ」
「目には目を。化け物には化け物を。似たものどうしは妙に惹かれあう。そういうことだな」
「ヤヨイ……」
申し訳無さそうにコハルが呟く。
「やっぱりコハルでも蘇生魔法は無理?」
「……」
「そうなのか、コハル!?」
食い気味に突っかかるアキラ。
「アンタ位は落ち着きなさいよ、このバカ」
それをシズカが宥める。
「悪い、ついな、でもなんでだよ。コハルの<絶対支援>はあらゆる魔法が使える力だろ?だったら、」
「それだったらコハルもこんな顔してないし、私達だって困ってないわよ。使える魔法には限度がある。そうよね、コハル」
「うん……」
「そうだったのか!?」
「そうよ。コハルの力はこの世に存在する魔法なら全て使える。勿論それだけでも強力な力だけど、なんでもってわけじゃない。そうやって昔コハル本人が言ってくれたじゃない。一時期、アキラがあーだこーだ好き勝手コハルに魔法を頼むからさ」
「そういえばそうだったな……」
「コハル!この世界に蘇生なんて都合のいい魔法が存在しないのは分かってる。だけどなんとかなる方法ないかな?」
「ヤヨイ、それは流石にコハルでも無茶だってば」
「そうだヤヨイ。もっと別の方法を考えた方が現実的だと俺は思うぜ。チート能力を持った転生者は他にもいるんだしな」
「そうよ。達の力は元々その女を殺す為の力なんでしょ。それなら強力すればきっとなんとかなるわよ」
焦るヤヨイを宥め新たな方法を模索するアキラ達。
「皆……でも、」
「ねぇ」
「ん?」
先程まで口を閉じていたコハルが意を決して喋り出す。
「さっきからずっと思ってたんだけど、誰が出来ないなんて言った?」
「「「え!?」」」
ヤヨイ達3人は驚きの余り声を合わせてしまう。
「驚きすぎだから」
「いやいや驚くだろ!」
「ヤヨイ、本当に出来るの!?蘇生魔法」
「うん。…多分」
「どっちなんだよ…はっきりしろってコハル」
「怒らないでよ。ちゃんと訳は話すからさ。アキラは直ぐに答えを急ぎ過ぎなのよ」
「……悪い」
「さっきから謝ってばっかりねアキラは。…でもコハル。蘇生魔法なんて魔法はこの世に存在しないのよね。なのになんで使えるなんて言ったのよ?」
「それはね、確かにこの世界に蘇生魔法なんていう都合のいい魔法は存在しない。だけどそれは一度も使われた事がないってだけ。私にはありとあらゆる魔法の知識と歴史が頭に詰まってる。昔いたのよ、そんな都合のいい魔法を作ろうとした奴が」
「マジでか……」
「でも結局それは失敗に終わった。だから今の世にはそんな魔法は存在しないけど過去に存在仕掛けたのよ。でも一度も成功しなかった魔法は時間が経つにつれ忘れ去られたから無いも同然だけど」
「でもコハルなら再現出来るってことね?」
「……正直分からない。さっきも言ったけどこの魔法は一度も成功した事ない魔法なの。私にはその失われた魔法の知識があるけどそれだけじゃ魔法は発動出来ない。条件があるの。でもその条件は無理難題で、だから今の今まで一度も成功した事がないのよ。つまりこの魔法は机上の空論なの。要するにレシピはあるけど材料が足りない」
「何が必要なの?」
ヤヨイは問いかける。
「条件は3つ。人智を越える莫大な魔力量。2つ目は人智を越える強大な力を持つ魔物の血肉」
「なんか人智を越える物ばっかりだな…」
「それだけ凄い魔法なんでしょ。ま、一度使われなかった理由も頷けるけどね」
「1つ目は私がいるからなんとかなると思う」
「そっか。コハルは能力のお陰でまさに人智を越えるほどの魔力を持ってるもんね!そうなると後は2つか……」
シズカは納得する。
「人智を越える魔物の血肉。って一体どんなモンスターならいいんだ?強いモンスターなのは間違いないんだろうけど、なんでもいいってわけじゃないだろ?」
「恐らくはドラゴン…」
コハルの一言がアキラ達を固まらせる。
「ドラゴンって…俺達この世界そこそこ長いけど会ったこともないぜ。見たこともないのにそんな奴どうやって倒せって言うんだよ!」
「見たこともないのも当然よ。この世界でもドラゴンは御伽話にしか出てこない空想上の生物だもの…」
「やっぱり無理じゃねぇか!」
聞いた通りの無理難題に呆れるアキラ達。
「…………コハル。因みにもう一つは?」
「1つ目や2つ目と比べれば案外簡単かも。だけど楽じゃない」
「なんなの?」
「3つ目は異常に長すぎる詠唱文。噛んだら最初からやり直しで使った魔力は戻ってはこない。当然これだけの魔法を発動しようと思えば莫大な魔力を消費する。流石の私でもきっと一度が限界だと思う。2回目に挑戦しようと思えば1週間は後になると思う。だからチャンスは一度きり」
「くそっ!!やめだやめだ!やっぱり他の方法を考えた方法がいい!」
「そうね……。私もそれに賛成。余りにもハードルが高すぎる。ヤヨイ、気持ちは分かるけど他の方法を一緒に考えよう」
「…………」
シズカの言葉に不満そうな表情を浮かべるヤヨイ。
そんな時、店の外がやけに騒がしくなる。
「なんだ?」
すると、ドアを強引に蹴破ると屈強な兵士や冒険者達が大量に店へ流れ込んでくる。
「!?」
「見つけたぞ!あの女だ!!」
兵士達はヤヨイを指さす。
「あの女は現在指名手配中の女達の仲間だ」
「おいちょっと待てよ。彼女は違う、勘違いだ!!」
ヤヨイを庇うべく率先して前へ出るアキラ。
「何が勘違いだと言うんだ!?現に今もここに来るまで凶暴なモンスターを連れ街を暴れ回ったんだぞ!それなのに何が違うと言うんだ!」
「それは……」
至極真っ当な事を言われぐうの音も出ないアキラ。
「あのバカアキラ……何言いくるめられてんのよ!なんとかしなさいよ!」
愚痴るシズカ。
「うるさいなぁ!分かってるよ!」
「何を揉めてるんだお前達!」
「あ、いや、それは……」
「まさかお前らもあの女の仲間だな?」
「いや違う、……違くないけど!そうじゃないんだ!」
「あのバカ。完全にパニクってる……」
「やかましいわ!なんでもいい。お前らも纏めて捕まえればいいだけの話だからな!」
「なっ……」
「さぁ観念しろ!店の前にいたモンスターも俺達の仲間が今頃討伐した頃だろうからな!」
「そんな!……」
戸惑うヤヨイ。
その時複数の兵士達が慌てて店へ駆け込んで来る。
「隊長!」
「どうした、そんなに慌てて……あ、言っとくが素材は山分けだからな」
「そんな事言ってる場合じゃありませんよ!」
「なに?」
「あの竜のようなモンスターによって我ら部隊は壊滅状態です!!急いで応援を!」
「な、なんだと!!……」
「グァァァーーーー!!!」
外から荒ぶるディーノの叫び声が聞こえる。
「良かった。遥さんの相棒がそんな簡単にやられるわけないもんね」
「竜?……」
ほっとした表情を見せるヤヨイと疑問の表情を見せるコハル。
「お前ら!ぼーっとしてる暇はないぞ!今のうちに逃げるんだ!!話はそれからだ。マスター、裏口借りるぞ!」
「あいよ。あ、ヤヨイちゃんは別としてお前らの飲食代はちゃんとツケにしとくからな」
「え、マジで!?」
思わず足を止めるアキラの頭を引っ叩くシズカ。
「こんな時にケチケチすんな!!行くわよ!」
アキラの手を引き一斉に裏口へ急ぐ一向。
「ヤヨイちゃん!」
マスターの声が聞こえ足を止めるヤヨイ。
「何があっても諦めんな!君の仲間達は君を信じたんだろ?だったらその自分を信じろ!絶対になんとかなるって信じ続けるんだ!!」
「マスター……」
「大丈夫だ。流れは君にある。キッカケを無駄にするな!材料は全部揃ってるんだからよ!」
「え?」
マスターは言葉に疑問を浮かべるヤヨイ。マスターはそれを見て頷く。
その表情は一片の曇りもなかった。
「ハイ!」
元気よく返事を返すとコーヒーを一気に飲み干すヤヨイ。
「マジかよヤヨイ……」
少し引いた表情を見せるアキラだったがシズカに連れられるように共に彼等は裏口からカフェを出て行った。
「おい待て!!逃すかっ!!」
「待つのはお前らの方だ。俺がお前らを逃がさないからな」
アキラ達を追いかけようとする兵士達の前にマスターが立ち塞がる。
「庶民風情が我々の邪魔をするな!そこを退け!」
「確かに今は庶民だが、だからって退くわけにも行かないんだ。少しは察してくれると助かる」
「何を言ってる、退け!」
兵士が強引に手を掛けようとした瞬間、逆に兵士は鍛えられたマスターの手によって一捻りにされてしまう。
「ぐぁぁっ!」
「なっ……あの男、一体何者なんだ……」
隊長らしき男がやられた事で一斉にたじろいだ様子を見せる兵士達。
「常連には最高のサービスを、がウチの店のもっとうなんだ。勿論、初見さんは大歓迎だがウチの常連に迷惑をかけるマナーを守れない客には丁重にお引き取りいただきたい。まぁ、そっちがその気なら俺が付き合ってやるよ。それもサービスの一環だからな」
不適な笑みを浮かべると男は兵士達を挑発する。
「……かかれぇ!!」
兵士達は掛け声を合図に一斉に襲いかかる。
「久しぶりだからな、加減が出来るか心配だ。ほどほどに気をつけないとなぁ。さもないと後で片付けが大変だ…」
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