空と散歩と犬
お好きな犬種で想像してくださいね。
ふあああぁぁ。
おはようでし。
まだ眠いでし。
「あら、ジョン。
もう起きたの?」
あ、ママさん。
おはようでし。
今日も朝からご苦労様でし。
ママさんはいっつも一番に起きてて偉いでしね。
しゃああああー。
ふう。
すっきりでし。
「あらあら。
起きたらさっそくおしっこね。
お手て拭きましょうね」
ホントはイヤなんでしが、ママさんのために我慢でし。
「はい終わり!
偉かったね~!」
ふふふ。
でしょー。
ママさんはいっぱい褒めてくれるから我慢できるでし!
「おっ!ジョン!
起きたかのう!
散歩いくかっ!」
じいちゃ!
じいちゃ!
おはよっ!
おはよっ!
お散歩いくっ!
お散歩いくでしっ!
「はっはっはっ!
朝から元気だのう!
これこれ、腰に来るからあんまり抱きついてくるでない!」
散歩っ!
散歩っ!
「ほらほら、リードつけて、そうじゃ、偉いぞう」
はやくっ!
はやくっ!
「じゃあ、いってくるでな」
「はいはい、いってらっしゃい」
じいちゃはいつもお散歩に連れてってくれるから大好きでし!
「ただいま~」
ただいまでし~。
「ほれ、足ふくぞい。
終わったらメシじゃからの」
仕方ないでしね~。
ご飯のために拭かれるでし!
「おじいちゃん、ジョン。
おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
ただいまでし~!
「はい、ご飯用意できてるわよ」
ぅわ~い!
「ほらほら、あんまり慌てて食べないのよ」
「はっはっはっ!
誰も取ったりせんよ」
うまっ!
うまっ!
うまっ!
でしっ!
ふ~。
「美味しかった?」
わんでし!
「ふふ、良かった」
ママさんはいっつもご飯くれるから大好きでし!
「ふあ~あ、おはよ~」
パパさん!
おはよっ!
いっつも眠そうでしね!
「あ~、ジョン。
おはよ~。
お前は朝から元気だな~。
ちょっと分けてほしいよ~」
分けてあげるでしよ!
ほらっ!
ほらっ!
「わっわっ!
顔ばっかナメるなっ!」
パパさんはたまに夜におやつ買ってきてくれるから大好きでし!
「やっば~!
ちこくちこく~!」
おねえちゃ!
おはよでし!
いっつもお寝坊さんでしね!
「あ~、ジョン、おはよ~。
ちょっと急いでるから、またあとでね~」
わかってるでしよ。
おねえちゃは朝はいっつもバタバタでし。
でも帰ってきたらいっぱい遊んでくれるから大好きでし!
「朝練あるんだから、あんまり夜ふかししなきゃいいのに」
「それはそれよ!
あ、パンだけでいいや!
マーガリン塗って~!」
「はいはい」
「ほひひゃ、ひっへひまーふ!」
「はい、いってらっしゃい」
「気を付けるんだぞ~」
「やれやれ、朝から忙しないのう」
いってらさいでし~!
あれ~?
じいちゃはどこでし~?
「胃ガン、なんだって……
他にも転移してて……
もしかしたら、もう帰っては来れないかも……」
ママさん、どーしたでしー?
「……そうか。
ただの腰痛だと思ってたが、それも関係してたみたいだな。
もう少し、早く気付いてやれれば……」
パパさん。
ねーねー、じいちゃ知らないでしか?
「……嘘でしょ。
あんなに元気だったのに、そんな急に!」
おねえちゃ?
どーしたでしか?
じいちゃがいないから、お散歩まだでし~。
「ああ、ごめんね、ジョン。
今朝はお散歩お休みしよっか。
夕方、ママと一緒に行きましょ。
ほら、ご飯用意するわね」
わーい!
ご飯でし!
ご飯でし!
みんな、どうしてずっと泣いてるでし?
じいちゃはどこでしか?
あれから、じいちゃはずっといないでし。
僕も寂しいでし。
お散歩も、夕方だけになっちゃったでし。
もう、朝起きたらお散歩なしでご飯食べるのにも慣れちゃったでし。
あ~あ。
じいちゃとお散歩行きたいでし~。
あ!じいちゃ!
ママさん!
じいちゃでしよ!
どこ行ってたでしか!
お散歩!お散歩行くでし!
「ジョン、ごめんね。
これからご飯作らなきゃいけないから、もうちょっと待っててね」
違うでし!
じいちゃが帰ってきたでし!
「……おはよ」
「うん、おはよ」
パパさん!
また朝から落ち込んでるでしか!
じいちゃですよ!
「ああ、ジョンは朝から元気、だな」
パパさん!
朝からそんなに元気ないと、じいちゃに怒られるでしよ!
ほら、じいちゃ!
……じいちゃ?
なんで黙ってるでし?
「……おはよ」
「……おはよ」
「……おはよう」
おねえちゃ!
じいちゃでし!
じいちゃが帰ってきたでしよ!
『…………』
じいちゃ。
なんでさっきから、悲しそうな顔して黙ってるでし?
また前みたいに、散歩いくかっ!って言ってほしいでし!
みんなも、そんな悲しそうな顔ばっかして!
じいちゃがせっかく帰ってきたのに、もっと楽しそうにするでし!
もう僕は怒ったでし!
「わっ!
どうした、ジョン!」
「ちょっ!
急に吠えないでよ~」
「なあに?
おなかすいたの?」
違うでし!
違うでし!
みんなじいちゃが帰ってきたでしよ!
なんで分からないでしか!!
あ、じいちゃ!
どうしたでし?
それ、僕のリードでし。
「あら?
どうしたのかしら?
急にジョンのリードが落ちたわ」
「……そういや、朝はいっつもおじいちゃんがジョンを散歩に連れてってくれたよね」
「ああ、そうだったな……」
じいちゃ!
散歩でしね!
お散歩いくでしね!
やったでし!
嬉しいでし!
「あらあら、ジョンったら、リードに向かって楽しそうにしっぽ振っちゃって」
「……散歩、いくか」
「えっ?」
「うん、いこっ」
「よし!
みんなで行こう!」
「あらあら、2人とも、仕事も学校もあるでしょ?
朝ごはんの支度だってあるし」
「ああ、だから俺たちは荷物持って出るよ。
朝メシはコンビニかなんかで買えばいい。
すまないが、君は俺たちを見送ったら、ジョンと一緒に帰ってくれるかな?」
「私は別に構わないけど」
「うん!そうしよう!
きっと、天国のおじいちゃんだって、その方が喜んでくれるよ!
ほら!
ジョン!
お散歩いくよ!」
なんでしかっ!?
みんなもお散歩いくでしか!?
わーいわーい!
みんなでお散歩嬉しいでしー!
あ!じいちゃも嬉しいでしか!
やっぱりみんなでお散歩嬉しいでしね!
「なんか、久しぶりだな。
皆でこうしてジョンの散歩するの」
「そうね。
ジョンがウチに来て、最初の何回かだけだったものね」
「そのあとは、朝はだいたいおじいちゃんに任せっぱなしだったし、夕方はみんなで輪番にしてたもんね」
「ほら!
ジョン!
置いてくぞ!」
待つでし!
待つでし!
いま行くでし~!!
あれ?
じいちゃは行かないでしか?
また腰痛いでしか?
仕方ないでしね~。
あれ?
どうしてお空に昇ってっちゃうでしか?
でも、なんだか、とっても嬉しそうでしね。
じいちゃが笑ってると、僕も嬉しいでし!
「ジョーン!
いくぞ~!」
はいでし~!
じいちゃ!
いってくるでしよ!!