第8話『瀧澤亮司』
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「そんな訳で、たまに美咲さんに
ご飯を作ることになったんだ。」
「ほぉう?伊織がねぇ…。」
今、僕は師匠こと、瀧澤 亮司の特別授業を終えて、2人で珈琲を飲んでいるところだ。
この特別授業は、学校側が一切関与しない個人的な授業なので単位も何も付かない。
だけど、僕はこの授業を受ける為にこの学校に来たと言っても過言では無い。
何せ、知り合いな上に、超一流料理人に個人指導をマンツーマンで受けられる場所など他に無いからだ。
「ところで、伊織…
その美咲ってーのは…美人か?」
「美人だよ。」
「よーし!なら、俺様が作りに行ってやるかー!
伊織!俺も行くぞー。」
「亮兄…別にいいけど、沙那恵さんに言っちゃうよ?」
「んぐっ⁉︎そりゃ無しだろ…?」
沙那恵さんは亮兄の奥さんで、
今は病気で入院中なんだ。
そもそも、亮兄みたいな超一流の料理人が
何故こんな料理学校にいるかと言うと、
その沙那恵さんに関係がある。
瀧澤 亮司。39歳。
20歳で渡米。ニューヨークを中心に活動し、
各コンクールを総ナメ。
その後、フランス、イタリアに渡り、
次々と権威あるコンクールで優勝。
25歳で三ッ星を獲得。
世界各国から依頼を受け、賞賛を受ける。
渡米した時に奥さんの沙那恵さんと出逢い、結婚。
共に世界各地を渡り歩いた。
その途中で沙那恵さんの病気が発覚した。
亮兄はアッサリと電撃引退を発表。
業界は騒然となったそうだ。
亮兄曰く、
今まで散々振り回して来たんだ。
アイツの側にいてやらねーと男じゃねーだろ。
との事。
その後、日本に帰国。沙那恵さんは入院し、
その近くにあるマンションに住んでいる。
そのマンションもアラブの石油王の人が
現地に豪邸をプレゼントした際、
ついでに日本にも拠点代わりに買っといてくれ。
と頼んでいたらしい。スケールが違うよね。
まぁ、親友である父さんに会いに年に1回は必ず帰って来てたから、僕は小さな頃から可愛がられている。
引退を聞いた亮兄の先輩でもある、
今の料理学校の理事長さんが、
名前だけでも在籍して欲しいと頼み込んで、
特別講師として在籍している。
何でも月に1回の特別講義以外は全て免除。
個人的な専用調理室も貰っている。
ものスゴイ待遇だけど、瀧澤亮司のネームバリューは桁違いである。去年だけで入校希望者が3倍に跳ね上がったらしいので十分以上に元が取れてるそうだ。
そんな瀧澤亮司には、過去から現在まで、
弟子入り希望者が殺到しているが、
その全てを亮兄は断っている。
だから、瀧澤亮司の弟子と言うだけでも、
騒がれてしまうのは間違い無い。
なので、僕が瀧澤亮司の弟子である事は秘密だ。
だから師匠の授業は学校の授業が終わった後になる。
ここなら誰かが来る事はまず無いらしい。
「そもそも、沙那恵さんに頼まれてるもん。
あの人はフラフラするから浮気しない様に
伊織がしっかり見ててね。って」
「クソったれ!沙那恵のヤツ、
監視役付けやがって!」
なんて言ってるけど、亮兄は沙那恵さんを
スゴく大事にしている。口では軟派な事を言ってるけど、浮気をした事は一度も無いらしい。
なんかカッコいいよね。
沙那恵さんは、ただの料理バカって言ってたけど、亮兄には内緒だ。2人がお互いに大事に思っているのは長年見ててスゴくわかるし。
「しっかし、伊織が色を知る年になったかぁ…
俺も年取る訳だよなぁ…。」
「もう…。そんなんじゃないよ!」
「カッカッカッ!照れるな照れるな!」
「あ、買い物もしなきゃだし、そろそろ行くね。」
「あー、俺も沙那恵のトコ行くかー。
説教してやんなきゃな!」
ちなみに亮兄が沙那恵さんに口で勝てた事は無い(笑)
スーパーに向かう途中で美咲さんに電話をする。
『も、もしもし?』
「あ、伊織です。今、大丈夫ですか?」
『も、問題無い。どうかしたのか?』
「今から買い物をしてから帰るので、6時過ぎには帰れますが、美咲さんは大丈夫ですか?」
『あぁ、大丈夫だ。楽しみにしてるよ。
6時過ぎだな。その頃に伺う。』
「わかりました。それじゃまた。」
電話を切ってスーパーに向かった。
オムライスかぁ…。
ちょっと試したい事あるんだよね。
美咲さん、喜んでくれるかな?
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