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第20話『小夜の過去』

今回は小夜の過去です。

私には家族と呼べる者がいない。


両親は私が3歳の時に交通事故で亡くなったらしい。らしいと言うのは記憶に無いからだ。

だから、両親に対しての思い入れも何も無い。


物心がついた時には私は伯父の家にいた。

親族で引き取り手がいなかったらしく、伯父ぐらいしかいなかったらしい。伯父は母親の兄で独身だった。ソムリエをしていて、口数の少ない物静かな人だった。


伯父の家は平屋の一軒家で、庭に犬を飼っていた。その犬が私の唯一の話し相手だった。私はいつもその犬と話していた。目が隠れた大きな犬だった。とても優しい犬だった。


伯父はほとんど家には居らず、日中はお手伝いさんが来て私を面倒見てくれていた。そのお手伝いさんとも話した記憶はほとんど無い。


伯父は休みの日になると、子供の私にワインの話を聞かせた。私は意味が解らなくても、話を夢中で聞いていた。それだけしか、伯父が話してくれることが無かったからだ。その話をしている時は優しい顔をしてくれるからだ。今になって思えば、伯父も子供とのコミュニケーションの取り方を知らなかったのだろう。


だが、その伯父も私が中学3年の時に癌で亡くなった。伯父は最後にこう言った。


『この通帳は小夜の名義にしてあって財産分与には関わらない様にしてある。肌身離さず持って困った事があったら使いなさい。』


その後、私は親戚筋の母親の従兄弟にあたる男の所に引き取られる事になった。引き取られる際に男はこう言った。

『寝たきりの母親と2人で暮らしている。その母親の面倒を見て欲しい。そうすれば、高校までは援助してあげよう。』

正直、胡散臭い男だとは思ったが他に身寄りが無い私はその話に乗った。しかし、公立の志望校に合格し、入学した後にそれは起こった。


金曜日の夜だったと思う。私は男の母親の面倒を見た後に部屋で休んでいた。男は突然、部屋に入って私に襲い掛かってきてこう言った。


『私はお前の母親が好きだったんだ、だから母親譲りの色気を持ち、母親に似ているお前を引き取った。だから、わかるだろう?高校に行かせて欲しければ言う事を聞くんだ。』


私は咄嗟に近くにあった花瓶を手に取り、男の頭を殴って逃げ出した。電車に乗り、アイツが知らなそうな所へ逃げた。どこに行っていいかわからなかったが、この街にいたくなかった。


そうして、私には家族と呼べる物が

一切無くなってしまった。


知らない街を歩いていると、1枚の貼り紙を見つけた。『従業員募集』それが今のオーナー、片桐夫妻との出会いだった。飛び込みで面接を受けて、とても不審がられた私は正直に今の状況を打ち明けた。すると、オーナー夫妻は涙を流して同情して採用してくれた。更には私がアパートを借りる際の保証人にもなってくれた。私は恩を返す為に一生懸命働いた。2人共、私を妹の様に可愛がってくれた。


アパート暮らしを始める際、伯父がくれた遺産を使わせて貰った。500万もの大金だった。私は伯父に愛されていた事を感じ、一人涙を流した。



私には家族と呼べる物がいない…

だけど、もし……




ピンポーン。


「はーい。お待ち下さい。あれ?小夜さん?」


「ただいま。」


「おかえ…り?…ん?」


「一度家に帰るって言った。」


「あぁ、書いてありましたね。」


「だから。荷物取って来た。」


「荷物?なんの?」


「今日からここに住む。だから必要。」


「へ…?」


「伊織は私を助けてくれた。私は伊織がいないとダメになったの。だから側にいる。」


「いやいやいや…ダメです!ダメです!

好きでもない男の所に住んじゃダメですよ!」


「私は伊織が好き。」


「はい…?」


「伊織が守ってくれたから。伊織が助けてくれたから。伊織がいないと眠れなくなったの。だから、責任取って?」


「す…好き?」


「うん。大好き。」






もしも……


もしも、私に家族が出来るとしたら…








私はこの人と家族になりたい…。








さあ!とうとう小夜が押しかけて来ました!

ここからが本番です!乞うご期待!

次回『修羅場』

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