第15話『桐野 小夜』
2人目のメインヒロイン、桐野小夜登場!
私の名前は桐野 小夜。
今は21歳で、このイタリアンレストラン、
『トラットリア キャンティーナ』で
ソムリエール見習いをしている。
人付き合いが嫌いな私が、
接客業を選んだのには訳がある。
嫌いと言うか信用していない。
信用しているのは、私を拾ってくれた
オーナー夫妻と死んだ叔父だけだ。
「小夜!そろそろ休憩入れ!」
「ん。了解。」
この人は片桐 晋也。
このキャンティーナのオーナーで、
5年前に高校中退の私を、アルバイトで拾ってくれた人だ。私の事情を知っている人でもあり、
ある意味で親代りみたいな人だ。
親と言うよりも兄貴に近いけど。
「小夜ちゃん、このジュース余ってるから
飲んでいいわよー。」
「ん。ありがと。」
この美人は片桐 琴音。
オーナーの奥さんで、10歳の娘「なぎさ」がいる。
ランチのみ店を手伝っている。
この人は母親と言うよりも姉みたいな感じだ。
ソムリエール見習いの私も、昼はワインは出ないのでホールを手伝う。店は40席くらいで、それほど大きな店では無いが、人気店でもあるのでそこそこの賑わいを見せている。
14時から一度、閉店して17時から再開する。
その間、2時間は休憩だ。
「おい!小夜!今日終わったら飲み行こうぜ。」
「嫌。」
「なんだよ、付き合い悪りぃな。
いいじゃねーかよ。」
「しつこい。嫌な物は嫌。
あと、呼び捨てしないで。」
コイツはキッチンスタッフの矢崎。
オラオラしてる男で仕事もいい加減。女性にもだらしが無い。オーナーも人手がいないのでしょうがなく使っている。休憩の度に話して来て私を口説いてくる。ウザい。
私は母親ゆずりの美人だ。叔父が言っていた。
だけど、この生来の色気は要らない物まで呼び寄せる。嫌な思いをしたのは一度や二度では無い。
コイツもその1人だ。
私は矢崎を無視して、ワインの本を読む。
勉強はいくらしても足りない。
ソムリエだった叔父に追い付くのは、
いつになるだろう。
16時からディナーの準備に入る。
琴音さんは帰ってしまうので、ホールに2人アルバイトが来る。基本的に店はホール3人、キッチン3人で回している。
夕方になってアルバイト達が来る。
「「お早うごさいまーす!」」
「ん。お早う。早く着替えて。」
この2人は桜井くんと新見さん。
大学生のアルバイトでカップルみたいだ。
真面目にやってくれてるから問題無い。
「お早うございます。あ、小夜さん
お早うございます。」
「ん。伊織。おはよ。」
この子は保科 伊織。キッチンのアルバイトをしている調理師学校の専門学生。私の一番のお気に入り。
なぜ、お気に入りかと言うと前髪が隠れていて昔、叔父が飼っていた犬に雰囲気が似ているからだ。なんか可愛い。性格も素直だし。
叔父が飼っていた犬は、孤独だった私には唯一の癒しだった。あの子がいなかったら私は耐えられなかったかもしれない。
この子はオーナーの知り合いらしい。
正確にはオーナーの先輩からの紹介。
その先輩はこの業界にいる人間なら、
誰でも名前を知っている。あの瀧澤亮司だ。
その瀧澤亮司の紹介なのだからスゴイ。
連れて来られた時も、本人の印象よりも
瀧澤亮司のインパクトの方が強かった。
でも、今は私の可愛い後輩。バイトしている間は目を掛けている。私の癒しだ。
「ん。伊織。頭にゴミ付いてる。」
「あ、ありがとうございます。」
ん。照れてる。可愛い。撫で撫で。
「いや、あの小夜さん?ちょっと…」
「ん。取れた。問題ない。」
弟がいたらこんな感じなのかな?
とにかく、伊織は可愛い。
だけど、伊織はそれだけじゃない。
バイトを始めて1ヶ月、真面目で料理のセンスもある。オーナーも気に入ってるみたいだ。
ただ、矢崎はそれが気に入らないみたいだ。
私が可愛がっているのも気に入らないのだろう。
伊織が矢崎に何かされない様に見ていよう。
しかし、私にも困っている事がある。
最近、アパートに怪文書が届く様になった。
『イツモオマエヲミテイル』
『オマエハオレノオンナダ』
『アイシテル』
無視して気にしない様にしている。
ストーカーなのかな?
アパートの場所はオーナー夫妻くらいしか知らない。
正直、怖いがオーナーに迷惑は掛けたくない。
ここ、一月の間だ。店の客だろうか?
どちらにしろ、様子を見るしかない。
ん。まずは仕事。
15話にしてようやく2人目のヒロイン小夜が出て来ました!これからが面白くなって来ます!
次回は伊織視点『バイト先』お楽しみに!




