第1話「恋しい母の味」
初投稿です。よろしくお願いします。
私の名前は高峰 美咲。
外資系企業の「三洋商事」に勤めて2年目のOLだ。
自分で言うのもなんだが、自分は整っている容姿をしているらしい。高校時代から無闇にモテる。主に女性に…。
「高峰さん、今日も素敵ねー。」
「凛として、カッコイイー!」
「あれで英語もフランス語もペラペラなんでしょー?」
「あぁ…お義姉様…抱いて欲しい…。」
……最後のは聞こえなかった事にしよう。
そんな感じで昔から女性からの人気は高い。
男性も寄っては来るが自信過剰な男ばかりだ。
「高峰くん。いい店を見つけたんだが、今夜あたりどうだい?もちろんOKだろ?フッ…」
声を掛けて来たのは先輩社員の風間さんだ。
女子社員からはイケメンと言われているらしいが私はチャラ男が好きでは無い。もちろん答えは、
「すみません。用事があるので無理です。」
「そんなツレない君もイイね。でも、このボクが誘っているんだ。是非付き合って欲しいな。」
この人ナルシストな所があるのにどうしてモテるんだろ?私には気持ち悪くてしょうがない。
「すみませんが、他を当たって下さい。
失礼します。」
「仕方ない。また誘うよハニー。
お互い頑張ろう、またね。」
颯爽と去っていく風間さん。早速、他の子に声を掛けている。ホント気持ち悪い。誰がハニーだ!
死ねよクソ野郎。なんて私は立派な社会人。
決して顔に出したりはしない。
「風間さんに誘われたのに、軽々しく靡かないのも素敵ねー。」
「ホント、ホント!仕事も出来るしカッコイイわー」
「何でも出来そうだよねー」
「美咲先輩ー!今日ランチ行きましょうよー!」
「お義姉様の薫り…クンカクンカ…」
オイ!最後のヤツ!近寄ってくんなよ!
私は百合の世界には興味ないから!
「高峰君」
「あ、岸田部長。お早う御座います。」
「今日の商談の件だが、通訳を頼みたい。大丈夫かね?」
「問題ありません。11時からでしたね?そう思って資料の準備も出来ております。」
「流石だね、優秀だ。では頼むよ。」
「畏まりました。」
入社2年目にして仕事は順調と言っていいだろう。
群馬県の山奥から出てきて、外語大学に無事合格。
現在の会社に就職が決まり、今の所は順風満帆と言っていいだろう。
だが、そんな私にも悩みはある。
今の私の悩みは食生活だ。
実は、私は料理が下手くそだ。
いや、下手くそと言うのも烏滸がましい。
壊滅的と言っていいだろう。
昔、実家で弟に料理を作った時に
「姉ちゃんは、いつか人を殺すから料理はヤメろ!」
と言われた。そこまで言う事は無いだろう?
確かにレシピ通りに作ったのはずなのに、何故だ?
練習もしたが上手くならない。
母親からも匙を投げられた。解せぬ…。
そんな訳で、私の食生活は外食かコンビニ、
そしてホカ弁に片寄る。特にホカ弁は常連だ。
「あ!美咲ちゃん!いらっしゃい!今日は何にする?チキン南蛮弁当がおススメよ。」
当然、弁当屋のおばちゃんは顔見知りだ。
「じゃあ、それにしよっかな?」
「毎度ー!チキン南蛮弁当一丁ー!」
温かい弁当を持ちながら家路につく。
今のマンションは大学を卒業してから2年前に越してきた。3階で1LDKでちょっと広めの部屋だ。セキュリティがしっかりしているのが気に入っている。
「ただいまー。」
誰も居ないが独り言を言ってしまうのは寂しいのだろうか?とりあえず、スーツを脱いでラフな格好に着替える。
戦闘モードは解除だ。
まずはご飯食べようかな?
あ〜…たまにはオカンの煮物食べたいなー…。
もう3年くらい食べてないかなー?
学生の頃は、学食なんて便利な物があったから、それ程不便には感じなかったんだよね。
昔はむしろ毎日外食なんて贅沢!なんて思ってたけど、今となっては家庭的な味が恋しい毎日…。
何で私、自炊出来ないんだろ?
あっ!ヤバッ!洗濯物取り込むの忘れてた!
ベランダに出しっぱだ。
あれ?ブラジャーが一枚足りない?
まさか?下着泥棒⁈ここ3階だよ⁉︎
ん?よく見ると隣の部屋のベランダにある?
ん〜⁉︎届かない?微妙に届かない!
どうしよっかな?
確か、先月若い男の子が越して来てたよね?
挨拶きてたし、大人しそうな子だったけど、ちゃんと挨拶出来るなんて今時の子にしてはしっかりしてるな。と思ったくらいで特に印象は無かったな。
ここは、ちょっとお邪魔させて貰って取らせて貰おう。下着と言わずに洗濯物と言えば取らせてくれるだろう。万が一、部屋に入られたくなくて取って来ますとか言われたらどうしよう?下着とか見られたら恥ずかし過ぎる!
いや、女は度胸だ!これでも剣道2段。いざとなればそこいらの男に負ける事は無い。
そう意気込んで隣の部屋のチャイムを鳴らす。
それが彼、「保科 伊織」との運命の始まりだった。
視点の変化は主人公とヒロインのみです。
全部で100話くらいで完結する予定です。