第九話 異世界の村〈タルチット〉
北九州≪フロンティア≫を出発し、三日目、航空写真に写っていない村〈タルチット〉に着く。真司はこの村の悲しき現実を知る。野村と橋本はこの村で大きく成長する…?!そして、新たな出会いも…
地球なめんなファンタジー『日本異世界転生記』第九話!
***
北九州≪フロンティア≫から2500㎞地点ーーー
真司たち特殊調査部隊は航空自衛隊が撮影した航空写真とコンパスだけを頼りに、未知なる大陸の道なき道を進んでいた。
すると、大きくはないが小さくもない村が見えた。
「あれ?おかしいな。こんな村写真に写ってるか?」
真司が野村に尋ねる。野村は少し首をかしげ、少々黙り込んだ後、写真の現在地であろう場所を指し、答えた。
「ここ、なんか変なもやかかってません?もしかしたら、写真には写らないような細工をしてるのかも…」
真司は「なるほど」と頷いた。すると瞬間、奇声をあげながら槍を持った集団が襲い掛かってきた。
「っ!!おい!逃げろ!」
真司は運転していた隊員に指示した。すぐさま戦闘車両が発進し、それを見たゲリラは驚いて離れた。
少し距離をとって、武装ゲリラに車内から応答を試みた。
「貴様ら!急に襲い掛かってきてどういうつもりだ!このまま攻撃を続けるようなら、こちらも然るべき対応をする。」
武装ゲリラは戸惑いながら、応答した。その眼には、敵対の色はもうなかった。
「・・・おまえら、王国軍じゃないのか?どこの国の者だ。」
真司たちは敵対の意志がないものだと判断し、両手を挙げながら言った。
「私たちは、日本という国の軍隊です。あなたたちと争う意志はありません。あなたたちはこのあたりの住人ですか?」
なるべく丁寧に質問する。下手に刺激して戦闘状態になると厄介だからだ。
「・・・に、ほん?聞いたことがない。ここから遠いのか?」
真司の質問には答えず、また訊いてきた。
「いえ、実は異世界から転移してきまして・・・」
そういった瞬間、ゲリラの目の色が変わった。
「それは、ほんとか?だとしたら、たいへん。ここ最近王国軍の動きが活発なのもわかる。」
真司たちはうまく声を聴きとれない。
「おい。今すぐ俺たちの村へ来い。お前たち、すごく危険。」
「え?」
真司たちは驚いた。突然そんなことを言われても、従順に応じるわけにはいかない。
「すみませんが、あなたたちはなぜ突然私たちを襲ったのですか?」
ゲリラは顔を見合わせながら、焦ったように言った。
「お前たちを、王国軍だと思ったのだ。無礼をすぐにでも謝りたいのだが…いまは時間がない。早く我々の村へ!」
そう言って、走り出した。真司は少なくとも敵ではないことを確信し、後についていった。
「先ほどは、たいへん無礼なことをした。どうか許してほしい。」
ゲリラが深々と頭を下げた。ゲリラはこの村の自警団だったようだ。
真司・野村・橋本はベルジャと名乗るこの男に案内され、応接室のようなところで話していた。土壁でできた簡素な家であったがしっかりとしたつくりはいかにも頑丈そうであった。
「いえいえ。しかし、安心しました。このように話の分かる方たちで。」
真司は本当にほっとしていた。ふと、ある事を思った。
「あの、なぜあなたたちは日本語を?」
さっきから、日本語でずっと会話していた。そのことを不思議に思ったのだ。
「ふふ。そうか。あなたたちは日本語という言葉をはなすんだね。実際私たちは日本語など話していないよ。」
「え?どういうことですか。」
「言葉を自由に理解できるのは、私たちの国ではあたりまえだ。魔法の力を借りて、異国の言葉を母国語のように理解し、話すことができるんだよ。」
「え!そうなんですか!魔法とは…すごい。」
「魔法はもともとは違う国の得意な技だったんだが、我々の国〈ガレリア王国〉が強引に力を盗んだんじゃ。そのおかげで、国内は便利になったが、敵対する国も多くなった。」
ベルジャはテーブルの上にあった<ラッポイ>という、柑橘系の果物に手を伸ばしながら、話を続けた。
「我々の村は見ての通り貧しくてな、国に納める上納品を作るので精一杯だ。村の若い衆はみな、王都へ出稼ぎに行くか、兵役についている。我々は王都へ出向き、上納をもう少し待ってくれと頼みに行った。その次の日から、王国軍による上納の催促が来るようになった。最初はみな、我慢していたが、ある時、子供が王国軍の騎兵に石を投げつけた。その子も我慢の限界がきていたのであろう…だがあろうことか、騎兵はその子の腕を切り落とした!!我々年寄り連中も我慢の限界がきた。ついに武装蜂起することを決意した。その日から王国軍と我々は争うようになったのだ。」
真司は黙って聴いていた。この村の暗い過去。今も続く軍との争い。
「ここは〈ガレリア王国〉という国の一部なんでしょうか。」
真司はベルジャに尋ねた。
「ああ、そうだ。このあたりはここだけだがね。とにかく広いんだ。ここは辺境だから村も人も少ない。王都へ行けば、たくさんひとがいるよ。」
「国境らしきものが見当たらなかったのですが。」
「このあたりは国境なんてないよ!不毛の土地が広がってるだけだ。」
ベルジャは笑いながらそう答えた。
「なるほど…この写真を見ていただきたいのですが。」
真司は航空写真を見せた。
「ほう…!なんと精巧に描かれた地図だ…!なるほど。ここに我々の村がないというわけだな?」
「はい。これはどういうことなんでしょう。」
「はっはっは!これも魔法の力だ。こんなちっせえ村、見つかったらすぐに攻められる。だから最低限、遠くからは見つからないようにカモフラージュしてるわけだ!」
ベルジャは意気揚々と言った。
「そういうことでしたか。いろいろ教えていただきありがとうございます。」
「いやいや、無礼をしたお詫びだ。」
ベルジャは白髪混じりの初老だが、屈強な肉体と力強い目はこの村のリーダーであることを証明していた。王国軍とやりあうことができるわけだ。
それから少し談笑し、ベルジャと家を出た。
きゃぁぁぁぁ!!!!
悲鳴が村に響く。
その先では、なんと頭からウサギの耳が生えている少女が、村人に捕まっていた。
読んでいただきありがとうございました!!楽しんでいただけたら、とっても嬉しいです!
ぜひぜひ、ご感想・評価のほうよろしくお願いします!皆さんのご意見、参考にできればなと、思います!評価もすごく励みになります!!ありがとうございます!!




