第一話 転移
拙い文章ですが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。
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時は、2052年、新天皇が即位されてから33年がたつ年のこと、世界情勢は過去にないほど緊迫していた。平成が終わり、新たな時代の幕開けとなった安久元年、それはまさに、この荒れ狂う世界の序章だったのかもしれない。
アメリカはまず、中国と二度戦争を起こした。それは近隣諸国を巻き込んだ大戦といえるものだった。しかし結果は、どちらも引き分けに終わり、中国の国際的地位と発言力を高めただけに過ぎなかった。その後、世界各地で国同士の衝突が起こり、ついに人類を滅ぼしかねない戦争が眼前に迫っていた。もはや、そこに戦争を止めようとする者はいなかった。
「中継です!ただいま海上自衛隊の最前線部隊が横須賀を出港します!史上最大の実戦部隊ということで、すさまじい迫力です!この艦隊は・・・」
テレビから垂れ流される連日の報道に、真司は嫌気がさしていた。真司は陸上自衛隊第十二旅団第二普通科連隊に所属する自衛官である。だが真司は戦争へ突き進むこの国を憂いていた。いつ自分も戦場へ赴かなければならないんだと考えると、頭が痛くなる。
「速報です!只今積乱雲と思われる巨大な雲が誕生しました!その雲は現在急速に発達し、地球を覆うように発達していきます!専門家によると・・・」
突然の聞きなれない速報に真司は驚いた。最近は速報などといっても、戦争関連や政治関連のニュースばかりで気象に関するニュースなど久しぶりであったから。
(そこまでのことなのか…?)
真司は不思議に思った。ニュースを注意深く聞く。
「このような雲は今まで観測されたことがなく、極めて異常です。発生過程、発達スピード、どれをみても過去に例がなく、今後どのような影響を及ぼすのか、注意しなければいけません。落雷には十分注意して・・・」
専門家らしき人物がこの突然できた異常な巨大雲について説明している。続いて、その雲の映像が流れる。それはまさに、この世の終わりを予感させるような分厚い真っ黒な雲である。真司は目を丸くしてその映像を注視していた。どんどん巨大化していき、しまいには映像は真っ暗になった。おそらく日光さえも遮ったのであろう。
「衛星から地球全体が真っ黒な雲に覆われている写真が送られてきた模様です。なお、この通信を最後に衛星との通信は遮断された模様です。繰り返します・・・」
ついに衛星との通信が切れたというニュースにいよいよ真司も危機感をもった。
(いつ出動命令が来てもおかしくないぞ…!)
この真司の予感は少し変わった形で的中することになる。
ーーズダーーーーーンン!!!!!ゴロゴロッ!ドシャーーン!
轟音とともにすべての電気が消える。暗闇の中で、真司は叫ぶ。
「うわっ!亜希!さくら!大丈夫か!!…く、くそ!」
体が宙に浮くような、不思議な感覚が身体を支配する。妻と娘の心配をするが、それどころではない。
(な、なんなんだ!さっきの轟音は雷…?雷に打たれたのか?)
考える間もなく、轟音は止み、身体は自由を取り戻した。辺りは異様な静けさであった。
ープルルルル!受話器が踊りだす。それと同時に真司は我に返り、すぐさま電話に出た。
「佐竹真司三尉、今すぐ高田駐屯地へ出動せよ」




