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エリート軍団。

学園は夢ノ原学園前駅でバスから降りて、約10分の位置にある。

なんと言っても夢ノ原学園は大きな校門をくぐっても小さくしか見えない。

つまり、


校門をくぐってから学園までの距離が遠いのだ。

いつもへとへとになって歩いていくがこれは名物化されてきている。


美雪からの不審なメールが届いたので早く行こうと思って走るのだが華子は足がさほど早くない。

それでも、一生懸命走った。


「はぁ、はぁ、やっと着いた。」


はぁはぁと息を漏らした華子が学校につくと玄関の前には二、三年生のクラス表が貼られていて、その周りには生徒が群がっていた。


華子も自分のクラスが気になり背伸びをして名前を探した。

三年生の枠を必死に見てみると、三年二組の欄に


『聖川華子』


と、書かれているのが分かった。


すると後ろからぽんっと背中を叩かれた。


驚いて後ろを見てみるとそこには美雪、そして一年生の時に同じクラスだった八乙女鈴と春日美穂の姿がある。


「鈴っ、美穂ちゃん。おはよう。」


「おっはー。華子ー。」


鈴は勉強もトップクラスの上に運動神経抜群、その上誰もが一度は振り返るほどの美人である。髪は茶色でてっぺんでお団子をしているいかにも元気そうな格好。


隣で笑っている美穂は小柄で桃色の髪色の可愛い三つ編みが印象の女の子である。


「華子ちゃん。同じクラスだよ。」


美穂ちゃんの可愛らしい声が響く。


「ええっ。嬉しいな。よろしくね、二人とも。」


「よろしく。華子っ。」


鈴はぎゅっと抱き着いてくる。


「よろしくね。華子ちゃん。」


ニコニコと笑いながら美穂は前を歩く。それを見て慌てて鈴が隣を占領する。

華子は二人の後ろで歩いているとふと思い出した。


八方美人に可愛い人形のような女の子。二人の印象としては最高なのである。

実際にモテている。


だが、華子は知っていた。

二人の裏の顔はとても表には出せないと。

そう感じたのは一年生のときであって、その性格というのも。


鈴は八方美人なのはいいのだが実はとてつもなく無神経であり俗で言うビッチという類である。


(綺麗な顔して怖いのよね。この人。)



そして隣の美穂。

美穂というのは可愛くて愛らしいのだが重度のヤンデレである。

二人とも自分がそんな人だということを隠して日々を送っている。


この二人とクラスが一緒と考えるだけで大丈夫か、と思う半分でそれがとても楽しみな自分がいる。


新たなクラスは、といっても小等部からの付き合い(華子の場合はぼっちだが)の人が多いのだがやはり進級したことの喜びによるものか胸が高鳴るのが感じられる。


そんな思いを抱きながら二人の後ろを歩いていると、


「「きゃーっ。」」


女の子のと思われる悲鳴が朝の静かな廊下に轟いた。

驚いて三人が後ろを振り向くと

数人の二年生が目をハート型にしてどこかを見つめている。

その目線の先には、というと。



「あはは。」


「なんか、わかった気がする。」


華子は苦笑いをし美穂は呆れた声を出した。


なぜ後輩達が悲鳴をあげて目を輝かせるのか。

目線の向こうにいるそれは学園の名物、


“くそエリ騎士団”


くそエリート軍団の中にいるイケメン四人のことである。


まるでしゃららんと音が出るような登場をした彼ら四人は彼女たちに微笑んで華子達の前を通り過ぎた。


先頭にいるのは神楽坂瀧(かぐらざかたき)


学力は四人の中では一番いい。

黒髪で右の前髪だけ極端に長く左にかけて短くなっていく変な髪型で眼鏡をかけている。


瀧のさっきまで微笑んでいた王子様のような笑顔が急に消え去り次に現れたのは表現出来ないほどの冷酷な顔であった。


「はぁ。疲れる。」


やっと口を開いたと思えば第一声はこれだ。

この瀧という男は実はとてつもなく冷徹で、ドSである。


「瀧。おはよう。」


ニコニコと鈴が笑いかける。

ナイスだ、鈴、と華子は思った。


「おはよ。」


瀧は鈴相手では少し和らぐのだ。

華子は流石の瀧でも鈴には勝てないだろう、と一人でムフフと思う。

しかし、


「瀧…」


鈴は瀧のことを見て目を輝かせた。

鈴はすぐ人を好きになる。瀧はすぐ人を好きにさせる。


“ビッチな鈴も、瀧にはかなわないと言うわけ、か。”


呆れて華子がため息をつくと後ろからにゅっと手が出てきてその手は少し前にいる美穂の肩にぽんとついた。


後ろを振り向くとそこに立っていたのは長身の男だった。


「うキャッ。(そう)ちゃん!?」


美穂ちゃんの可愛らしい声が炸裂する。


奏ちゃんと呼ばれたその男もくそエリ騎士団の一人で本名は七瀬(そう)

紺色のマッシュルーム程は行かないがクルクルとした髪型をして美穂に爽やかな笑顔を向ける。


こちらもこちらで厄介で、何も発さなければ爽やか系お兄さんなのだが…


「美穂ッ!昨日の見た!?えー、見てないの?オススメだよって言ったでしょ?BLアニメだよ。」


いきなり炸裂した弾丸トーク。

男子でありながらBL好きな通称“腐男子”というジャンルに入る。

こちらも女子をドン引きさせるであろう男だ。


残り二人はというと…


………………こちらもこちらで酷い。




一人は特に美人やお姉さん系の女子、男子からモテていて、笑顔が可愛いらしい鏑木亮(かぶらぎりょう)という男。


赤い髪色で前髪は真ん中だけ垂らしサイドにわかれ、ぴょんと跳ねて、眼鏡をしている。


実は笑顔でゆっくり、あざとくて可愛いというのは見える人には見えるだけであって、目をとろんとして、ゆっくり話すのは


眠たいだけなのだ。


そう、言った通り亮はぐーたら脱力系男子であり、アニメオタクで厨二病(本人は認めていないが)なのだ。

彼は無意識に左手で目を隠しているのを知らないのだろうか。



今もどこか遠くを見て「あぁ。」と溜息を零し瀧の背中によしかかりあくびをしている。



そして、最後の一人は四人の中でも一番イケメンと言われている流川竜(るかわりゅう)


学園内では好青年アイドルキャラ。


生徒だけではなく先生、保護者にまで好かれるほどの人気であり勉強もできるし運動神経抜群、スタイルも顔も上の中くらい(世間一般的に)。


いわゆる学園の王子様だ。


しかし、ここはキッパリと言っておこう。


彼は自分がイケメンなのを理解し利用して無駄な笑顔を見せびらかしている

“ナルシスト”

という強者だ。

さらに自分のことを高く評価し出来ない奴を影で嘲笑い毒舌を吐く一番の問題児であった。


このグループの中ではムードメーカーであり、瀧は彼の一番の理解者であるのでグループの中では丸く収められている。


世間一般的に見ると騎士団と言ってもいいくらいのエリートの中のエリートグループであるのだが……



裏を見ればまるでホストなのではないかと疑うような性格に難がありすぎる詐欺師グループである。



新学期から見るものではなかったと

少し後悔する華子であった。


「華子。早く教室に行こうよ。」


急かす鈴にはいはい、と言い三年二組に向かう。

すると、

後ろで歩いている瀧達も華子達と同じ方向に向かう。


まさか、まさかそんなわけないと思ったらまさにその通りだった。


「………………………………これは、どういうことなのだろうか鈴さん。」


「あははー。」


真顔で発する華子の隣で笑顔で言葉を濁す鈴。


笑い事じゃねーぞ、と華子は思う。


三年二組の前に七人がかたまる。


ガラガラっと教室を開けると、美雪が大変だというような、眉間にシワを寄せた顔で飛んできた。


「華子ぉー!大変だ!くそエリ騎士団と美穂と鈴と同じクラスだー!」



「………うん。」


「て、いるし!?」


華子は思いもしなかった。

こんなに性格に難がありすぎる人達と同じクラスだったなんて。

こんな悲劇あるだろうか。

朝からこんな感じだぞと華子は白目になる。



「おい。退けよ聖川。」


「んぎゃっ」


瀧に突然声を掛けられ華子は人ではない声を出してしまった。

何するのと後ろを振り返ると、ニコニコと笑っている奏が立っていた。


「あ、ひじりん。そういえばひじりんって腐女子だったよね!この前のオススメって言ってた漫画見た?

見たよね!?いやあの主人公はもうダメだと思うんだよ。

何がダメだって?それはね……」


耳元で大きな声で炸裂する奏の声がキーンと耳に響いて思わず後ろによろめくと、ドンッと亮にぶつかる。


「ごっ、ごめん。」


「貴様、この俺に触れたな…?」


キラリと眼鏡が光って左手をふるふると動かし何かをぶつぶつと呟いている。


「華子。私初っ端からこのテンションはきつい。

どうなっちゃうんだよ。」


その前で美雪が呆れた顔で呟く。


本当にその通りだ。

最後の一年を楽しみましょうねとよく言われるが疲れる方がよっぽど多いと思った。


「…もう、もう、どうなっちゃうのぉぉぉ!?」


おじいちゃん。

私、変なクラスに入ってしまいました。


**


春坂美雪


華子の親友。天才ピアニスト。


しっかりしている姉御肌タイプの印象を受けるがドがつくほどのツンデレであり、彼女のモットーは「世界はAboutで出来ている」だそうだ。

家事全般得意で華子に世話を焼いている。


**


八乙女鈴


八方美人であり社長令嬢で、運動神経抜群、学力トップのチート女子。

の、裏腹に腹黒でテンションが高い。

今まで付き合っていた人数は両手で数えても足りないくらいだと言う。





































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