魔王と勇者の最終決戦(仮)
魔王城、玉座の間にて。
勇者「魔王!! 覚悟しろ!!」
魔王「まあ、待て。勇者よ。そう焦ることもあるまい。ちょっと話でもしようではないか?」
勇者「俺には話などない!! 貴様の時間かせぎになどのらん!!」
魔王「待てと言っておろうに……。これはお前にとって、とても大事な話なのだ」
勇者「何だとっ!? どういうことだ!?」
魔王「うむ。何を隠そう、話というのは、お前のパーティー・メンバーのことだ」
勇者「何? パーティー・メンバー?? それがどうかしたのか?」
魔王「うむ。パティ―・メンバー5人の内、お前以外は全員女。まさにハーレムと言う奴だな?」
勇者「え? いや、これはたまたまだ!!! たまたま!!!」
魔王「ほう……そうなのか?」
勇者「も、勿論だ!!! 能力の高いものを選抜したら、たまたま女性ばかりが集まったんだ!!! やましいところなど何もない!!!」
魔王「ふむ……まあ、それは別に良いのだが、勇者よ。お前、一体全体そのメンバーの内の誰と結婚するんだ?」
勇者「な、なにぃぃ!!!? 藪から棒に何の話だ!!!?」
魔王「いや、なに。少し気になってな……お前たちもそうであろう?」
そう言って魔王は、勇者の後ろから魔王の間に突入してきた、美女・美少女らに視線を向ける。
女剣士「なるほど……」
魔女「確かに……」
王女「気になりますわね」
メイド「ですです」
女達は一斉に、魔王の言葉にうなずく。
魔王「それで、勇者よ? 誰が本命なのだ?」
勇者「え? ……いや、それは……」
女剣士「もちろんあたしだよな、勇者! 昨晩、月明かりの下で、あたしの中に子種を授けてくれたんだから!」
そう言って、ビキニアーマーを着た女剣士(爆乳)が、いとおしそうにお腹を撫でる。
勇者「えっ……?! いや……それは……」
魔女「ちょっと!! どういうことよ!! わたしとSEXする筈でしょ!! 今日、魔王を倒したら!! 約束したじゃない!! 田舎に一軒家を立てて、二人で家庭を築こうって!!! 子供は三人ぐらいほしいって!!!」
漆黒のレオタードの上に赤いマントを羽織った少女(美乳)が口を挟む。
王女「お二人とも何をおっしゃっているのですか? 勇者様は魔王殺しの英雄となれる御方なのですよ? 平民風情はふさわしくありません。勇者様にふさわしいのは、あたくしの様な高貴な生まれの女性ですわ。そうですよね、ゆ・う・しゃ・さ・ま?」
勇者「えっ?! いや……それは……」
狼狽する勇者。
メイド「ちょっと待って欲しい。私は今、勇者様の子を妊娠してる。当然、最初に妊娠した私が勇者様の妻になるべき」
魔女「なに言ってんのよ!!! 最初に妊娠したのはわたしよ!! わ・た・し! 旅に出て間もないころだったから、魔王退治の邪魔にならないようにって、わざわざ中絶薬を飲んだんだから!! ねえ!! そうでしょ!! 勇者!! あなた言ったわよね、魔王を退治する前だから中絶してって!!」
勇者「えっ。えーと……その……」
狼狽する勇者。
王女「ふふふふ。中絶してと勇者様がおっしゃったのは、魔女との子なんて作りたくないからに決まっているでしょう? 平民の女なんて勇者様にとって、性欲処理機みたいなもの。無学な魔女さんには分からなかったようですけどね?」
魔女「そんなわけないじゃない!! 勇者!! そうでしょ!!! 魔王を退治したら、あらためて子供を作るんでしょ!! そういう約束でしょ!!!」
勇者「え、えーと……そ、その……」
女剣士「勇者! はっきりしろ!」
魔女「そうよ!! はっきりしなさいよ!!」
王女「勇者様、ここは平民たちにきっぱりと拒絶の言葉を向けるべきですわ」
メイド「うん。白黒つけて欲しい」
勇者「そ、そんな、こと……言わ、れても……」
魔王「ふははははは。大分お困りのようだな勇者様一行よ!」
勇者「お、お前のせいじゃないか!?」
魔王「ぐははははは。まあ、そう怒るな。お前たちに、この魔王様がとっておきの解決策を授けてやろう」
勇者「解決策?」
魔王「うむ。解決策だ。その名も〈バトルロワイヤル〉! 強いものが正義!! それこそが絶対不変の法則!! だからお前たちで殺し合いをして、生き残った者が勇者の妃になるのだ!」
女剣士「なるほどな」
魔女「悪くないわね!!」
メイド「ですです」
王女「平民たちに、身の程というものを見せつけてあげますわ」
そう言って、お互いに得物を向け合う勇者パーティーたち。
勇者「ちょ、ちょっと待って!!? 罠だよ!! これは罠だよ!!!?」
女剣士「うるさい!!」
魔女「勇者はあっちに行ってて!!」
王女「女には、戦わねばならない時というものがあるのです」
メイド「覚悟!」
勇者「そっ?! そんなばかなっ!?」
魔女「先ずはあんたよ、メイド! 勇者の子を孕んでるなんて許せないんだから!! ファイヤーボール!!」
魔女が呪文を唱えると、杖の先に火球が出現。メイドへと向かう。
メイド「そう来ると思ってた」
メイドは冷静沈着に対応。いつの間にやら握っていたロープをグイッと引っ張る。
そのロープは王女のドレスへと繋がっていて、王女を強制移動させる。――ファイヤーボールの射線上へと。
王女「え!?」
茫然と目を見開く王女。
次の瞬間。
王女「ひぎゃ!?」
火球が王女を直撃。大爆発を引き起こす。
ボタッ。ボタッ。
爆発ののち、何かが天井から降ってくる。それが何なのかを確認した勇者は
勇者「ひいッ!?」
情けない悲鳴を上げる。
天井から落ちてきたもの。それは細切れにされ吹き飛ばされた、王女の手足だった。
メイド「王族殺しは極刑。法でそう決められている」
魔女に指をさし、メイドがそう宣言する。
魔女「フン!! 王女は魔王の攻撃で死んだのよ!! 証拠は何もないし、あとは目撃者を皆殺しにすればいいだけの話でしょ!! ファイヤーボール!!」
魔女は再度、メイドに向かって火球を放つ。
否。放とうとした。
魔女「あぎゃ!?」
次の瞬間。魔女の持つ杖が暴発。爆発によって、魔女の上半身が吹き飛ぶ。
メイド「そう来ると思っていたと、さっきも言った。当然、小細工をしてある」
メイドが淡々と述べる。
女剣士「なんて卑怯な奴!」
女剣士は油断なく剣を構え、メイドを睨み付ける。
メイド「卑怯じゃない。戦術。さあ、勇者様、この女剣士を勇者様の手で斬り殺してください。それで終わりにしましょう」
そう言ってメイドが、女剣士の背後にいる勇者へと声を掛ける。
女剣士「バカなッ!?」
勇者の裏切りに、女剣士が慌てて背後を振り返る。
そして。
背中を見せた女剣士に、メイドが短剣を投擲。
女剣士「あ!?」
短剣はあっさりと女剣士の心臓に命中。
女剣士はどうと崩れ落ちる。
メイド「さあ、勇者様。これで邪魔ものはいなくなりました。めでたしめでたしです」
勇者「そんな……そんな……」
たった今まで生きていた筈の仲間たちの死体を前に、勇者は茫然自失。廃人の様になっている。
魔王「うむ。あっぱれである。さて、計画通りに勇者ハーレムは壊滅したことだし、一件落着だな。さらばだ、勇者よ。もう会うことも無いだろうがな。がははははは」
高笑いを残して魔王は転移。姿を消す。
こうして、世界に平和が訪れた(仮)