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花言葉~記憶の代償~

作者: あすと

「紫乃、俺さお前の優しいとことか

真っ直ぐなとことか全部

ずっと前から好きだった」

 俺はまだ知らなかった

「だからさ、俺と付き合ってくれ」

「馬鹿、その言葉何年待ったと思ってるのよ」

 この幸せの裏にあんな悲劇が待っているだなんて




 俺、希美(のぞみ) 愛斗(あいと)は長年思いを寄せていた(たき) 紫乃(しの)に告白した

 告白が成功して舞い上がっていた俺は

 鳴り響くパトカーのサイレンなんて気にならなかった



 家に帰ると母親が鬼の形相で

「愛斗大変、紫乃ちゃんが刺されたって」

 えっ、今なんて

「今から病院に行くから荷物おいてきなさい」

 病院へ向かう車の中で揺られながら

 紫乃が刺されたという事実を受け止められないでいた



 病院につくと緊急手術室へ案内された

 扉の前では紫乃の母親と兄の(たき) 紫央(しおう)とその恋人の白爪(しろつめ) 四生(よつみ)が待っていた

 すると紫央さんがこっちに気付いて

「告白成功、おめでとう愛斗」

「えっ、紫央兄何で知ってんの?」

「紫乃が嬉しそうに電話してきたんだよ

 その電話の最中に通り魔に…」

 暗くなる雰囲気にすかさず四生さんが

「でも、その電話のお陰で発見が早くなったんだし」

 その通りだ、後は手術の成功を祈るだけだ



 5分くらいたっただろうか扉が開いた

 紫央兄が医者に詰めよって

「妹は、妹は無事なんですか?」

 医者は、首を横に振った…

「ああーーーー」

 気づけば叫んでいた

「あーああーーーーーー」

 声が出ない、涙も出ない、俺の体を『無』が支配する




 気づけば俺は病院のベッド…

 じゃない、見知らぬ場所にいた

「お目覚めになられましたか」

 スーツに身を包んだ長身の女性が現れた

「ひとつ質問します滝 紫乃という女性をご存知ですか」

「滝 紫乃か、すまない心当たりは無いな」

「そうですか、やはり」

「あんた刑事さんか?そしてここはどこだ?」

「ここはルルーデあなたのような花紋によって

 記憶を封じ込めてしまった人たちを更正するために

 作られた近未来都市です」

「花紋ってのはなんだ?」

「記憶を封じ込める際に脳にできる

 花の形をした腫瘍の事です。君のは薔薇の花

 またその紋によって

 封じた記憶の代わりに超能力が使えるはずです」

 超能力のことを考えると頭に

 物が燃えるようなイメージが思い浮かんできた

 俺の能力は『発火』のようだ

 今使うと色々燃えてしまいそうなので

 止めておくことにした

「そしてこの街にはS級~C級と

 能力の強さでクラス分けされている

 君はA級、十分に殺傷能力があるからだ」

やっぱり気を付けて、使わないとだな

「君は多分滝 紫乃についての記憶を代償にしている

 なにか思い出せそうだったらすぐに言ってくれ

 あと、この街は超能力者ばかりだから気を付けて」

「この街の中で超能力自由に使っていいのか」

「はい、ルルーデはそういう街ですから」



 そう言われたので町外れの林に能力を試しに来ていた

 まずイメージのように炎を出してみた

 ブウォっと燃え上がる炎

 思いのほか勢いの強い炎だったので

 周りの草に燃え移った

 咄嗟にすべての炎が消えるイメージ

(成功…したのか)

 炎は全て消えたが焦げ跡は残っている、それに

(熱く、ない)

 さっき俺は炎に包まれたはずなのに

 熱さを感じなかった、もちろん火傷の跡はない

 自分の能力には耐性があるみたいだ

 消火もできるみたいだし

 こんなに強力なら国が隠すわけだ



 林からの帰り道

 商店街の店先に並ぶろうそくの

 火が消えるかどうか試してみた

 俺は消せないと思っていたから試したが

 結果は消せた火を操る能力なのだろうか?

 また違う店でろうそくの火が熱いか試すと

(あっつ)

 普通に熱かった

 どうやら耐性を持つのは

 能力によって発生した火だけみたいだ



「やっ、やめてください」

 痴漢に遭遇した

 能力を使っているのだろうか

 女の子の方が能力を使う素振りは見せない

 能力を手に入れた慢心からか

つい声をかけてしまった

「やめてやれ」

 能力の発動イメージはできてる

「なんだお前、女の連れか」

「助けてください」

「黙ってろ」

 この一言で背中に悪寒が走る

「助けてください、痴漢です」

「なんでお前には効かないんだよ、ったく」

 効かないやっぱり能力か

「じゃあ、お前からだな」

 睨まれた、それだけのはずなのに

 なにこれ、あいつが恐い・・・

 左手を胸に当てる、心臓がドクドクうなっている

 そんなわけがない、なのに体はあいつを避けようとする

 体に直接、恐怖を刷り込まれる感覚

 心は立ち向かおうとするのに

 体は逃げようとする

 相反する二つの感情は体を混乱へと陥れる

 訳もわからず炎をあいつに向ける

 愛斗の頭は既に少女の存在を忘れていた

 炎が二人の体を包む、もう愛斗は能力を制御できなかった




 気絶していたのだろう目を覚ますと

 目の前には巨大な乳房が・・

「気がつきましたか?」

 優しい声で語りかけてくる少女

 遠目から見ただけなのでわからなかったが

 出るとこは出る引っ込むところは引っ込むという

 ものすごく良い体をしていた

 というか俺は今膝枕をされているらしい

 状況を把握するとすぐに離れた

「助けてくださりありがとうございます」

 よく見ると彼女は火傷をしていない

「目が覚めたか」

 そこには長身のスーツに身を包んだ女性がたっていた

 あの女性だ

「彼女が助けてくれたんですよ」

「そうなんですか!ありがとうございます」

「礼には及ばん、恐怖に苛まれたのだからしょうがない」

「俺はいったいどうなったんですか」

「恐怖に苛まれ混乱、能力の暴発を確認したので私が気絶させた」

 気絶させたって、やっぱり特殊な訓練とか受けてるのだろうか

「それにしても良かったな、襲われてたのが鈴蘭で」

「鈴蘭とは彼女の事ですか」

「ああ、こう見えても彼女はS級能力者でな」

「自己紹介遅れました、鈴蘭こと九蘭(くらん) 鈴香(れいか)です」

「彼女の能力は『純粋』他人の能力を一切受け付けない」

 なにそれチートかよ

「ただ、彼女は攻撃手段を持っていない」

 弱点はあるのか

「そこでだ、鈴蘭・薔薇ペアを組め」

「薔薇って俺のことですか?それにペアって」

「その通り君らには常に二人で行動して欲しい」

「私と彼、ええっと薔薇君と常にですか」

「その通りだ、私はそろそろ失礼するよ」

 ほんとにあの女性はくのいちのよにすぐいなくなる

「ええと、自己紹介、俺は希美 愛斗よろしく」

「よろしくね、愛斗君、でさどうしようか」

「とりあえず着替えたいから病室帰りたい」

「病室、そっか目覚めたばっかりか、一回帰ろうか」




 帰り道に鈴香からこの街のことについて聞いていた

 ついでにしたの名前で呼ぶ許可ももらった

 すごいあっさりだったけど

「この街ではペア行動が普通なんだよ」

「ヘーそうなんだ」

「二人部屋を一人で使う贅沢もおしまいか」

「ん、二人部屋?」

「うん、ペアは同じ部屋だよ」

 同じ部屋ってことは

 俺はこんなモデルみたいな娘と

 ひとつ屋根の下というわけか

 もってくれよ、俺の理性




 俺の病室402号室へむかう

「402、私もここだったんですよ」

「ふーん、そうなんだ」

「私たち共通点多いですね」

 ニコッと微笑む彼女

 俺はそろそろ限界を迎えていた

 深呼吸をして心を落ち着かせる

 左手を胸に当て落ち着いたか確認する

 病室へ入るとあの長身の女性がいた



「ようやく帰ってきたわね、結構待ったのよ」

「何の用ですか?」

「鈴蘭を襲った男がわかったわ

 やつはシャクナゲ能力は『危険』

 相手に自分を危険視させる能力だ」

「だから恐いって感情になったのか」

「やつは犯罪組織『ZODIAC』に所属していたの」

「組織の逆恨みには気を付けなさい」

「わかりました」

「あと、早く荷物をまとめて出ていくことね

部屋足りないんだから」





「犯罪組織『ZODIAC』か」

「『ZODIAC』ってことは横道十二星座だよね」

「そうだな、十二人いると考えるのが妥当かな」

「襲われたら助けてよね」

「安心しろ、お前の能力があれば無理矢理にでも助けられるから」

それから2週間、『ZODIAC』は動きを見せなかった




「平和だねぇ」

そう、あれから何事もない

むしろこの平和が恐いくらいだ

「何か、面白いことないもんかねぇ」

あってもらっちゃ困るんだけどな

それはそうと同居に慣れてきたからって

部屋で薄着になるのは止めてほしい

絶賛、目のやり場なくて目線が迷子です




「ねぇ、愛斗暇すぎ街行こうよ」

「そうだな、あれから籠りっぱなしだし」

「じゃあ決まり、準備してくるね」

それから30分以上待たされた

何で女性の準備ってこんなに長いの




それから街の商店街を一通り回って

大広場で休憩していると

「愛斗君?」

後ろから女性に声をかけられた

とっさに

「はい」

と答えたが女性に見覚えはない

「やっぱり、愛斗君だ」

「失礼ですがどちら様・・・

 もしかして滝 紫乃さんの関係者ですか?」

「やっぱり代償は紫乃ちゃんか・・・

 私は白爪 四生っていうの

 紫乃ちゃん兄、滝 紫央の恋人です」

滝紫乃の兄の彼女か、もしかしたら

「いま、彼女がどこにいるかご存じですか」

「紫乃ちゃんは死んだのよ

たぶん、そのショックで花紋ができたんじゃないかな」

「死んだ・・・そうですか・・・」

「正確に言うと殺されたのよ能力者によってね」

「能力者によって・・・ですか」

「ええ、臓器を焼かれたのすごい火力でね

だから紫央は火を使う能力者を『フレイマー』と呼んで

それをすべて排除しようとしているの」

「火を使う能力・・・」

そのときどこからともなくあの感覚が甦った

『恐怖』だ、しかしあのときのような動揺はない

「四生姉さんそいつが例のフレイマーです」

「えっ、まさか・・・愛斗君が???

 ごめん話だけ聞かせてね」

四生も能力を発動させる

四生の手のひらにクローバーが出現する

そのクローバーの葉を一枚ちぎって

息を吹きかけると葉はたちまち氷へと姿を変える

その後二枚目もちぎって息をかけると炎へと変わった

クローバーの葉を他の物質に変える能力だろう

その氷と炎を愛斗へ向かって打ち込んだ

愛斗の反応は間に合っていなかったが

鈴香がかばうように前へ出た

鈴香が触れると氷は溶け炎は消えた




「おもしろい能力持ってる奴がいるな」

どこからか声がした

「ごめん、紫央この娘強い」

「その女は任せるぞ、四生

愛斗は俺がやる!」

「ちゃんと生け捕りにしてよね」

相槌を打つとビルの上から

俺の目の前に落ちてきた

「久しぶりだな愛斗

お前にとってははじめましてかな

紫乃の兄の紫央です」

と言って手のひらに氷を生成した

その氷は宙に浮き

紫央が指を弾くと一直線に俺に向かって来る

俺はその氷に向けて能力を発動する

氷は溶け炎へと変わる

「次はこっちの番だ」

俺は空気を導火線に火を紫央へと伸ばす

がしかしその炎はたちまち凍って行く

「上書きした方が勝ちか…

俺らの能力は同等らしいな

お前は温度を上げる能力

俺は温度を下げる能力

さぁ、どっちが強いかな?

ハンデとして記憶解放能力は使わないよ」

「記憶解放能力ってのはなんだ」

「あれ、知らないの?

忘れた記憶を思い出したときに

出現する追加能力のことさ

俺の場合は概念的凍結ができるよになった」

記憶解放能力か俺はどうなるんだろうか

でもまずはこの人をどうにかしないと

勝つ方法は一つ能力は上書きで無効化しつつ

能力外の戦い肉弾戦で勝つ

となれば…先手必勝

「はあぁぁ」

紫央の顔に殴り掛かる

紫央はかがんで避けてローキック

俺は避けきれず倒れる

「いいねぇ、血気盛んなのはいいけど

経験値の差かな、それじゃ俺には勝てないよ」




「あっちでも戦い始まったね」

「仕掛けて来ないんですか」

四生と鈴香は二人の戦いを見ていた

「あなた、記憶解放は?」

「まだですけど…」

「じゃ、戦っても意味無いわ

私、あなたに勝てないし、負けもしないもの」

それもそうだ四生は見るからに

武道はやっていないだろう

ということは攻撃手段は能力のみ

それなら私にダメージ与えられないし

私も彼女にダメージを与える術はない

だが彼女は私の能力に攻撃手段が無い事を知らない

にも関わらず負けないと判断した

その前のワンアクション

記憶解放のことを聞いたなぜなんだろう

「あの、なぜ私に攻撃手段がないと…」

「あなたの能力が強大だからよ

能力にはちゃんとデメリットも存在する

それを補うまたはメリットを強化するのが

記憶解放の追加能力ってわけ」

「なるほど、そういうことですか…」

「じゃ 私からも質問、

愛斗君とはどういう関係なのかな」

「どういう関係って、

別にただのパートナーですよぉ」

斜め上を行く質問に焦ってしまった

「それが本当なら、よかった」

えっ、どういうこと

「紫乃ちゃん、愛斗君の記憶の鍵の子ね

愛斗君と紫乃ちゃんは恋人だったのよ

1日だけね…」

「どういうことですか?」

「愛斗君が紫乃ちゃんに告った日に

紫乃ちゃんが通り魔に襲われて

手術を受けて奇跡的に助かったんだけど

その夜病室で通り魔とは別の奴に

右横腹を燃やされたの

修復不可能なレベル、即死だったらしいわ

第一発見者は愛斗君、でも悲鳴を聞いて

駆けつけたナースさんが言うには

愛斗君も放心状態だったらしいの

多分そのショックで花紋ができたんでしょう」

「そんなことが…」

私まだまだ愛斗のこと知らないんだな

「もう少し愛斗のこと教えてください」

「やっぱりあなた、愛斗君に気があるでしょ」

「えっ、そんなわけない…です…」

言いきれない、言いきりたくない

そんな感情が自分のどこかにあった




「おいおい、愛斗そんなもんか?」

一方、愛斗VS紫央の方は

愛斗が押されていた

能力をまとってパンチを繰り出しても

氷の壁で防がれる

「愛斗、お前には絶対的な覚悟がない

少なくとも昔のお前は持ってたはずだぜ」

「昔の俺か…でも今の俺は今の俺です

昔のことなんて関係ない」

その時初めて俺の顔に紫央のパンチが入った

「そうだよな…今のお前はは

俺の知ってる愛斗じゃないんだな」

その後腹にもう一発

「バカみたいだな、過去に執着する俺らは

花紋を持つ原因がそんな心の弱さなんだよ

過去を忘れることで未来へと進む

そんな進み方で誰が強くなるか!

過去に執着して一つ一つ乗り越えて行く

それが正しい成長だ、違うか」

「過去を振り返ってばかりで前に進めるもんか」

「じゃあ、お前は過去なんてどうでもいいのか

死んだ紫乃も前へ進むために忘れて行くのか」

もう一発顔に入る

紫央に跨がれているため後は殴られるしかない

紫央に俺の胸ぐらを掴んで

「お前のそんな弱っちぃ姿紫乃には見せられないな

お前は紫乃の真っ直ぐなとこ好きって言ってたが

今のお前は全然真っ直ぐじゃないんだよ」

ここら一体がピカっと赤い光に包まれた




それを見ていた鈴香と四生は

「なにあれ…炎?」

「いや違う、あれは記憶解放…」

紫央は掴んでいた胸ぐらを離す

「ごめん…紫央兄…すげえ…頭痛い…」

「愛斗、おいっ愛斗」

愛斗は気絶した

「あら、ついに思い出しちゃったか…

じゃあきちんと消しておかないと」

そこには赤いスーツを着た長身の女がいた

それこそあの女性と雰囲気のよく似た…

とたんに女は近寄って来る

「来るなー」

紫央が氷の壁を作り出す

女が氷の壁に触れると氷が燃えた

紫央の氷が可燃性を得たかのように

そこに炎、氷、風、雷が飛んで来た

後ずさりする女に鈴香が立ちふさがる

「紫央、早く愛斗君を病院に」

「わかった、お前らも早く逃げろ」

逃げる紫央を見て女がつぶやく

「もう間に合わないわね

じゃあね、彼氏に伝言よろしく

また殺しにくるからって」

そう言って逃げる女の背中は

すごく不気味で嫌な感じしかしなかった

後編は書き終わり次第あげます

初めてテロップ書いてきちんと書いた

短編小説です

ブクマ 評価 感想 指摘

なんでも待ってます

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