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学校生活 その一

朝七時に僕は目覚める、今日は月曜日だ。

月曜日の朝とは本来憂鬱なもの、僕も小学生の時などは学校に行くのが億劫だった。それはイジメられていたわけじゃなく、ただ楽しかった日曜日が終わってしまったという寂しさからくるものだと思う。

でも今の僕は月曜日も楽しいのだ。生まれ変わって前世の記憶を持ったまま、小学校に通える事のなんと素晴らしい事か。

勉強は得意でも好きでもなかった僕だが、大学に入学するぐらいの学力はあった。

すぐに中退してしまったが。

小学校の問題は懐かしさとこの世界独特の文化が学べて楽しく飽きない。

しかも小学校には車で送ってもらう、別に徒歩で通えない距離じゃないし自転車で通学も許されている。

それでも車での送り迎えは母が言い出したことで絶対に譲らないのだ。

試しに言ってみようか、今日は母が珍しく寝坊をしているし。


「お母さん眠いなら僕歩いて学校行こうか?」

「そんなのダメ!」


寝ていた母が飛び起きる。髪は寝癖で色々な方向に跳ねていてボリュームが増えたように感じる。


「嘘!?もうそんな時間?なんで!」


学校の制服に着替えている僕と目覚まし時計を交互に見ながらしどろもどろな母。


「お母さん。朝辛いなら歩いていけるよ?」

「ダメに決まってるでしょ!そんなの絶対誘拐されちゃう!お早う今日も可愛いね」


なんか言ってる事が無茶苦茶だな、寝ぼけてるのかな?


「四十秒で支度するから玄関で待ってて!絶対に一人で行っちゃ駄目よ」


流石に四十秒で支度はできないでしょ。玄関に向かいながら思う。

靴を履いて制服は白いワイシャツに赤のストライプが入った紺色のネクタイ。

ブイネックのブラウン色をしたセータ―と下は黒のハーフパンツに黒のソックス、学校指定の通学鞄はリュックサックのような形状で機能的で使いやすい。


「おまたせ」


後ろから声がしたので振り返ると、そこには本当に一分弱で支度を済ませた母が立っていた。

いつもの紺色のパンツスーツに身を包み、長いブロンドの髪をアップに纏めている。

時間でも止めたのだろうか、さっきとはまるで別人に見える。


「じゃあ行こうか」


母は車のキーを手に持ち玄関を後にする。

僕達が住んでいる家は庭付きの一戸建てで、そこへ二人で住んでいる。

二人で住むには広すぎると思うが、周りの家もみんな大きい。恐らくこの一帯は富裕層の家が並ぶ地域なのだろう。

前世では六畳一間の風呂なしアパートに住んでいた為、最初は落ち着かなかったが今ではよくそんな狭い家に住めていたなと思うくらいだ。


僕が通う学校は『ヘブンリー学園初等部』小学校から大学まである巨大な私立の学園だ。

周りは森に囲まれ、森林公園の中に学校があるような落ち着いた雰囲気で僕はそこがとても気に入っている。


車が小学校の校門に着き沢山の児童達が校舎に吸い込まれていく。


「それじゃあ行ってくるね」


車のドアを開けながら母に言う。


「はーいいってらっしゃーい」


母が笑顔で手を振るのを見て、僕は車のドアを閉める。学校の玄関で上履きに履き替え教室に向かう。

教室の中ではクラスメイト達が教室のあちこちで雑談をしているが、僕が教室に入った瞬間女子達がバラバラに挨拶をしてくる。僕のクラスは男女合わせて三十人で男子は六人しかいない。

僕はそれぞれ挨拶を返していく、それほど大きな声で挨拶をするわけではないので苦ではない。

他の二割の男子はのんびりとしていて僕が近づくと挨拶をしてくる。


「よう!今日も律儀に返すね~また女子達が調子に乗るぞ」


クラスメイトのケビン・ドゥールが軽い挨拶をする。彼は体を動かすのが好きな活発な男子で短髪で日に焼けている。


「おはよう。別にそんなに嫌じゃないし挨拶を返すのは普通じゃない?」


「か~真面目だね~オレには無理だな~めんどくさくて」


ケビンは少し呆れ顔で訴える。この世界の男子はケビンのような対応が一般的なようだ。

僕は前世で全く女子にモテなかった為に、女子の方から話しかけられると嬉しくなってしまう悲しい性を持っているんだ。

でもそれは言えない、女子と会話できるのが楽しいなんてスケベな尻軽男と思われかねない。


朝九時とともに授業が始まる。

ここで僕の住むこの国について話すと、国名は『オリオン』世界第四位の国土と人口で周りを海に囲まれている。

主な産業の一つに娯楽産業があり特に映画作りに力を入れていて、政府も公営の映画館や製作スタジオを設立するぐらいだ。



この世界に転生してから学校に通うのが楽しいのだが、女子達のこちらを見る目線が意外と気になってしまうのが少し難点かな。

変な事ができないじゃないか、変な事するわけじゃないけど常に見られているかもしれないこの感覚は今だに慣れない。


夕方五時になると学校も下校の時間になる。

その時間帯になれば母が車で迎えに来るので、友達に別れを告げ母の車に乗り込む。


「おかえり~今日ねショタコン、じゃなくてカレンさんが家に来るらしいよ」


いきなり失礼な間違いかたをしたような気がするが、気にせず聞こう。


「へ~なんだろう何か予定に入ったのかな」


「電話で聞いた話によると『映画のオーディションを受けませんか?』って言ってたよ」


「え!?すごい!?オーディション来たんだ頑張らないと」


僕は気合が入る。この映画のオーディションに受かって憧れの銀幕デビューなんて事に。


「ロア君なら絶対受かるでしょ。受からないとすれば審査員の目が節穴って事になるし」


「お母さんそれはちょっと言い過ぎだよー」


母は意外と毒舌なところがあり、たまにやきもきしてしまう。そんな話をしている間に家に到着した。

僕は部屋着に着替えてカレンさんが来るのを待つ事にした。


ケビン・ドゥール :ロアのクラスメイト。明るく活発な性格で身体を動かすのが好き。

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