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映画の告知をしに来たはずが…… byソフィア・フランソワーズ

前回の続きです。


「まずはこれね、先月の『スクリーンロード』。今どこにも売ってないという噂の雑誌で『スクリーンロード』史上最高売り上げを記録したそうね」


タイミーさんが『スクリーンロード』を取り出し説明する。


「本当にありがたいことです」


ロア君が笑顔でお礼を言う。


「売れる理由は解るわ~今手元にあるこの雑誌も番組が何とか予約できたものらしいよ。私持って帰りたいもん」


『スクリーンロード』を抱きしめアピールするタイミーさん。


「私は手に入れましたよ。話を聞いて速攻予約を入れたので全世界で最速だと思います」


私はすかさず自分が持っている事をアピールする。


「ちなみにソフィアは『スクリーンロード』の表紙になった事あるの?」


タイミーさんが私に質問してきた。


「え!?何ですか急に!?」


私は驚きの声を上げすぐに答える。


「いや、あるのかな?って思ったから」


タイミーさんは素朴な疑問を私に投げかけたようだ。


「あ、ありますよ。以前話題になった映画『バラクーダ2~沈む孤島~』で表紙になりました」


私は以前出演した映画のタイトルを出し疑問に答える。


「そんなのあったっけ?」


タイミーさんが解らないのも無理はない。一作目で少し人気が出て二作目でシリーズが終了した映画で、余程詳しい人間の記憶にしか残らない作品だ。


「海洋パニック映画の王道と言われた映画ですごく簡単に説明をすると、巨大なバラクーダが人を襲う映画です」


簡単に説明が出来てしまうのが少し寂しいがその通りなのでこれ以上言う事もない。


「ブハハ!シンプルな映画だね!何?そん時の『スクリーンロード』があるって」


スタッフさんが横からタイミーさんに手渡しする。


「え?あるんですか!?」


私がまだデビューしたての頃だ。


「え?どれ?どれがソフィア?」


タイミーさんが視線を忙しなく動かす。


「いや、解るでしょ。これですよ」


私は雑誌の表紙を指さしタイミーさんの視線を誘導する。


「あ、いた!人が沢山出てるから扱いが小さいね」


この時の『スクリーンロード』は私も一冊持っている。雑誌の表紙に載るという事で期待したが『バラクーダ2~沈む孤島~』の主要キャストは10人にも及ぶ。

そして殆どのキャストがバラクーダに食べられてしまうストーリー。それでも全員が表紙に出る事が出来たのは映画製作側の意図もあるからだ。主役級のキャスト三人だけ生き残るのだが三人だけで表紙を飾ると「他に出てくるキャストは最後まで生き残れないんだろう……」と表紙を見た人たちは予想すると考えられ、間接的にネタバレをしている事になるかもしれないと危惧した為に集合写真のようなレイアウトになった。

この時の雑誌撮影も全員が集合しポーズを取っているので一人一人の扱いは小さなものになるのだろうと予想はしていた。でもそれが今になってこういう弄られ方をされるとは思いもよらなかった。


「あとさこの時のソフィアってさ、なんかぽっちゃりしてない?」


タイミーさんが今の私と当時の私を比較し質問してきた。


「え!?いやこの時はまだデビューしたての頃でどういう個性の女優で行くか迷ってた時代なんですよ」


この頃の私は暗い影のある役や陽気で面白い役など、色んな役を演じ分けられる役者に強い憧れを持っていた。だが、身体を鍛え始めた頃から健康的でアクションの多い役が増えていき逆にそれ以外の役は一切来なくなった。私は色んな役を演じ分けられる器用なタイプの役者ではないとその時に痛感した。そのお蔭か私に迷いは一切消え、より爽やかにより激しいアクションをこなしていこうと決心することが出来た。


「下積みの頃の、がむしゃらな時期ね。解るわ~私にもあったな~」


タイミーさんがしみじみと過去を思い出しているようだ。


「ここから体を絞っていきますから、一番太ってた時期ですね」


私は一応太っていたのはこの頃だけですよというアピールをする。


「ねぇねぇ、ロア君コレ見てどう思う?」


タイミーさんが持っている雑誌をロア君に見せる。


「ソフィアさんでも苦労してたんですね。親近感が湧くというか何というかその……」


ロア君が言葉に詰まっているようだ。そりゃあ感想を求められても何て言ったらいいのか私ですらわからない。


「イヤ!ロア君見ないで!」


ロア君に私が一番太っている時期を見られていると今さら気づき、恥ずかしさで身体が熱くなってきた。


「迷走してがむしゃらになるなんてロア君には無縁だよね」


タイミーさんが笑顔で冗談めいた感じで話を振っていく。


「いえ、そんな事はありません!早くに個性を確立できたのはすごい事ですよ、才能がある証拠です。僕なんて……あっいや、とにかく凄い事ですよ」


ロア君が私を褒めてくれている!というかロア君何かあったのかな?何だか反応がいつもと違うような。


「何て良い子なんだ君は。ソフィアに弱みを握られているのかい?相談に乗るよ?」


タイミーさんが根も葉もない事を言う。


「ちょっと止めてください。変な噂が流れたらどうしてくれるんですか!?」


そんな噂が広まったらお先真っ暗になる事間違いない。

するとここで一旦休憩の合図がスタッフの方から入り私たちはその場でリラックスをする。

観覧席のお客さんが「ローアくーん」と声援が聞こえロア君が小さく手を振ると「ふわぁ~」と吐息のような音が響き渡る。きっと幸せな気分に浸っているのだろう。


「いいんだよ。そんな一々反応してたら疲れちゃうでしょ」


タイミーさんなりにロア君を気遣ってくれているようだ。すると今度は「え~」と不満の声が響く。


「おうおう、今日は客の反応がいいな!なら私の名を呼べ!」


タイミーさんが観覧席のお客さんに食って掛かると観覧席から「タイミー!」と少数の声が聞こえる。


「黙れー!気安く呼ぶなー!」


また支離滅裂な事を言うタイミーさんこれが彼女の芸風なのだろう。観覧席のお客さんはこのやり取りに慣れているのかどっと笑いが起きる。



スタッフの方から休憩時間の修了を告げられ後半の収録がスタートする。


「今日はね映画撮影中の二人について周りの人から色々情報が入ってるから、それが真実かどうか確かめたいと思ってるわけよ」


タイミーさんが番組の台本通りの進行をし始める。


「それでね、こんな情報が入ってました。情報提供者『Sさん』からのタレコミによると『ソフィアは割と高価な双眼鏡を使いロア君を覗き見していた!』という事だがこれ本当?」


タイミーさんが情報を読み上げると観覧席の人たちから「え~!」と批難の声が上がる。


「いや、違います。そうじゃなくて……あの時はロア君が初めて一人で撮影するから心配になって遠くから邪魔にならないように見守っていたんです」


私はそんな声にすぐに反応し弁解する。


「え?近くで見ればよかったんじゃないの?共演者でしょ?」


タイミーさんが正論を言う、あの時は真正面からロア君を見れなかったのだ。


「その頃はまだお互いに距離があってなかなか打ち解けてなくて……その……」


私は語尾がだんだんとか細く小さな声になっていく。


「あの頃ってまだ距離があったんですか!?僕はもう仲良くなったかな~って思ってました」


ロア君が驚いた表情で隣の私を見る。


「え?距離を感じてたのは私だけだった!?」


私とロア君てそんなすぐに仲良くなれてたの!?


「ブハハハ!コミュ障かい!」


タイミーさんが豪快に笑いながらツッコミを入れる。


「だって……だって……変な女と思われたくなくて」


確かに私は硬派を気取っていた。


「十分、挙動不審な女でしょ」


タイミーさんが元も子もない事を言い放つ。


「まあいいや。次の情報も情報提供者『Sさん』からのタレコミ。『ソフィアはロア君を宿泊先のホテルに連れ込んでいかがわしい事をしていた!』とあるけどこれが事実だとすると、大変だよ君?」


真実を確かめるためタイミーさんが私を指さす。


「これも違いますよ!ていうかさっきから『Sさん』ってシンディさんでしょ!絶対そうだ!」


こういう悪意のある書き方をするのはあの人しかいない。


「情報元は明かせない決まりなんだよ。身内であればなおさら……シンディからの情報とは言えないんだ」


私を諭すようにタイミーさんが説明する。


「言ってるじゃないですか!」


やはりシンディさんだった。


「あ~れ~言っちゃった~。シンディゴメ~ン」


軽いノリでここにはいないシンディさんに謝るタイミーさん。


「それはそうとホテルに連れ込んでってところはどうなの?」


タイミーさんもそこがやっぱり気になるようで聞き直してきた。


「というかこれは僕が考えたサプライズでした。朝起きたら隣に人が寝てたらビックリするだろうな~って思って朝早く忍び込んで仕掛けたんです」


正直に自分が企画した事を言うロア君。


「え!?ロア君が考えたの?それ見たいなー、映画の映像特典に付かないかな?」


タイミーさんが興味を示し始めた。


「それはダメですよ!私の名誉にかかわるので……」


朝起きたら隣にロア君が寝てたなんて周りの人たちから羨ましがられて大変なことになる。だから詳細は言わずにおこう。


「名誉にかかわる事なの!?何したの!?」


タイミーさんはさらに訊いてくる。


「何もしてないです。いかがわしい事は何も!」


私は本当に何もしてなかった。何かしていたら今頃私は暗い檻の中にいたことだろう。


「怖いな~これが放送される前には捕まらないでね。放送された後だったらいいけど」


タイミーさんは引っかかる事を言った。


「放送後だったらいいんですか!?」


放送後ならば大丈夫とは一体どういう事だろうと私は気になってしまった。


「それは良いよ。各社のニュース番組で今の映像を沢山使ってくれるだろうし『伝説の回』になること間違いなし!」


タイミーさんは私のニュースを踏み台にし番組に話題性を追加しようと画策していた。


「ソフィアさん絶対に捕まらないでください。映画の為にも」


ロア君が心配そうに言ってくれるが映画関係者に迷惑がかかるという意味合いで言っていた。


「やましい事は何もしてないって!」


~パニック映画では金持ちキャラが生き残れる確率が低い。~

          ワンチャン・ドラム

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