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映画の宣伝は大事!? ~前編~

映画ネタを入れてみました。

映画撮影を終えて僕は久しぶりに学校に通う。


学校での勉強は先生からの課題を撮影の合間にこなし提出しているので授業の遅れは感じてはいない。というか前世で義務教育は修了しているので遅れるという事はない。

久方ぶりに友人のケビンと顔を合わせ軽い挨拶から始まった。


「久しぶりー、元気そうだな」


教室で会うケビンは明るく、僕の肩を叩きながら言った。


「まあね、ケビンは少し背が伸びた?」


僕は何となくケビンが成長しているように感じたので訊いてみた。


「そんな訳ないだろ、一か月ぐらいしか経ってないんだぜ」


ケビンは笑顔で答える。


「それもそうだね」


僕たちは当たり障りのない会話しつつお互いの近況を報告しあう。


「そういえば見たぜ、『流浪のエルフ』の予告ロングバージョン!」


ケビンは僕を指さし言った。


「見てくれた?どうだった?」


つい先日、予告編のロングバージョンが動画サイトに公開された。その内容はショートバージョンでは描き切れなかった登場人物たち一人一人を詳しく映し出していた。勿論ショートバージョンで殆ど映されなかった僕の姿もバッチリ紹介され動画の書き込み欄はいまだに『男か?女か?』の論争をしている状態だ。

そんな動画を見てくれた友人の感想が気になり焦り気味に訊き返してしまう。


「ん~面白そうだし絶対に見に行くぜ。なんせロアのデビュー作になるわけだしな!」


なぜかカッコつけた言い方で答えるケビン。


「ありがとう、ケビン」


なんて温かい言葉だ、僕は良い友人を持ったな。


「でもオレはロアが映画の撮影で学校に来られないと聞いた時、尖った歯のピエロに殺される役かと思ったよ」


ケビンは僕が学校に来られない間、とても細かい設定の想像を膨らませていたようだ。


「雨の日に?」


僕はどんな想像をしていたのか気になったので質問をしてみた。


「そう!」


ケビンは力強く答える。


「レインコートを着て?」


僕の質問はさらに続く。


「そうそう!」


ケビンは頷きながら答える。


「紙の船を追いかけてたら……」


僕は質問を畳み掛け答えを限定していこうとしたらケビンに限界がきたようだ。


「もういいよ!多分一緒の映画だよ!」


なるほど、僕とケビンが想像した映画は一緒のようだ。それは兎も角ケビンはこの数か月の間に『ノリツッコミ』を体得していたようだ、少し見ない間に成長した気がしたのはここだったのか。


「あ~あとソフィア・フランソワーズさんと共演してたじゃん。いーなーサインとかくれた?」


羨ましそうにケビンは尋ねた。


「え?いやまったく貰ってないよ。ソフィアさんは真面目な人だったからあんまりそういう話にならなかったんだ」


真面目な人のはず、間違いではないと思う。


「そうなんだ、今度会ったらさサイン貰ってきてくれないかなー。お願い!」


ケビンは手を合わせ祈りながら言った。


「うん、今度会ったら訊いてみるよ」


僕は軽い気持ちでケビンの要望を聞き入れた。

放課後になり校舎の外へ出れば映画の影響で僕に声をかける人や手を振る人が現れる。僕は軽く手を振り笑顔でそれらに応えると沢山の声援を貰う事が出来る。予告編の効果さまさまである。



学校内の駐車場にカレンさんの車が待っている。

今日は映画の宣伝の為に映画雑誌『スクリーンロード』の写真撮影をする予定だ。

この『スクリーンロード』はこの国で一番売れている映画の雑誌で、この雑誌で特集を組まれることは映画業界内ではとてもステータスになる出来事だ。


「カレンさん。今日もよろしくお願いします」


カレンさんの車に近づき挨拶をする。


「ロア君、よろしくね。今日は一度家に寄る?」


カレンさんも愛想良く返事をする。


「いえ、このままスタジオに行きましょう。そっちの方が効率が良いですよね」


「解った。じゃあこのまま直行するね」


僕とカレンさんは車に乗り込み今日の撮影現場を目指す。

まず、僕たちは控室に案内される。正方形の部屋で、そこには映画の撮影中に着ていた衣装がラックに掛けてあった。


「きょうはこれを着て撮影するんですね」


僕は衣装を指さしカレンさんに確認を取る。


「そうだね、私は部屋の外にいるから何かあれば声をかけてね?」


部屋を出ていくカレンさんを見ながら僕は「はい」と返事をする。

僕は手早く着替え、控室から出てメイク室に向い準備を整えてから沢山の照明と白い背景のあるスタジオに入る。


そこには細身の女性、身長は僕よりずっと高く180センチ程だろう。

身長の高さを際立たせていると思われる立派なアフロヘア。大きめの楕円のレンズが入ったサングラスをかけている。

半袖のパンクロックなデザインのブイネックシャツとスキニージーンズにスニーカーと動きやすい格好をした女性で、恐らく彼女が今回僕を撮影してくれるカメラマンだろう。

正確には写真撮影のみなのでフォトグラファーと呼んだほうが正しいはず。そんな彼女が僕に気づき話しかけてきた。


「初めまして、今回君を撮影するフォトグラファーのエメリヤ・ボンベイ。よろしく」


エメリヤさんはサングラスを素早く外し襟に引っ掛け名刺入れから名刺を一枚僕に渡してくれた。


「こちらこそよろしくお願いします」


彼女の名刺を両手で受け取りながらこちらも挨拶をする。


「渡された資料の写真で見るよりずっと綺麗だ。カメラがポンコツだったんだろうな」


エメリヤさんの眼光は鋭く冷たい印象を受けるが言っている事は冗談めいた雰囲気を持っている。目が怖いだけなのかもしれない。


「え?あの、結構新しいタイプのカメラに見えました。多分……」


僕は彼女が冗談を言っているのかどうなのか解らず曖昧な返事をしてしまう。


「フフフ……緊張しているのかな、冗談が通じなかったようだね」


初めてエメリヤさんの顔がほころび今言った事が冗談だという事が確定した。彼女の表情はあまり変化がなく感情を読み取るのが難しいようだ。


エメリヤさんはマネージャーであるカレンさんにも名刺を渡すと早速今回の撮影の段取りを話し始めた。


「今回は映画雑誌『スクリーンロード』の表紙と『流浪のエルフ』特集の記事に使う写真を撮影するよ。表紙は映画のキャラクターのような感じで撮って、それ以外は自然な表情の写真が欲しいからよろしく。何か質問は?」


彼女は滑舌良く説明し僕も特に質問はなく彼女の言ったことに同意した。


~映画のスピンオフ作品が本筋の作品より人気が出てしまうのは嬉しい事だ~


                         ワンチャン・ドラム

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