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オールアップになりました。 byロア・グッドール

ちょっと短くなってしまいました。


あと最近サブタイトルを付けてみました。これで少しは解りやすくなるといいんですが(;´Д`)

クレーンカメラが僕の顔を捉えながら少しずつ上昇していく、僕にとって最後のシーンを撮影するためである。


撮影中は数メートル離れた所で沢山のスタッフ達が音を立てず静かに僕を見ている。聞こえるのは白い砂浜に打ち寄せる波の音だけ。


「カーット!」


監督がカメラで撮影した映像をリアルタイムで見ながら一際大きな声で叫ぶ、するとスタッフの一人が周りにいるスタッフ全員に聞こえるように言った。


「ただ今のシーンでロア・グッドール君がオールアップになりました!」


白い砂浜でオールアップを迎える事になり周りから拍手と歓声が上がる。


オールアップは僕個人の撮影がすべて終了したことを意味し、他のキャストの人たちの撮影はまだ残っていて全ての撮影が終わる事をクランクアップと言い、残りの撮影はまたスタジオに戻ってから撮影する。


「お疲れさま」


監督が花束を渡しながら労いの言葉を言った。


「ありがとうございます」


花束を渡され、スタッフの皆が涙目になっている。


周りの人たちが涙ぐんでしいるのを見ると撮影が終了した事を実感してしまい目頭が熱くなる。


前世ではオールアップで花束を受け取る女優さんがよく涙するところを見て、そんなに感動するのだろうかと疑問を抱いたものだがこれは中々感慨深い。


三か月間一緒にやって来た皆の顔を見ると終わってしまう寂しさと一つの事をやり遂げた達成感が湧いてくる。


「ロア君キミは本当に良くやってくれたよ」


僕の肩に手を置き真っすぐな目で監督が褒めてくれる。


「スタッフの皆さんのおかげですよ」


僕の正直な感想を言った。


「本当に君は最高のキャストだよ。君をオーディションで選ばなかったら私は一生後悔しただろうね」


「もう監督!そんなに褒めても何にも出てきませんよ?」


僕は監督の二の腕を軽く叩く。あんまり褒められると気恥ずかしくなってしまうので茶化す意味を込めたボディタッチである。


「ガハハッ!ロア君とはまた一緒に仕事がしたいね」


監督は豪快に笑いながら言った。


「僕もチャンスがあるならまた監督と一緒に仕事がしたいです」


監督とスタッフの皆を交えて数か月間の思い出話に花が咲く。




「ヒンッ!ヒンッ!ロア君……ヒン!」


ソフィアさんがボロボロと涙を流しながら会話の輪の中に入ってくる。意外と静かに泣くタイプだった事に僕は驚いた。


「今までヒン!楽しかったよぉ……ヒン!ありがとうヒン!」


ソフィアさんが顔をくしゃくしゃにして感謝してくれる。


「僕もソフィアさんには色々助けられて感謝してますよ。ありがとうございます」


「うえぇぇ……ロア君好きぃ……」


僕を抱き寄せ嗚咽するソフィアさん。


ソフィアさんが誰よりも泣きじゃくっているのでスタッフの皆と僕の涙は引っ込んでしまった。


「ブサイクな顔で泣くな~」


シンディさんがソフィアさんを僕から引きはがしながら言った。


「だって…ヒン!……だって……ヒン!」


「ヒンヒン言って何言ってるか解んないのよ~それに鼻水まで垂らしてるし。ロア君に鼻水付けたら承知しないわよ~」


引きはがしたソフィアさんの両頬をつねる。するとソフィアさんは「イデデデ……」と鼻声で苦痛を訴える。


「痛いんだよ!いつまで抓ってんですか!」


ソフィアさんがシンディさんの腕を振りほどきながら言った。


「シンディさんも今までありがとうございます」


僕はソフィアさんの行動を一先ず無視しシンディさんに感謝の言葉を言った。


「いや~そんな大したことしてないし、私の方も色々楽しかっし感謝したいのはこっちだよ~」


シンディさんは照れながら謙遜し僕とシンディさんは握手を交わす。「ちょっと!無視しないでよ!」とソフィアさんがシンディさんの背後で喚いている。






「先輩は…ヒンッ…よく平気ですね。ロア君にもう…ヒンッ…会えないかも知れないのに」


「え?私は連絡先交換したからいつでも会いに行っちゃうよ~」


そう言えばソフィアさんとは連絡先を交換してなかったな。ソフィアさんとはほぼ毎日顔を合わせていたけど撮影現場では真面目な人だからそういう話にならなかったし。


シンディさんは気軽に何でも言ってくるから流れで交換しちゃったんだよな。


「な!?私が中々言い出せずにいた事をいとも簡単に!?ズルいです!」


ソフィアさんがシンディさんに詰め寄る。


「は~?」


ソフィアさんは今まで言い出せずにいたのか、そういう事は気にしないタイプの人かと思っていた。


「ソフィアさん連絡先交換しませんか?」


「へ!?い、いいの!?」


ソフィアさんは驚きの声を上げる。


「もちろん、良いに決まってるじゃないですか」


ずっと同じ目標に向かって努力してきた仲間だし。


「や、ヤッター!」


ソフィアさんが両腕を上げ叫ぶ。


「男の子の方から言わせるなんてどうなの~?」


シンディさんが呆れ顔で言った。


「いいんです。女が先とか男が先とかそんな事は些末な事なんです!」


僕たちは連絡先を無事交換することができた。


「お、男の子の連絡先初ゲット……」


ソフィアさんが何かボソボソ呟いている。

その夜はちょっとした打ち上げパーティーを開き監督が皆の労をねぎらってくれた。


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